すーちゃんの恋/益田ミリ
前作「どうしても嫌いな人」に比べると「すーちゃん」や「結婚しなくていいですか」の頃に戻ったような「すーちゃん」シリーズ第4弾。仕事に前向きなすーちゃんが帰って来たからそう感じるのだろう。本書では、すーちゃんはカフェを辞めて、保育園の給食をつくる仕事をしている。子供たちの喜ぶようにと食事を工夫し、自宅で試作品をつくったりする、そんなすーちゃんが戻って来た。「おおきなかぶ」「どろんこハリー」といった絵本の定番とからめているところもいい。
偏食のある子供は甘やかされているからなどという単純なものではないことに気付く。子供にはそれぞれのこだわりがあるもので、問題のある状況を自分なりに少しずつ調整していくものだ。すーちゃんの仕事柄、子供はお客さんだから、そういったことを理解していくことは重要なことだ。
子供の"それぞれ"を尊重するのなら、何故大人の"それぞれ"を尊重できないのか、と言いたいのかもしれない。「子供を産む人生、産まない人生」と帯にあるが、本の中では「産まない人生」のいつまでたっても「このままでいいのか?」という感じ、「産む人生」の「なんとなく取り残されている」感じ、その両方を描いている。このテーマを描くとなると、産もうが産まなかろうが、それぞれでいいのにという方向へもって行くよりほかないのだが、それぞれに説得力をもたせられているかどうかは、この段階では判断しかねる。
すーちゃんの"恋"の方は、34と37歳の恋愛なんて、プライドもあるし、意外とお互い臆病になりがちなのかもしれない。いろいろと考えながらのメールのやりとりなど、"こんな感じなのかもね"と思えるように出来ている。
幻冬舎 2012年11月10日 ISBN978-4-344-02273-7