Anna Seghersアンナ・ゼーガースの文学

Brot und Salz, 1958

パンと塩

新村浩訳 『新日本文学』11月号 1958

Vierzig Jahre der Margarete Wolf

マルガレーテ・ヴォルフの四十年

死んだ少女たちの遠足
「死んだ少女たちの遠足」上小沢敏博訳 朝日出版社 1964.10.15 p65~99
※マルガレーテ・ヴォルフの半生

「世界短編名作選 ドイツ編」
新村浩訳 「世界短編名作選 ドイツ編」新日本出版社 1977.8.30
「第七の十字架」で主人公ゲオルグを獄中で助け、心の支えとなったが、裏切りに会って追っ手につかまってしまったエルンスト・ヴァラウの妹、マルガレーテがこれまでの半生を自ら語った、という設定の物語。
夫グスターフと兄は親友で、共に戦った同志だった。屈強の闘士となる以前の若い頃のヴァラウの話も出てくる。興味深いのは、ヴァラウの息子たちの話である。父の死後ナチによって取り上げられ、兄のカールは施設に入れられ、弟のハンスの方はナチの家庭に育てられた。カールは何一つ変わらず、施設から逃亡し弟を頼ってくる。完全にナチ化してしまったと思われたハンスだが、ナチを正しいと信じていたことに疑念をもちはじめ、悩んだ末、兄の逃亡を助ける。カールはその後フランスを経てスペインの国際旅団に加わり、敗退後フランスに戻ったところで再びナチにつかまってしまう。終戦まで強制収容所を転々としていたが、見事生き延びるのである。弟の行方はわからないが、国防軍に入れられソ連戦に赴くが、ソ連抑留中に教育し直されて東ドイツに戻って来る。マルガレーテと
戦前戦後を生き抜いた女の話、となると日本だと古くさいドラマになりそうなところだが、反ナチの闘い貫いた甥や娘婿を誇らしく語るマルガレーテはそれとはまったく違うと感じた。が、ヴァラウやグスターフが「ソ連へ行くことを熱望していた」というあたりが、当時反ナチの闘士は共産党にしかいなかったので当然だが、どうもピンと来ない。
これがナチ時代の物語なら、今読んでも「そういうものだろう」と思えるのだろうが、日本でいうと昭和33年という時期に書かれた作品で、実際戦後の東ドイツに生きる女性の語る物語であるため、余計そう感じるのだろうか。
2001.11.4
Die Saboteure, 1946

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