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戯曲

海賊、森を走ればそれは焔……―九鬼一族流史―

初出:『文芸』1984年8月号
収録:「花のさかりに…」p3~82 テアトロ 1986.12.10
「清水邦夫全仕事1981~1991上」p375~420 河出書房新社 1992.11.30

海賊、森を走ればそれは焔…… パンフ表紙
【上演データ】
1984(昭59)年7月
俳優座公演
会場:俳優座劇場
演出:増見利清
美術:高田一郎
効果:田村悳
出演:磯部勉/堀越大史/香野百合子/中村美代子/松本克平/他
【あらすじ】
 湊の衆はかつて瀬戸内海の海賊だったが、今は陸に上がり、尼崎藩の水道陣屋の管轄におかれている。湊の衆の兄弟、三郎と五郎はある日帆立雲を追いかけて森の中に迷い込んでしまった。そこで久鬼水軍の一族と名乗る不思議な男に出会う。久鬼水軍は元は伊勢鳥羽の海で活躍していた海賊だったが、摂津の三田藩に転封され、陸に上がって十五年になる。
 その男は久鬼一成といい、久鬼水軍の水にも潜ると言われた船「海神丸」を転封の折りこっそり森の奥の小沼に運び込んだと語る。三郎と五郎はにわかには信じかねるが、そこへ二人を捜索に来た湊の衆がやって来て…。
【コメント】
 「水軍」というのものは、ロマンあふれる時代劇には格好の材料です。源平の時代から綿々と続いて来た水軍の歴史も、戦国時代が終わったところでほとんどが終わってしまいます。江戸時代に入ると各地の水軍はことごとく陸へ転封され、強制的に移動させられます。長い間我が国では「海の男のロマン」なんていうものは本当に少数の人にしか味わえないものだったんでしょう。
 そもそも湊の衆のような一般の船を襲う家海賊と言われる小さな海賊達がいて、それらから船の安全を守るということで大きな水軍は船からまあ護衛代みたいなものをもらって生活していたわけで、お互いもちつもたれつの関係のように見えます。
 ところで、陸へ上がる船というモティーフはヘルツォークの「フィッツカラルド」という映画を思い出します。1981年の公開ですから、ひょっとして頭の片隅に記憶にあって書かれたのかも…と思いました。
 俳優座へ書き下ろした作品だと思われますが、磯部勉が主演しています。彼は以後木冬社の舞台の常連となります。私は長い間木冬社の俳優さんかと誤解していました。そう言えば、私はテレビで初めて見た時から好きでした。樋口加南子がお姫様で、その家来だったような記憶があるんですけど…番組名が思い出せないんです。ご存じの方教えて下さい。
 


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