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戯曲

恋愛小説のように

初出:1989
収録:「清水邦夫全仕事1981~1991下」p349~407 河出書房新社 1992.11.30

【上演データ】
1989(平1)年12月
木冬社第15回公演、木冬社=紀伊國屋書店提携公演
会場:紀伊國屋ホール
演出:清水邦夫
美術:朝倉攝
照明:服部基
音響:深川定次
舞台監督:堀井俊和
制作:田上起一郎/岩下佳保里
出演:芦田伸介(五十嵐森一)/松本典子(清原道子)/黒木里美(清原洋子)/中村美代子(清原はな)/木津修(五十嵐周一)/菊岡薫(五十嵐清子)/石塚智二(清原徹)/田中幹子(清原勝子)/林香子(清原妙子)/川田涼一(神崎次郎)/南谷朝子(しのぶ)/玉城美〓(みずえ)/松戸賢一(サトル)/越前屋加代(えり)/加藤早苗(老女)/竹内沢子(老女)/三村朋子(老女)/赤石知也(思い出の人々)/原口健太郎(思い出の人々)
【あらすじ】
 テレビドラマのシナリオ書きをしている清原道子は北陸の故郷の町に帰って来た。生家のすぐ近くには廃駅がある。ここにはかつて北陸西線が走っていたが、今では廃線になっている。廃駅は現在では近所のお年寄りたちの憩いの場となっているようだ。
 道子は一応叔父の七回忌ということで呼ばれたのだが、生家は隣家と一緒に土地を売却するらしい。その相談というか了承を得るため甥に呼ばれたのである。生家には姉のはなと息子の徹、その嫁の勝子が住んでおり、娘の洋子と妙子も呼ばれていた。
 隣家の五十嵐家の方は長男の森一がやはり東京から呼ばれて来ていた。森一は理科系の大学教授をしていたのだが、すでに5年前に退官している。十歳以上離れていた道子とは一緒に遊ぶようなことはなかったが、いろいろな思い出は共有していた。
 今の代の両家で話は進められていたのだが、境界線の問題が持ち上がったことで、以前から少しぼけ気味だったはなが、突然思い切った行動に出て周囲を混乱に陥らせてしまう…。
【コメント】
 何十年ぶりかで再開した男女の共有する思い出が反発や共感を産んで、一番蚊帳の外だったはずの二人なのに、いろいろな人々を巻き込んでしまいます。隣の元気のいい小さな女の子のことが、何となく眩しく記憶に残っているというのは、やっぱり歳を取ってから大切な思い出となるんでしょう。ずーっと覚えていたら、絶対変ですよ、やっぱり。
 老いてもそう簡単には消え去らない、口惜しくも残念にも悲しくも…。だから消え去らない人間は、そう思い出ばかりにひたってはいられない。けれど思い出を生きるエネルギーに変えていかないという手はない。老いていくことに絶望だけが残されているわけではない…そんなメッセージが伝わって来ました。
 悪意の満ちた思い出だと思い込んでいたことが、実は善意の思い出だったということがわかるオチが非常に意外でした。いつも思い出や幻影に悩まされる人ばかりが舞台にのっていたからです。これは鮮やかな逆転劇でした。
 


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