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戯曲

破れた魂に侵入―Life Line―

初出:『悲劇喜劇』2002年2月号

【上演データ】
製作:木冬社
2001年11月16日~25日
会場:サイスタジオ
演出:清水邦夫・松本典子
美術:上田淳子
照明:堀井俊和
出演:吉田敬一/泉谷侑子/新井理恵/川本貴史/水谷豊/瀬下智子/佐藤里奈/大野舞紀子/金光泰明/渡辺亮/根本おりえ
【あらすじ】
舞台は「いのちの電話」のオフィス。自殺志願者からの相談を電話で受けるというボランティア団体である。相談員は全員他の職業をもつボランティアであるが、きちんと研修を受けて配属されるのだ。
新人の村田海が初めての相談の電話に出る。相手は中年の男のようだ。交通事故で妻子を亡くしてから、気づくと拳銃をもてあそんでいると言う。何故拳銃をもっているかというと、相談者が警察官だからだ。アメリカの大都市では自殺者の比率で警察官が第二位を占めるという話を二人とも知っている。男はオフィスに貼ってある標語を読んで電話を切る。相談員らは男の声には聞き覚えがあるのだが‥。
【コメント】
「この物語は、あるボランティア団体の存在から刺激を受け、発想したドラマである。」とのことです。何故わざわざ「あるボランティア団体」と言うんでしょうね。やはりちょっとクレームが入ったとしか思えません。確かに、相談員があんな人ばかりだと思われたらイヤでしょうけど、普通、観客はそんなふうに思わないと思いますが。お芝居なんですから、虚構の世界です。表現者としてはそんなことまで考えて制限が加えられたらたまらないでしょうね。あーなんていうか、ボランティア団体とかってだからイヤなんですよ。んと。防衛本能が強いというか、了見が狭いというか、神経質というか‥。別に間違ってるとは思いません。ただ、攻撃されるのイヤですし、誤解されることを嫌いますよね。気にしなきゃいいと思うんですが。基本的に暇なんですよ。そんなこといちいち気にしたり、自分を守ろうとクレームつけたりっていうのは。
だから私は利益をあげる集団以外での活動はしたくないんですよ。お金が絡めばお金が価値基準として明確に示すことができるんですが、そうでないと、上の人の思惑だとかよくわからないことが蔓延するので。
なんていって、勝手に「ああクレームついたんだな」なんて想像して頭に来て妄想する私もどうかしています(笑)。別にクレームがついたとは一言も書いてません。
それにしても「いのちの電話」ですか。私がはじめてその存在を知ったのはテレビドラマでした。1980年、大岡昇平原作で若山富三郎が主演したNHKドラマ「続々・事件」(佐藤浩市デビュー作)で彼がいのちの電話にかけるという設定があって、弁護士にテープを聴かせるというシーンがあったのだけれど、実際に録音テープを外部に持ち出すようなことはないという注釈が入っていたように思います。まだ活動を続けているのですね(ホームページがちゃんとある)。
死について相談する場所ですから非常に演劇的ではありますが、やはり際どいところがありすぎです。人の生死を電話一本で救えるのか?というお題ですからね‥結論を要求しづらいですし。
もちろん、物語は面白いです。お得意の逆転につぐ逆転というか、予想外の話がポンポン出てくるところなど、とても清水節だなと。また挿入される詩がきいているところとかも、とても氏の戯曲らしくて、私はほっと安心です。
最近では相談員と相談者の関係なんてすぐに逆転し得る、という展開は納得できます。電話で相談するとまた違った風景が出てくるとか電話の先の人と実際の人が違うということもよくあります。ただ、どうしても古い。ネットでチャットをしたりメールを書いたりしている人と実物に差がありすぎることから出来てくるドラマなら見たいと思いますが、今更電話ですか‥?しかも携帯電話全盛期で、電話が体の一部のように身近になってしまっている現状では、あまり別の人格なんて作りづらいのではないでしょうか?
 


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