清水邦夫著作リストのホームに戻る
戯曲

エレジー―父の夢は舞う

初出:1983
収録:「エレジー―父の夢は舞う」p3~162 河出書房新社 1983.10.15
「清水邦夫全仕事1981~1991上」p193~253 河出書房新社 1992.11.30

受賞:読売文学賞(第35回・1983年)戯曲賞

【上演データ】
初演
1983(昭58)年9月
劇団民藝公演
会場:三越劇場
演出:宇野重吉
美術:内田喜三男
照明:秤屋和久
音響:間宮芳生
効果:山下泰男
出演:宇野重吉/南風洋子/仙北谷和子/三浦威/西川明
再演
1999(平11)年3月4日~17日
紀伊國屋・木冬社公演
会場:紀伊國屋サザンシアター
演出:清水邦夫
美術:妹尾河童
照明:服部基
音響:深川定次
衣裳:若生昌
舞台監督:富川孝
出演:名古屋章(吉村平吉)/安原義人(吉村右太)/磯部勉(河崎清二)/松本典子(中平塩子)/黒木里見(中平敏子)
【あらすじ】
 工業高校で生物の教師をしていた平吉もすでに停年になり、その弟の右太は映画のプロデューサーのようなものをしているらしいが、兄に借金がある。ある日、右太は兄の家の修繕をしにやって来た。そこへ平吉の息子の嫁が訪ねて来る。
 平吉の息子、草平は最近肺炎で亡くなったばかりだが、この家を買うにあたり、頭金を平吉が出し、ローンは草平夫婦が払っていた。草平夫婦は最初は一緒に暮らそうとしたのだが、結局家を出てアパートで暮らしていた。それにも関わらず草平はローンを払い続けたが、草平が死んで嫁が払い続けるのもおかしな話だと、嫁の塩子がローンの督促状を届けに来たのだ。
 平吉と塩子は初対面の印象が悪かったらしく、平吉は塩子から逃げまわる。だが、共稼ぎしていた息子夫婦が払ったローンの中には塩子の分も入っているから、その分は返すが今は金がないという妙に堅い平吉に対し、断る塩子。彼女はこの家を自分のものにする、という夢をもって払い続けていたが正式な妻ではないため、草平の死とともにそれはかなわなくなった。もう、そういうあてにならないものをあてにして生きていたくない、という。平吉は名義替えをしてやるから、今まで通りローンを払い続けて、自分が死んだらこの家をもっていけばいい、という変な提案を塩子にする。塩子の方もついそれを受けてしまうが…。
【コメント】
 話は結構入り組んでいますし、長い戯曲です。男勝りで一本気の嫁と頑固な父親の間に生じる、なんとはない緊張感に、狂言回しの弟や嫁に求婚する青年医師、精神を病んでいる独身の伯母が絡んできて、複雑な人間模様が展開されます。
 一見折り合いが悪く見える舅と嫁ですが、舅は嫁との関係が切れることを恐れてローンを払い続けるよう言ったのではないか、という印象を受けます。宇野重吉が演じたであろう父親は、頑固者で堅物ですが、それだけではない、なんとなくロマンをもった魅力的な老人であったに違いありません。残念ながら私は宇野重吉の舞台は見たことがないので、何となくそんな気がするだけなんですが。
 主人公が凧の研究家であるという設定で始めてというモティーフが現れました。以後時折出てきますが、その、地に足がついてない、ふらふらとした様が清水作品の登場人物に似合っています。
 


Copyright (c)1998-2023 Yuko Nagai All Rights Reserved.

発表順戯曲一覧
五十音順戯曲一覧
戯曲収録図書
シナリオ
小説
評論・エッセイ
関連記事
年譜