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2011

はてなの花/河内遙

はてなの花/河内遙集英社 2010.4.25 (愛蔵版コミックス) ISBN978-4-08-782266-3


装丁を見て、「りぼんコミックス」の大きいのかな?と思ったら、違うんです。なかなか芸が細かい。少女マンガと言えばこのなのかちゃんの絵柄が王道だった時代があります。「ぼんぼり」はもちろん「りぼん」ですが、乙女チック路線というような呼ばれ方でした。作者の少女時代も続いていたのだと思いますが、メインの時代はやはり大島弓子、くらもちふさこ、陸奥A子が代表格。中でもこの「なのかちゃん」の絵柄は陸奥A子そのものです。

この「少女漫画」と「SM」のギャップ。「へび苺...」に出てくる「スクリーン」同様、少女の頃の自分が今の自分を見たらどう思うか、というところから発生した作品とも言えるでしょう。その辺を外してしまうと、今ひとつよくわからない作品になってしまいます。男性には理解しづらいかもしれません。私も個人的には「りぼん」は全然受け付けなかったのですが、少女時代にだけ読んでいた漫画が突然今目の前に現れたら、やはりタイムスリップするでしょうし、懐かしいでしょうね。あとがきにもありますが、乙女チック路線を目指して乙女チックから遠いところにいる自分から、乙女な少女漫画へ向けたラブレターだそうです。

愛し合っているのに一方が望んでいることを一方が望んでいないという状況は、なかなかに厳しいものがあると思います。が、そこに本当に愛があるのなら、二人とも酔っ払って愚痴ったり、時に浮気もしたりしていますが、普段は仲良くやっていけます。そして年をとればどうでもよくなります。

細かいことですが、夫の転勤で見知らぬ土地に引っ越して来て3年も経つのに、奥さんに友達が一人もいないのは、さすがに無理があると思います。転勤を機に結婚したような描かれ方をされていますが、結婚後しばらくしてからの転勤なのかもしれません。その辺が明示されていないので微妙ですが。子供がいないのなら、もっと早く仕事に出るのが普通でしょうね。

それともう一つ。地方都市にしてもそれなりの大きな町じゃないとSMクラブはないんじゃないかなと思うので、大都市に転勤してきたのかもしれません。設定があいまいなのは本人というよりは編集サイドの問題かと思います。明確にしてくれた方が読みやすいだけなんですけどね。

連載から2年あまり経ってから最後の1話を加えて単行本化されたということは、最初から4回だけで終わりの予定が時間が経ってやっぱりオチをつけたくなって追加されたのか、あるいは最初から5回の予定だったのが打ち切りになったのか。本誌から別冊に移動しているところを見ると、あまり評判はよくなかったのかもしれませんね。何しろSMですから、フィーヤンとかエロティックスエフとかじゃないと、ちょっと厳しかったのかもしれません。

■初出誌
はてなの花(全4話)...『コーラス』2007年5月号、6月号、『別冊コーラス』2007年Summer、Autumn
ジュンとヨーコ...描き下ろし