地味な女子大生・ナズナのシャーペン・消しゴム・定規、ぱっとしない男子大学生・八神ナオの鉛筆、小学生男児レイのコンパス、初恋の墓標となってしまった万年筆...売れない漫画家のペン軸・筆...みんな、とてもけなげな文房具たち。その擬人化。
そして、その持ち主の人間たち。疎外感を感じておとなびてしまう一方、等身大でいようと心がけている小学生や評価されずにいじけずに描き続けようとする売れない漫画家といった、かわいい人たちがたくさん登場する。でも、酒癖悪く、好きな男の子を蹴ったり叩いたりする(それもDV!)ツンデレ女子大生・ナズナが一番かわいい。
思わず人と比較してしまったり、人にけなされたり、ダメだと思う自分とどう向き合って、それでも創作を続けていくのかというお話に収束していく。ナズナよりハタノの方が、少しだけ前を行っているが、でも二人とも作者の思いを表しているような気がする。
『flowers』で5年前に読み切りとして登場して以来、ポツポツと掲載され、今年になって3本まとめて描かれ、ようやく単行本にまとめられた作品。最初から連載で読んでいたが、さすがに頭の方の話は忘れていた。大きな判型の本で出してくれて、ありがたい。そして、この本、装丁がすごくいい。質感を大事にしている。こういうのは紙の本で買わなきゃとつくづく思う。
小学館 2014.9.15 ISBN978-4-09-136249-0
■初出誌
机上の空恋...『月刊フラワーズ』2010年1月号
雨とサイダー...『月刊フラワーズ』2010年8月号
踊るコンパス...『月刊フラワーズ』2011年4月号
萬年みた夢...『月刊フラワーズ』2012年4月号
G線上の地団駄...『月刊フラワーズ』2013年11月号
14日の金曜日...『月刊フラワーズ』2014年4月号
アケガタ花壇...『月刊フラワーズ』2014年6月号
紙のみぞ知る...『月刊フラワーズ』2014年8月号