Die Hochzeit von Haiti, 1949
Die Frauen aus Haiti, 1980
ハイチ島の三人の女
「ハイチの物語」明星大学出版部 1984.12.15 ISBN4-89549-065-3 1200円
※テキストブック:「Frauen aus Haiti」長橋芙美子,初見昇訳 芸林書房 1984 ISBN4-7681-2486-0 800円
※テキストブック:「Trennung」長橋芙美子,初見昇訳 芸林書房 1986 ISBN4-7681-2495-X
インディオの女性、黒人奴隷の女性、現代の黒人女性と、時代は異なるが、虐げられた三人のハイチの女性の悲劇的な生涯を描いた短篇集。かつて「ハイチの宴」でハイチを題材に取り上げ、再びハイチに取り組む。
簡潔な文章によって虐げられた女性たちの力強い生き方を描いた、ゼーガースの最後の作品である。
Das Versteck
隠れ場
コロンブスがスペインに戻る際、イザベル女王への貢ぎ物として、特に美しい娘たちが船に連れて行かれた。娘たちは丁重な扱いを受けているが、その中で最も美しい娘トアリーナが出発直後、船から海に飛び込んでしまう。ほかの娘達もトアリーナに続いて次々と飛び込むが、途中で捕らえられてしまう。トアリーナだけが陸地に向かわず、水に浮かぶ灌木に身を隠し、追っ手から逃れ、ある老女の導きによって洞窟にかくれて暮らすことになる。
その老女の息子チャナンギとの間に子供をもうけるが、チャナンギはスペインに対する反乱に加わり捕らえられてしまった。その友人がチャナンギによって使わされ、今度はその男との間の子供を産み、ずっと隠れて暮らす。その男も捕らえられるが、トアリーナの隠れ場所をもらさず死んでいく。
その後も多くの者の隠れ場となった場所でトアリーナは生きていく。ある日嵐によって洞窟が破壊され、トアリーナは死ぬ。その最後の瞬間、あのときの逃亡が成功だったことを知る。
Der Schlüssel
鍵
「ハイチの宴」にも出てきたハイチ革命の指導者トゥサンが捕らえられ、フランスに連行される。かつてともに戦った部下のアメデは妻のクロディーヌとともにパリへやって来て街路の労務者として働いている。彼らが住む場所はトゥサンが監禁されている牢獄の目の前なのだ。
かつてハイチで女中として働いていたクロディーヌは、小さな失敗をとがめられ、主人に狭い壁牢に閉じこめられて客のさらし者になっていた。その時革命が起こり、主人たちは逃げてしまい、火事によってほかの奴隷たちも逃げていく。クロディーヌだけが壁牢の中に閉じこめられてしまうが、そこへアメデが彼女を見つけ、主人から鍵を奪って救い出す。それ以来今でもアメデは鍵を首にかけている。
トゥサンが死に、墓参りに行くアメデとクロディーヌ。アメデが死に、その鍵を首にかけたまま葬られた。「世界のすべての奴隷が解放されるまでは、アメデがその鍵をつけていなければならない」とクロディーヌは言った。
Die Trennung
別離
ルイザの恋人クリストバルはデュバリエ独裁政権に嫌疑をかけられそういになり、難を逃れてキューバを出国した。ルイザは彼の帰りずっと待っていたが、コーヒー店のジュアンは優しくルイザを見守っていた。
ある日クリストバルは妻を連れて帰国する。その妻の資産を利用してハイチに図書館を建てるという目的をもっていた。政権の独裁ぶりは日を追うごとにひどくなり、ルイザは捕らえられ、拷問を受ける。ジュアンとクリストバルに救い出されたが、顔をひどくやられていた。
クリストバルは妻だけを出国させ、ハイチに残る。ジュアンの娘スザンナとクリストバルはルイザを献身的に看病し、何とか一命を取り留める。ルイザの申し出によってスザンナとクリストバルは結婚し、二人でルイザが死ぬまで面倒を見る。
ルイザは独裁政権による迫害の普遍の証人だった。
2001.11.11