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小説

冬の少年

講談社 1990.5.30 281p ISBN4-06-204719-5


迷路のような過去の記憶を辿り甦る、淡い年上の女性への恋情と故郷の懐しい風景。芥川賞候補『暮市』を収録。
暮市〔群像 1988年10月号〕:p5
冬の少年〔群像 1989年10月号〕:p85
BARBER(ばあばあ)・中ノ郷〔群像 1986年3月号〕:p163
BARBER(ばあばあ)・ニューはまp221〔群像 1987年9月号〕:p221

華やかな川、囚われの心

講談社 1992.8.25 220p ISBN4-06-206015-9

※装幀:菊池信義

芸術選奨(第43回・1992年度)文学部門・文部大臣賞


過去から呼び戻されたとくべつの時間。蒸汽船は信濃川下流から上流の河岸段丘へと遡る。男装の少女“はるじ”をめぐって展開する“少年”たちの冒険行。中篇小説集。
華やかな川、囚われの心〔群像 1991年6月号〕:p5~153
力女伝〔群像 1992年2月号〕:p155~220

【あらすじ】
五郎の父親、修造は死の間際になって、語ることが若い頃のことばかりになった。その頃の父の友人たち、清隆、卓市、はるじの消息を訪ねたところ、父の死後8年して、一つの手がかりが見つかり、五郎は訪ねて行く。
はるじといういつも男装をしていた少女の弟という老人の口から、修造たちとの出会い、川を走る蒸気船=川蒸気「草進丸」にのって上流に向かった話を聞かされる。「はるじ」とはどんな少女だったのか、父との関係は…?
【コメント】
これも小説ですが、作者自身を主人公にしたかのような作品。戦前の新潟地方が舞台です。
口数の少ない、ぶっきらぼうな「はるじ」という少女を男同士の親友のように扱う一方、言い難い想いを懐く青年たちの哀しいようなせつないような、そんなお話に思えます。語り手である「清之」という少年の想いもまた
自分の父親の過去を何とも言えない気持ちで聞く五郎ですが、最後にはちゃんとオチがあるところがいいですね。

風鳥

文芸春秋 1993.11.15 221p ISBN4-16-313490-5

月潟鎌を買いにいく旅〔文學界 1988年7月号〕:p5
風鳥〔文学界 1994年1月号〕:p71
魚津埋没林〔文学界 1993年10月号〕:p129
【コメント】
3作とも自伝色の濃い作品。舞台はいずれも新潟地方です。よほど刃物に縁のある人らしく、全作にほぼ共通して日本刀や金物が出てきます。
「月潟鎌を買いにいく旅」は用事のついでにクモ膜下出血で倒れた兄のリハビリのためにと頼まれ、月潟鎌を買いに高田市、故郷の新井市を訪れる旅を描いたもの。警官だった父のこと、日本刀や兄との微妙な関係など、小説やエッセイではおなじみのお話。
「風鳥」はふうちょうという渾名の遠い親戚の男とその妹との子供の頃からの思い出が描かれています。
最後の「魚津埋没林」は3度しか会っていない伯母との出来事が綴られています。23~24歳くらいの頃、岩波映画社でセミ・ドキュメンタリーの撮影にアフリカまで行った時のことが少し書かれています。
こんな風に書くれると日本の田舎の妙に湿った感じ、おかしさ、猥雑さが感じられ、地方も面白いなあと思います。日本海のロマンは後期の作品の根底を流れる空気なので当然と言えば当然ですが、一人称の小説となるともう少し卑近というか身近に感じます。

単行本未収録作品

馬の屍体が流れる川:群像 1994年7月号 p6~49


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