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一九八一/嫉妬【上演データ】1981(昭56)年5月文学座アトリエ公演会場:文学座アトリエ演出:藤原新平美術:藤野級井照明:古川幸夫効果:深川定次出演:松本砂稚子/二宮さよ子/菅野忠彦/角野卓造/下村彰宏再演:1982(昭57)年12月「一九八二/嫉妬」木冬社第8回公演会場:紀伊國屋ホール演出:清水邦夫出演:松本典子/垂水悟朗/他【あらすじ】 日本海沿いの小さな洋裁店とその隣の気象館。気象館は天文学に凝った国語教師が建てたもので、以前は黒い旗を立ててこっそり天気予報をしたりしていたが、今はその男は亡くなって姉娘が一人で暮らしている。妹娘の方は東京で女優になり、大学教授と結婚している。洋裁店は兄弟で経営していたが、スキーの選手でもあった弟が6年前に亡くなって以来、弟の娘に手伝ってもらいながら、兄が一人で切り盛りしている。 ある日、見知らぬ男が洋裁店にやって来て、背広を作るようでもなく、兄にあれこれと質問をする。それも「隣を覗いたり、忍び込んだりしているんじゃないか?」という失礼なもので、兄は否定するが、その直後、覗かれていると証言する当の姉娘がやって来て…。【コメント】 初演は民芸ですが、翌年「一九八二、嫉妬」と改題して(せざるを得ませんよね)木冬社で上演されました。妹は誰が演じたんだろう? 裁断用の人台に話しかける男や、黒い旗を後生大事に持っている女というのは、その人物の偏執さとおかしさを表現するには、結構いいなぁと思うのです。しかし…人形は…やめてほしかった。あざと過ぎます。おまけにそれがくさいときてる(このモティーフは「冬の馬」でも使われています)。 それから、部屋に忍び込んで闇の中でじっと息を殺し、気付くと少しずつ近づいて来て…の下りは(妄想にせよ現実にせよ)彼女の内的世界が悪夢に脅かされている、それでいて、ロマンを感じ大事にしている挿話で、いいんですけど…。ベットの中に入り込むとか、体臭で人がわかるとか、そういう話はちょっと似合わないです。彼女の抱いている幻想というか悪夢の大きさが見えて来ません。 しかしながら隣に住んでいて40年間もの間3度しか口をきいたことがない関係、お互いに長い間想い合い、覗きあっていながら、それ以上近づかない関係の緊張感というのはビシビシと伝わってきます。そして彼女が言っていることが本当なのか妄想なのか、という点もずっと物語を引っぱっていく力があります。 二人にとって、生き生きと張りのある人生とは、結婚して一緒に暮らす、などという平凡な発想からは全く思いもよらないところにあったのでしょうか。しかし、その緊張が解け、答えが出てしまった後のことを考えると恐ろしいものです。
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