愛の森―清盛をめぐる女人たち
初出:『テアトロ』1995年8月号 p124~170
収録:
「清水邦夫全仕事 1992~2000」
p133~197 河出書房新社 2000.6.23
【上演データ】
初出:1995
文学座公演
文学座、紀伊国屋書店提携
演出:鵜山仁
装置:倉本政典
照明:増山聖
音響効果:望月勲
衣裳:中村洋一
舞台監督:杉本正治
演出補:松本祐子
制作:日下忠男
殺陣:國井正広(旧漢字の広)
所作指導:世家真ますみ
出演:仏御前[実はふぶき](平淑恵)/祇王(寺田路恵)/祇女(山本郁子)/ふね(母刀自)松下砂稚子/源三[実は平忠度](坂口芳貞)/正綱(金内喜久夫)/三郎(清水明彦)/八郎(内野聖陽)/浜の女1(塚本景子)/浜の女2(山本あゆみ)/浜の女3(斉藤恵理)/浜の女4(山本深紅)/郎党1(横山祥二)/郎党2(佐藤淳)/郎党3(入江修平)/郎党4(白鳥哲)/郎党5(浅野雅博)/郎党6(徳永淳)
【あらすじ】
舞台は源平争乱期。平安時代末期の平家滅亡後、清盛の愛人だった祇王とその母ふね、妹・祇女は郎党・源三を伴い母の故郷に落ちのび、母の幼なじみである湊正綱の元にかくまわれている。
祇王は狂気におかされているが、自分を追い出した、清盛の愛人・仏御前が現れるときだけ生き生きとする。ところが、その仏御前は3年前に死んでおり、ふねが仕組んだ芝居で、実際は「ふぶき」という女に頼んで演じてもらっているだけである。
一方、正綱の息子の八郎は郎党の源三が清盛の一番下の弟・平忠渡ではないかと疑い、ふぶきを使って、狂気の祇王から隠された事実を聞き出そうとしている。忠渡を捕らえて召し出せば、出世できるのではないかという野心をもっている。
平家狩りの手は間近に迫ってきた。正綱は追っ手に渡すくらいなら、3人を自らの手で始末する覚悟でいるが…。
【コメント】
狂気に侵されている人物が、隠されていた真実を解き明かし、正気に見えていた人物が、次第に狂気に侵されていく…といういつものお話。非常に久しぶりに文学座に向けて書いた作品で、登場人物が多いことや歴史ものであることも、そのせいかと思われる。
正綱の、ふねに対するプラトニックな愛が例によって戯曲に押さえた魅力を付け加えている。
(永井)
装置は、森の中で、まんなかに雅楽の舞台のような赤いてすりがおいてあるものでした。(それもとてもさびれたかんじの。白拍子の舞台なのかな。)たしかバックに格子のようなものがいくつか吊ってあって、それが場面ごとに上下していました。(感想文は大学に提出してしまってうろ覚えですが・・・格子の上下の意味はわからなかったです)
赤い手すりの上を仏御前事平淑恵さんがいきいきととんだりはねたりしていました。それと対峙して、祇王が例のごとく狂っているわけですが、この狂い方もまたなんとも素敵でした。
狂気の世界とはいえ、「火のようにさみしい姉がいて」のように重いばかりではなく、きもちよく観られた気がします。
(1998.12.16 悠哉さん)
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