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戯曲

あらかじめ失われた恋人たちよ―劇篇―

初出:『テアトロ』1981年10月号
収録:「あらかじめ失われた恋人たちよ―劇篇」p153~243 講談社 1981.10.12
「清水邦夫全仕事1981~1991上」p51~104 河出書房新社 1992.11.30

【上演データ】
1981(昭56)年10月16日~18日
木冬社第7回公演
会場:砂防会館ホール
/10月19日~25日紀伊國屋ホール/10月27日名古屋・名鉄ホール/10月28日和歌山県民文化会館/10月29日~30日兵庫県尼崎市ピッコロシアター
演出:清水邦夫
美術:朝倉攝
照明:服部基
音響:深川定次
出演:岸田今日子/吉行和子/松本典子/清水紘治/鈴木弘一/安部玉絵/人村明美/守屋るみ/他
【あらすじ】
 とある地方にある歯科医院が舞台。ここには歯医者の姉と義理の妹、ずっと東京にいたが帰って来たばかりという妹が3人で暮らしている。そこへ一人の男が訪ねて来る。男は事故で死んだこの家の弟の友人だと名乗る。弟は蝶の収集家で、奄美大島で3ヶ月間一緒に蝶を追ったと話す。
 この歯科医院のある地方には霧ケ沢という蝶の宝庫がある。ここには幻の蝶と言われる蝶がいて、男はその蝶を探しに来たのが、義妹はすでに絶滅したと話す。どうやらこの歯医者を根城に蝶を捕獲しようと目論んでいるらしい男を姉は追い出す。
 ところが、男が帽子を忘れて行ったことから、翌日女3人は男を捜しに霧ケ沢へ行く。そこで蝶の同好会という連中に出会ったことから妙な出来事に巻き込まれて行く…。
【コメント】
 さかのぼること約10年前に映画化された「あらかじめ失われた恋人たちよ」の劇篇とタイトルがつけられていますが、筋は全く関係ありません。しかしながら主人公の青年が10年をとったかのような男が登場します。永遠の青年は生き続けています。大変印象的なこの題名はリルケの詩から名付けられたそうです。
 森の中で女たちの中にいる父親との関係が明らかになり、父親像が崩壊してもなお心に抱き続けているのですが、一方、男は父親になりたくてもなれないまま、まるで青年のように蝶を追い、放浪を続けています。
 岸田今日子、吉行和子、松本典子の3人が揃い踏みしたこの作品、残念ながらこれ以降は2人ずつの組み合わせしかありません。これだけあくの強い(濃い)人たちが3人も揃うと、どうしても一人は影が薄くなりがちで、その方が良かったんだろうな、と思います。
 


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