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戯曲

泣かないのか?泣かないのか一九七三年のために?―にぶき光の残酷ショー―

1973年の作品
初出:不明
収録:「ぼくらが非情の大河をくだる時」p185~243 新潮社 1974.2.15
「清水邦夫全仕事1958~1980下」p57~89 河出書房新社 1992.6.20

【上演データ】
1973(昭48)年10月12日~27日
櫻社=新宿文化提携公演No.3
会場:新宿文化
曲:ケメ+バッハ+和讃
企画:葛井欣志郎
演出:蜷川幸雄
美術:大野泰
照明:吉本昇
音響:市来邦比古
作曲:田山雅充
舞台監督:高橋正篤
出演:石橋蓮司(教師)/蟹江敬三(青年)/石井愃一(お滝)/西村克己/赤石武生/鈴木弘一/和田沙菜恵/椎谷健治/石川邦彦/谷正雄/中村周二/つじあきら/小山正隆/鈴木弘一/杉山正/内村直樹/中西良太/堂下繁/古田マユミ/田根楽子/吉見咲羅/亀岡梨枝子/羽田えみ子/他
【あらすじ】
 大衆浴場「百人湯のしまい湯」。青年と教師が入る中、老婆が桶を片付けている。すると突然ボロボロで血塗れの男たちの一群がなだれ込む。彼らは残酷ゲイボーイショー「責縛座」の一座なのだが、その傷はショーでつけたものではなく、あまりにお粗末な芸に怒った客に襲われたのだった。
 かつてのスター・ジュリーの不在をなげく老婆と座長のお滝。新しいスターを発掘すべく青年と教師を巻き添えにして残酷ショーが始まる。「真情あふるる軽薄さ」「想い出の日本一萬年」「鴉よ、おれたちは弾丸をこめる」「ぼくらが非情の大河をくだる時」と懐かしい場面が繰り広げられる。
 ショーが終わっても老婆たちが起き上がらない。その死体を愛撫し始める群。その屍姦者の群に加わることを拒絶した教師と青年はお滝らに縛られ、タンゴを踊りながら死んでいく。彼らを乗せた白い浴槽の舟は闇に消えていく。
【コメント】
 現代人劇場を解散し、櫻社を結成したけれど、結局これが蜷川・清水コンビの一つの終焉となりました。だいたい作り方がそうじゃないですか。過去の芝居を持ち出してくるなんて、一種の決意表明(この言葉も結構好きですよね)。総決算とも言うべき作品です。
 作者・清水邦夫は50年代末に芝居を書き始め、安保闘争に参加し、社会人になってからも労組の一員として安保闘争に参加しました。そして69年から73年の全共闘の時代、青年たちの「兄」として颯爽と新宿の街に登場しました。時代の疾風とともに走り抜け、青春の傷跡を舞台に描き出す青年は、この時すでに38歳。青春の作家としての清水邦夫がここで一度終わります。
 普通の作家だったら、これで終わりだと思います。しかしすでに俳優座にも作品を出していた、Wellmadeではなくとも痛切に現代の家族を描くことのできる清水邦夫は、一人の劇作家として新たな出発を迎えます。一方蜷川幸雄はすでに日生劇場の演出を手掛け、商業演劇においても自らの手法が通用することを証明し、世界のニナガワへとはばたいていく、そんな時期でした。
 


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