太田出版 2010.12.30 (f x comics) ISBN978-4-778-32129-1
2巻では関根くんが何故「残念」なのかが次第に明らかになって行きます。彼はおそらく30年もの間、他人との軋轢に悩んだことがないのです。普通は思春期くらいの時期から自分の中におきる感情を「これは何だろう?」と考えていきます。それはおおむね他人との軋轢をきっかけにすることが多いと思います。直接的な軋轢でなくとも他人を妬んだり憧れたりすることで、自分の感情と向き合っていかざるを得なくなります。それが結局は「自分とは何か?」を考えることにつながります。30年経ってようやく自分には何かに夢中になった経験がなく、空っぽであることに気付いたっていうのは驚きですが、実際にそういう人がいるのかもしれません。
自分の中の胸のざわつきが何なのか考えてもみようとしなかったから、数音先輩を見ると嫌悪感しかわかなかった。それは彼の中におきた感情が理解できないものだったからでしょう。何をやってもそこそこ出来るので、コンプレックスを感じることもなく、他人と自分を比較することもなかったのでしょう。
それでも紺野くんをキライながら、付き合っているのは数音先輩のことだけでなく、何かが紺野くんにあると感じているのかもしれません。あるいは関根くんには生来のつきあいの良さみたいなものがあるのかもしれません。だからこそ他人からひどく嫌われるようなことはなかったのかもしれない。
普通はそれでも悪い意味でちょっかいを出して来る人がいるので、その辺からいろいろと自分のことがわかっていくものなんですが。だから堂島くんは登場する必然性があったのだと思います。
サラのおかげで数音さんの呪縛から離れられた関根くんは、どこへ行くのでしょうか?
■初出誌
関根くんの恋 第6話 ...『マンガ・エロティクス・エフ』vol.62
関根くんの恋 第7話 受難の始まり...『マンガ・エロティクス・エフ』vol.63
関根くんの恋 第8話 鈍痛...『マンガ・エロティクス・エフ』vol.64
関根くんの恋 第9話 前震...『マンガ・エロティクス・エフ』vol.65
関根くんの恋 第10話 急転直下...『マンガ・エロティクス・エフ』vol.66
関根くんのバレンタイン...描き下ろし