皺/パコ・ロカ
パコ・ロカ著,小野耕世,高木菜々訳 小学館集英社プロダクション 2011.8.10 ISBN978-4-7968-7091-7
えすとえむさんがスペインで見つけて、小野耕世さんが翻訳して出したBD。書評家のお歴々の評価は高いが値段も高いので悩んだが、結局普通に新刊で買った。思い切って買って良かった。何度も読み返さないと、細かいところまでわからないし、半分以上カラーだし。ラストの顔が見えなくなっていくシーンとか、わかりやすいマンガ的表現だけれど、こういうところが欧州ではいいんだろうな。日本の漫画に比べてもどうしても表情に乏しいとかコマ割りに工夫がないとか感じてしまうが、一コマの構図とかがすごくていねいに描かれている。雑誌連載をベースにしている日本の漫画だと、こんなふうにじっくりと作品に取り組むのは難しいかもしれない。ヨーロッパの漫画家は日本の漫画家のように量産しないのだそうな(えすとえむインタビューより)。取材を重ねて様々な老人たちの姿を描いているが、重苦しいような話ではない。
一緒に入ってた「灯台」の方がテーマ的にはしっくり来る。スペイン内戦のお話だからだ。これも実際に作者が見聞きしたエピソードが入っていて、じんわりとする。
こんなに良い本なのに、漫画だからって図書館に入らないのは本当にバカげてる(→カーリル)。都心の大きめの図書館には入ってるが少ない。入れ始めたらきりがないと言うのだろうが、版元から取り寄せできるし、普通の漫画と違うのは版元でわかるのに。そういう手間暇を惜しむのはもったいないなと思う。