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戯曲

楽屋―流れさるものはやがてなつかしき―

初出:『新劇』1977年8月号
収録:「夜よ おれを叫びと逆毛で充す 青春の夜よ」p101~154 講談社 1977.10.20
「楽屋―流れさるものはやがてなつかしき―」p3~49 レクラム社 1989.1.10
「清水邦夫全仕事1958~1980下」p199~227 河出書房新社 1992.6.20
「清水邦夫 1」ハヤカワ演劇文庫 p113~181 早川書房 2006.11.22

【上演データ】
初演
1977(昭52)年7月13日~16日
木冬社第2回公演
会場:渋谷ジァンジァン
演出:秋浜悟史
美術:大野泰
照明:日高勝彦
効果:深川定次
舞台監督:織田忠正
出演:松本典子(女優C)/安部玉絵(女優A)/中野礼子(女優B)/新野加代子(女優D)
再演(2):1979(昭54)年7月
木冬社第4回公演
三百人劇場
出演:松本典子/安部玉江/他
受賞:紀伊國屋演劇賞(第14回・1979年度)個人賞(松本典子)
再演(3):1981(昭56)年12月16日~21日
木冬社特別公演
渋谷ジァンジァン
出演:松本典子/安部玉江/守屋るみ/佐藤由美/他
再演(4):1983(昭58)年3月
木冬社ミニ・シアター公演 No.1 No.2
会場:木冬社アトリエ
演出:新田隆
出演:伊藤珠美/本田浩美/他
再演(5):1985(昭60)年10月
ジァンジァン清水邦夫作品連続公演
渋谷ジァンジァン
出演:松本典子/黒木里美/本田浩美/菊岡薫/豊田恭子/磯野佐和子/青柳朱実
再演(6):1988(昭63)年8月27日~9月4日
木冬社Ankhスタジオ公演vol.1
会場:木冬社アンクスタジオ
演出:清水邦夫
出演:松本典子/黒木里美/南谷朝子/玉城美〓/菊岡薫/林杏子/越前屋加代/田中幹子
【あらすじ】
 楽屋。亡霊になった女優Aと女優Bが楽屋で念入りに化粧をしながら、永遠にやっては来ない出番にそなえている。今上演中なのはチェーホフの「かもめ」。主役のニーナ役の女優Cが楽屋に戻って来ると、プロンプターをつとめていた女優がパジャマ姿でマクラを抱えて現れる。
 女優Dは精神を病み入院していたが、すっかりよくなったから、ニーナ役を返せと女優Cに詰め寄る。言い争いになり、女優Cは思わず女優Dの頭をビール瓶で殴ってしまう。女優Dは起き上がってふらふらと出て行くが、女優Cが楽屋を出ていった後に戻ってくる。今度は亡霊のAとBが見えている。打ち所が悪く死んでしまったようだ。ニーナ役が欲しくて精神異常になった若い女優がまた一人死んだ。
 3人になった楽屋の亡霊は、何かの拍子にやって来るかもしれない出番のために稽古を始める。「わたしたちだけがここに残って、またわたしたちの生活を始めるのだわ。生きていかなければ、…生きていかなければ…」
【コメント】
 某劇場の楽屋の壁にアイロンの焼けた後がくっきりつけられているのを見て書くことを思いついた作品だそうです。そんな強い焼け跡は誰かが何者かに呪詛の炎を燃やして押しつけなければつかない、そんな想像が働いてしまったと書いていました。女優の楽屋は出入りが不自由な場所だからこそ、想像力がかきたてられる、と。
 肩の力の抜けた小作品ですが、一つ何かを突き抜けたかのような感じがします。女優という職業の凄まじい業を描き、舞台を舞台化した作品としては出色の出来だと思います。亡霊女優二人の戦前の訳と戦後の訳の違いや、戦前のリアリズムと戦後のリアリズムなどという台詞が飛び交うあたりも面白いです。
 素材はチェーホフの「かもめ」と「ニーナ」。しかもおいしいラストシーンの台詞を使っています。出演するのは女優4人。これはもう、学校演劇で人気が高いのも当然でしょう。高校の演劇部なんて共学だったんですけど、本当に女性しかいませんでした。
 演出は秋浜悟史に依頼しており、自作を演出する重圧から逃れたかったものと見えますが、結局「あの、愛の一群たち」を最後に木冬社公演は清水邦夫の演出となります。
 「楽屋」は木冬社の看板作品となり、以後何度も再演されています。他にも青年座やいろいろなところで上演されていますが、きりがないので、ここでは木冬社での上演だけにしました。私はギリギリ最後の1988年の公演に間に合ったのですが、何しろ綾瀬は遠かった。何がなんでも松本典子の「楽屋」を見なければ、の一心でしたが、片道2時間半かけたかいは確かにありました。
 


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