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戯曲

戯曲推理小説―ローズマリーの赤ん坊のように

初出:1987
収録:「清水邦夫全仕事1981~1991下」p245~289 河出書房新社 1992.11.30

【上演データ】
1987(昭62)年11月6日 (金) ~1987年11月15日 (日)
木冬社=パルコ提携公演
会場:パルコ=スペースパート3
演出:清水邦夫
美術:朝倉攝
照明:服部基
音響:深川定次
出演:松本典子/黒木里美/不破万作/玉城美〓(王へんに路)/他

再演
1999(平11)年11月10日~14日
木冬社<サイスタジオにおける小さな公演 vol.4>
会場:サイスタジオ
演出:清水邦夫,松本典子
美術:上田淳子
照明:堀井俊和
出演:黒木里美(清原ぎん),新井理恵,関谷道子(清原えり・ダブルキャスト),吉田敬一(木村冠),川本貴史,水谷豊(木村小太郎・ダブルキャスト),深野良純(小早川ばく),関谷道子,新井理恵(清野・ダブルキャスト),高橋秀城(だいすけ),小川真範(ブーやん),泉谷侑子(信子),扇谷光恵(ミキ),小林美穂(真美),越前屋加代(とも子),佐藤里奈(里奈),桜井友紀(ジュリア),柳下智子(ルイーザ),越前屋加代,扇谷光恵,小林美穂(3人の伯母さん)
【あらすじ】
市民劇場主催の「欲望という名の電車」地方公演の楽屋。劇団の看板女優・清原ぎんは主役のブランチを演じていたが、舞台の上で妹えりの亡霊を見たことで動揺、大失敗をしてしまう。えりはその劇場の楽屋で1年前に自らの命を絶っていた。
亡霊は楽屋に戻ったぎんの前に再び現れ、自分は自殺ではなく誰かに殺され、その犯人を見つけるために出てきたのだと語る。そして、えりの息子の木村小太郎、そして劇団のかつての仲間で、えりの別れた夫木村冠も登場するが、息子や夫にはえりが見えないらしい。楽屋は混乱を極め…
【コメント】
舞台設定や亡霊が登場するところなど「楽屋」の続編と言ってもよい作品。「楽屋」で展開された女優論も更に深みを増しています。また「推理小説」の名にふさわしく、ミステリータッチで舞台は進みます。少しずつ真実が明らかになっていくことで、犯人探しよりも、もっと深く、登場人物の内面が露わになっていく様は相変わらず冴えています。
もちろん単なる「楽屋」の舞台を借りただけの焼き直しなどでは全くなく、ぎんとえりと冠の三画関係、劇団の内部紛争、俳優志願の嘘つき少年・小太郎の登場などサイドストーリーも豊富です。
小太郎の存在や劇団内部紛争の面白いサイドストーリーがあったので、この辺をもう少し詳しくやってくれたら、木冬社の若い俳優たちを観ることが出来たのかもしれないな、とちょっと思いました。
 

■ 女優N―戯曲推理小説

加筆再演
2001年6月7日~17日
会場:シアターΧ
演出:清水邦夫
美術:上田淳子
照明:山口暁
音響:深川定次
衣裳:若生昌
舞台監督:富川孝
出演:松本典子(新村玲)/黒木里美(新村えり)/吉田敬一(木村冠)/水谷豊(木村小太郎)/深野良純(小早川ばく)/佐藤里奈(信子)/根本おりえ(ミキ)/金光泰明(亀井)/川本貴史(だいすけ)/渡辺亮(ブーやん)/林香子,新井理恵(清野・ダブルキャスト)/真美(泉谷侑子)/瀬下智子(ジュリア)/大野舞紀子(ルイーザ)/中村美代子(中野ハナ)
【あらすじ】
日本海ぞいにある町、その町の市民会館へ公演にやってきた清原ぎんと劇団員たち、演目は『欲望という名の電車』。途中まで芝居は順調に続いたが、突然ぎん演じるブランチとスタンレーがが舞台上で正面衝突転倒し舞台は上演中止。
突然の出来事に劇団員たちはあたふたするが、主役のぎんは公演の続行について口を閉ざしている。というのもこのホールは、同じ劇団にいたぎんの妹のえりが楽屋で毒入りのワインを飲んで自殺した因縁の場所だったのだ。
幽霊になったえりが突然舞台に現れ、それが転倒の原因だった。奇妙な再会を果たした姉妹。そして妹のえりが思いも寄らないことを口にした。「姉さん、あたし自殺したんじゃないの、殺されたの」‥‥‥‥
【コメント】
この「女優N」という作品は、もともとオリジナル作品「女優N―もう悲しみはないかも知れない」として書き下ろされる予定が、作者体調不良のため、急遽「戯曲推理小説」の改訂として上演されました。
私はこの作品を観ていません。正直、仕事のストレスが非常に強かったこの時期、見に行く余裕がなかったのです。チケットは買ってありましたが、再演になった時点で、ちょっと気持ちが引いてしまいました。
今は観ておくべきだった、と後悔しています。その理由は、もしかしたら、これが女優・松本典子の最後の作品となってしまったのです。ご本人の決意は固く、清水氏すら決意を翻せないようです。(→「テアトロ」2001年12月号)。同時に劇団としての木冬社はこの作品を最後に解散し、演劇企画木冬社として存続するそうです。もともと木冬社は劇団の形式をとらずに結成されたので、思ったより長く続いたと言えるのでしょうが、合わせて残念です。
松本典子の最後の作品=清水邦夫作品です。清水氏最後のオリジナル作品はもう絶対出てこない、とは限らないと私はどこかで信じているので、それこそが、女優・松本典子の最後の作品ではないかと一縷の望みをつないでいる次第です。
(永井)

本来、松本典子・女優生活40周年に寄せて、新作「女優N」が上演される予定でした。それが、清水さんの体調不良で新作が間に合わず、最終的に「戯曲推理小説」を加筆・再演する形での「女優N」として幕を開けました。
初演と同じ松本・黒木コンビの演技はさすがで、品のある舞台に仕上がっており、決して悪くはなかったのです。が、(清水さんの体調のせいなのか)かつてこの作品が初演、再演時に持っていた'きらめき'というか、あの輝く台詞の生き生きとしたテンポは、残念ながら消えてしまっているように思え、それが長年の清水ファンにはショックでした。
加えて、松本典子さんがこの公演を最後に、女優生活に幕を降ろす決意をされていることもショックでした。この舞台を妙に悲しいと思ったのは、彼女の白鳥の歌だったからなのでしょうか。
パンフの中にひっそりと書かれた文字。「名優と芸道にいっさい関心がありませんでした。そして、成熟を拒否してきました。これが限界かな、私の……」
松本さん、そう言わず、ぜひもう一度、清水作品の舞台に立って下さい。
(2001.9.11 しの)
 


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