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2011

妖精消失/安堂維子里

妖精消失/安堂維子里徳間書店 2011.4.1 (リュウコミックス) ISBN978-4--19-950231-6


「世界の合言葉は水」で不思議なSF世界を見せてくれた安堂維子里の2冊目の単行本。すべて徳間のCOMICリュウにて発表された作品である。私はこの人のやわらかい絵が気に入っている。前作はまさに「水」がテーマだし、今作の妖精の羽がやわらかくて、やぶれそうで、もろくて、感じやすい、そんな絵がいいなと思う。

ジャンルとしてのSFやファンタジーにはまるで強くないが、漫画の世界でこれを通らないわけにはいかない。BLと同じくらい、当たり前のものだと思っている。そんな中で妖精は様々な作家に描かれているが、私は波津彬子が時折登場させる妖精が気に入っていて、絵の感じは違うが、造形はかなり近い。人間と妖精の世界を行き来する話もあったし、比較的親しみやすい世界だった。

この物語のおもしろいところは、妖精と人間世界の違いを「時間」の有無においたところだ。妖精の世界には時間がない。それはなぜかというところがSFっぽいところだが、なるほどなとSFに不慣れな自分のような人間は素直に納得してしまう。

ここに登場するフェアリウム(アクアリウムの妖精版?)が本当にあったら、流行りそうだ。手間はかかるが、手先の器用さとは別のセンスと根気があれば作ることができるフィギュアのようなものだと思う。

■初出誌
Install of Fairy...「月刊COMICリュウ」2009年12月号
FAIRIUM...「月刊COMICリュウ」2010年4月号
The Fairy's Clock...「月刊COMICリュウ」2011年3月号
はやぶさ帰還篇~地球へ~...「月刊COMICリュウ」2010年10月号 別冊「小惑星探査機はやぶさ 帰還記念読本」