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昨日はもっと美しかった―某地方巡査と息子にまつわる挿話―
初出:『悲劇喜劇』1982年2月号
収録:「タンゴ・冬の終わりに」p105~153 講談社 1984.4.2
「清水邦夫全仕事1981~1991上」p105~137 河出書房新社 1992.11.30
【上演データ】
1982(昭57)年1月20日~2月3日
木冬社=俳優座劇場提携公演
会場:俳優座劇場
演出:清水邦夫
美術:濃野壮一
照明:服部基
音響:深川定次
出演:清水紘治/吉行和子/和田周/野中マリ子/守屋るみ/他
【あらすじ】
息子が失踪宣言を受けて七年経ち、行方不明のまま葬式をあげることになった、ある家族の物語。警官である父親は担当している毒ガス工場から終戦のどさくさにまぎれて一瓶のホスゲンを盗み出し、庭の赤いカンナの木の根元に埋めた。ホスゲンは水に溶かせば200~300人もの人間を殺すことが出来る猛毒だが、逆に水の中にホスゲンを1滴2滴垂らせば人間を恍惚とさせる気体が発生する。
それを弟が見つけ、警察署長の娘マスヨと二人で楽しんでいるところへ父親が帰って来る。逆上した父親は…。
【コメント】
自伝的色合いの濃い作品です。警官の父親と母親の結婚の馴れ初めについては事実だそうです。しかしながら実際は毒ガスではなく日本刀を埋めた話が元になっています。それを毒ガスにしたことで、作者は自由になり、幻の弟やマスヨを登場させ、父親を客観的に描くことが出来たのだと思います。
実際の上演台本では兄のセリフ「もしかしたら土のもっと深いところに」に続く言葉が消されていたそうです。その方がいい。具体的な表現があると見る方は食傷してしまいます。観客の想像にまかせて煙に巻く方が私たちも漠然とした疑惑の中で楽しめるというものです。
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