最近読んだ本、見た映画・芝居、聞いたCD

スペイン文学

2015年10月31日

グルプ消息不明/エドゥアルド・メンドサ

グルプ消息不明グルプと「私」は宇宙人で、調査のために地球にやってきたが、二人は離ればなれになってしまう。上官である「私」はグルプを探しながらバルセロナの街を歩き、住み、住民たちと接触していく。オリンピック間近に控え、工事中が多い街を歩く。

彼は自由に姿を変えられるので、過去の歴史上の人物を参考にするのだが、こんな格好で街歩けないでしょうが...というような人物が次々出てくる。この本でも最初の方は肖像画が添えられていたりして、笑える。同じアパートに住むシングル・マザーに接触しようとして、あれこれ考え、最初は成功するものの、おいおいやり過ぎだー!とこれもまた笑ってしまう。かと思うと、バルの老夫婦とほろりとした人情物のような関係を結ぶが、見舞いに行くときにやはり「やらかして」しまう。ハラハラしたり、意外と楽しそうなことにほっとしたり、読者が「私」を見守ってしまうような小説だ。

ある種のタイプの人々にとって、「私」の行動が不思議でも何でもなく、この世界の方がおかしい、と思うこともあるのだろうなとも思う。この物語の期間が16日間という短い間のせいか、ストーリーに勢いを感じる。一気読みをお勧めする。

■原綴:Sin noticias de Gurb, Eduardo Mendoza ,1991
■書誌事項:エドゥアルド・メンドサ著,柳原孝敦訳 東宣出版 2015.7.10(はじめて出逢う世界のおはなし―スペイン編)ISBN978-4-88588-085-8

2012年9月 4日

無声映画のシーン/フリオ・リャマサーレス

無声映画のシーン/フリオ・リャマサーレス表紙の写真が素敵だ。ブレッソンの写真のようだと思ったら、本当にブレッソンだった。おそらく本の作者を知らなくても買ってしまいそうなほどカッコイイ。リャマサーレスは過去に2冊出ているが、「静寂な筆致」という言葉がぴったり合う作家だと思う。この表紙もそのイメージにぴったり合致する。

語り手が幼年期~青年期をすごした鉱山町での出来事が語られる。町のダンスパーティ、オーケストラがやってきた日、鉱山のストライキ、フランコが街の近くを通りかかった日、オートバイを乗り回していた青年の死、廃鉱にもぐりこんだ時...。

過去に撮影した写真にまつわる記憶を呼び起こして語っていく連作短編のスタイルをとっている。もし、本書で語られる30枚の写真をすべて載せてくれていたら、写真集になってしまうのではないかと思うほど、美しい写真だろう。一見エッセイ集に見えるが、著者の言うようにこれはフィクションなので、実在はしない写真。実在するのかもしれない。でも、それはどちらでも構わない。写真を実際に載せてしまうゼーバルトとの違いかなと思う。共通するのは、静かなその語り口だ。

記憶は時に――いや、たいていの場合――映画のシーンが四つか五つの瞬間に凝縮されているポスターと変わるところがない。そこに命を吹き込むことができるのは、時間という映写機のゆがんだ焦点だけである。

リャマサーレスの言葉に耳を傾けているうちに、自分の過去が甦ってくる。残念ながら、自分の幼い頃の写真にモノクロ写真はわずかなので、あまり思い起こせない。記憶というのはやはり雰囲気がないと甦らないものなのかもしれない。

今の子供たちは鮮明なデジタル画像でしか自分の写真が残らなくなってしまう。それでも、その写真がノスタルジックな記憶となるのかもしれないとも思う。15年ほど前のパソコン通信の通信音にノスタルジーを感じるかどうかは、その人次第なのだから。

原題:Escenas de Cine Mudo, Julio Llyamazares. 1994
著者:フリオ・リャマサーレス著,木村榮一訳
書誌事項:ヴィレッジブックス 2012.8.23 262p ISBN978-4-86491-005-7

創造力とは発酵熟成した記憶にほかならない。
(アントニオ・ロボ・アントゥネス ポルトガルの作家・精神科医)

黄色い雨狼たちの月(フリオ・リャマサーレス)

2011年10月 4日

仔羊の頭/フランシスコ・アヤラ

仔羊の頭/フランシスコ・アヤラ1940年代~50年代に書かれたが、1978年にようやく出版された本だそうだ。スペイン市民戦争は内戦であるという性質上、第二次大戦終結を戦後文学と呼ぶ他のヨーロッパの国々と異なるように見える。内戦終了後に暗黒時代が始まり、実に1975年まで続いているのだから、そもそも「戦後文学」なる言葉はスペインにはあてはめにくいのだろうなと感じた。

表題作「仔羊の頭」はモロッコ旅行中に血縁があると言い張る一家に出会ったことで、戦時中に叔父を見捨てたことがフラッシュバックしてしまう男の話。「帰還」「タホ川」はまさに"帰還文学"。戦後もすぐに表へ出て行けなかった微妙な立場の反体制側の市民の物語が「名誉のためなら命までも」。「言伝」だけがよくわからなかったが、訳者解説によると内戦前の物語で、その後の家族の中での分裂を矮小化したものだという。

著者本人が序文で述べているように、スペイン市民戦争は外国人の手で書かれることが多かったが、これは内側からの声である。ヒロイズムに浸っている「誰がために...」のような作品ではその真実はまるで伝わらない、とでも言いたいのだろうか(きっとそうだと思いたい)。

フランコ時代の陰惨な分裂がこの国にもたらした負の遺産をどう払拭するか、の方ばかり私は見てきた。ではどういう分裂だったのかを庶民のレベルで教えてもらえたことは意義があった。

内容的には興味のある本なのだが、この装丁のせいか手元においておきたいと思うほどではなかったので、めずらしく図書館を利用した。そうして良かったと思う。繰り返し読むほどでも、線を引いておきたいというほどでもない。スペイン現代史に通り一遍の知識しかないので、勉強にはなったが、楽しめたかと言われるとそうでもない、というのが率直な感想でした。

■書誌事項
著者:フランシスコ・アラヤ著,松本健二,丸田千花子訳
書誌事項:現代企画室 2011.3.31 270p ISBN978-4-7738-1010-3
原題:La cabeza del cordero: Fransisco Ayala, 1949,1962

■目次

言伝
タホ川
帰還
仔羊の頭
名誉のためなら命も

2011年3月 3日

ポータブル文学小史/エンリーケ・ビラ=マタス

ポータブル文学小史秘密結社シャンディと聞いてスターンの「トリストラム・シャンディ」をパっと思い浮かぶくらいのことは出来ても、この小説に出てくる登場人物や文学的な概念をすべて理解できるはずがない。でも私にもここに登場する文学史にまつわるイメージや語彙にドキドキすることが出来る。そんな「ポータブル文学小史」は「バートルビーと仲間たち」のエンリーケ・ビラ=マタスの翻訳だ。なんと言っても博覧強記という言葉がぴったりなビラ=マタスのこと、相当深い知識を持つ人しかわからないのではないだろうか?

私にわかるキーワードは、例えば、ジョージア・オキーフやポーラ・ネグリが自らを指して言う「宿命の女」(自分で自分のことを宿命の女と呼ぶパターンは見たことがない)や、プラハに行ったとたんに登場するオドラデク(カフカの「父の気がかり」)といったところ。「独身者の機械」もいい言葉だ。デュシャンの友人ミッシェル・カルージュの著書の名だったりする。

登場人物はおおむね同時代人なのだが、突然マリリン・モンローの名があがってきたり、どこからがフィクションでどこからがノンフィクションなのか、「バートルビー...」同様よくわからない。とりあえず全部フィクションと思っておいて読んでいき、後から本当のことを確認したいと思った。誰か解説書を出して欲しい(他力本願)。最後に出てくる書誌が本当っぽいので、きっと全部読み込めばわかるのだろうけれど、とても無理。

つまり、彼は非の打ち所のないシャンディだった。典型的な社交好きの教養人で、個々の特異性を蔑視することなく、国境を越えた国際的な文化を、両大戦間に生まれた美しい理想であった広々とした地平線と大いなる起源を持つ世界を求めていた。(p54)

なるほどね。デジタルグッズの世界では「ポータブル」という言葉はもはや使われなくなっているようだ。それは「携帯する」「持ち運べる」ことがあまりにも当たり前になってしまったからだろうか。「ポータブル」って良い意味での軽さが感じられて、かつ多少古めかしいところも好きだ。

サイン入り200部限定「特装版ポータブル文学小史」16,800円の豪華版が出るそうだけれど、これは本当に好事家向け。将来価値が出るかもしれない。

著者:エンリーケ・ビラ=マタス著,木村榮一訳
書誌事項:平凡社 2011.2.14 188p ISBN978-4-582-83445-1
原題:Historia abreviada de la literatura portátil, Enrique Vila-Matas, 1985


おまけ:シャンディ名鑑
理解を少しでも深めようと思い、巻末にあったシャンディ名鑑をデジタル化・横書き化してWikiにリンクを貼り、一通り読みました。再読するときはリンクをクリックしながら読めばいいかなと。

アサーニャ,マヌエル(Manuel Azaña)1880~1940年。スペインの政治家。
アポリネール,ギヨーム(Guillaume Apollinaire)1880~1918年。フランスの詩人。
アルトー,アントナン(Antonin Artaud)1896~1948年。フランスの詩人・演劇人。
アルプ,ハンス(Hans Arp)1887~1966年。アルザスの彫刻家・詩人。
アルフォンソ13世(Alfonso XIII) 1886~1931年。スペイン国王。
アルベルティ,ラファエル(Rafael Alberti)1902~99年。スペインの詩人。
アレンズパーグ,ウォルター(Walter Arensberg)1878~1954年。アメリカの美術品蒐集家。
アロンソ,ダマソ((Dámaso Alonso)1898~1990年。スペインの詩人。
アンタイル,ジョージ(George Antheil)1900~59年。アメリカの作曲家。
ヴァグナー,リヒャルト(Richard Wagner) 1811~83年。ドイツの作曲家。
ヴァルザー,ローベルト(Robert Walser)1878~1956年。スイスのドイツ語作家。
ヴァレーズ,エドガー(Edgar Varèse)1883~1965年。アメリカの作曲家。
ヴァレリー,ポール(Paul Valéry)1871~1945年。フランスの詩人・小説家・評論家。
ヴァンセット伯爵夫人(Condesa de Vansept) おそらく架空の人物。
ウィドブロ,ピセンテ(Vicente Huidobro)1893~1948年。チリの詩人。
ヴィルジリオ(Virgilio)おそらく架空の人物。
ウェルズ,H・G(H.G.Wells)1866~1946年。イギリスの小説家・批評家。
ヴェルテル(Werther)ゲーテ『若きヴェルテルの悩み』の主人公。
エヴァリング,ジェルメーヌ(Germaine Everling)生没年不詳。フランシス・ピカビアの重要なパートナーだった女性。
エジソン,トーマス(Thomas Edison)1847~1931年。アメリカの発明家。
エリオット,T・S(T.S. Eliot)1888~1965年。イギリスの詩人。
エルンスト,マックス(Max Ernst)1891~1976年。ドイツで生まれフランスで活躍した画家。
オキーフ,ジョージア(Georgia O'Keeffe)18871 1986年。アメリカの画家・彫刻家。
オレンゴ,カルラ(Carla Orengo)おそらく架空の人物。
カフカ,フランツ(Franz Kafka)1883~1924年。チェコのドイツ語作家。
ガルシーア・ロルカ,フェデリーコ(Federico García Lorca)1898~1936年。スペインの詩人。
カーロス・ウィリアムズ,ウィリアム(William Carlos Williams)1883~1963年。アメリカの詩人・小説家。
ギャツピィ(Gatzby)フィッツジェラルド『偉大なギャツビィ』の主人公。
キャネル,スキップ(Skip Canell)おそらく架空の人物。
クウィントゥス・ウァレリウス(Quintus Valerius)生没年不詳。紀元前239年にローマ帝国の執政官を務めた人物。
クライスト,ハインリッヒ・フォン(Heinrich von Kleist)1777~1811年。ドイツの劇作家。晩年,失意のうちに人妻とヴアンゼー湖畔でピストル自殺した。
クラウス,カール(Karl Kraus)1874~1936年。オーストリアの批評家・詩人・劇作家。
クラーク,エドワード(Edward Clark)1811~82年。ミシンの製造販売で有名なシンガー社の弁護士兼副社長。
グリス,フアン(Juan Gris)1887~1927年。スペインの画家。
クルプスカヤ,ナデジダ(Nadezhda Krupskaya)1869~1939年。ロシアの政治家。レーニンの妻。
クレー,パウル(Paul Klee)1879~1940年。スイスで生まれドイツで活躍した画家。
クローデル,ポール(Paul Claudel)1868~1955年。フランスの劇作家・詩人・外交官。元駐日大使。
クローリー,アレイスター(Aleister Crowley)1875~1947年。イギリスの神秘主義者・魔術師。
クロンベル夕,へルマン(Hermann Kromberg)おそらく架空の人物。
ゲーテ,ヨハン・ヴォルフガング・フォン(Johann Wolfgang von Geothe)1749~1832年。ドイツの作家・政治家。
コクトー,ジャン(Jean Cocteau)1889~1963年。フランスの詩人・芸術家。
ゴーディエ=ブジェスカ,アンリ(Henri Gaudier-Brzeska)1891~1915年 フランスの彫刻家。
コノリー,シリル(Cyril Connolly)1903~74年。イギリスの批評家。
コレット(Colette)1873~1954年。フランスの作家。
ゴンゴラ,ルイス・デ(Luis de Góngora)1561~1627年,スペインの詩人。
ゴンブローヴィッチ,ヴィトルド(Witold Gombrowicz)1904~69年。ポーランドの小説家・劇作家。
サヴィーニオ,アルベルト(Alberto Savinio)1891~1952年。イタリアの作家・画家。
サティ,エリック(Erik Satie)1866~1925年。ブランスの作曲家。
サンドラール,ブレーズ(Blaise Cendrars)1887~1961年。スイス出身のフランス語詩人・小説家。
サンドラール,ミリアム(Miriam Cendrars)プレーズ・サンドラールの娘。父の伝記を書いている。
ジェイムズ,へンリー(Henry James)1843~1916年。アメリカで生まれイギリスで活躍した作家。
シャガール,マルク(Marc Chagal)1887~1985年。ロシアで生まれフランスで活躍した画家。
ジャコメッティ,アルベルト(Alberto Giacometti)1901~66年。スイスで生まれフランスで活躍した彫刻家。
シャトーブリアン,フランソワ=ルネ・ド(rançois-René de Chateaubriand)1768~1848年。フランスの政治家・作家。
シュヴィッタース,クルト(Kurt Schwitters)1887~1948年。ドイツの芸術家。
シュトロハイム,エーリッヒ・フォン(Erich Von Stroheim)1885~1957年。アメリカの映画監督。
シュルツ,ブルーノ(Bruno Schulz)1892~1942年。ポーランドの作家・画家。
ジョイス,ジェイムズ(James Joyce)1882~1941年。アイルランドの小説家。
ショーベンハウアー,アルトゥル(Arthur Schopenhauer)1788~1860年。ドイツの哲学者。
ショーレム,ゲラシム(Gershom Scholem)18971982年。イスラエルの宗教史学者。
ジョンソン,ロパート(Robert Johnson)1911~38年。アメリカのブルースマンと同一人物かどうかは不明。
ズヴェーヴォ,イターロ(Italo Svevo)1861~1928年。イタリアの作家。
スターン,ロレンス(Laurence Sterne)1713~68年。イギリスの作家・牧師。
スレダ,ヤコボ(Jacobo Sureda)1901~35年。スペインの画家・詩人。
ゼニット,ステファン(Stephan Zenith)おそらく架空の人物。
セリーヌ,ルイ=フェルディナン(Louis-Ferdinand Céline)1894~1961年。フランスの作家。
セルナ,ラモン・ゴメス・デ・ラ((Ramón Gómez de la Serna)1888~1963年。スペインの作家。
セルヌーダ,ルイス(Luis Cernuda)1902~63年。スペインの詩人。
タイフォン,アンソニー(Anthony Typhon)おそらく架空の人物。
ダリ,サルパドール(Salvador Dalí)1904~89年。スペインの画家。
チャパス,フアン(Juan Chabás) 1910~54年。スペインの詩人。
ツァラ,トリスタン(Tristan Tzara)1896~1963年。フランスの詩人・ダダイズムの祖。
テイゲ,カレル(Karel Teige)1900~51年。チェコの芸術家・批評家。
ティラナ,エルサ(Elsa Tirana)本文中ではクレオ・メロードのペンネームとされているが,そのような事実はないと思われる→メロード,クレオ・ド
デュシャン,マルセル(Marcel Duchamp,)1887~1968年。フランスの画家。
デ・ラ・メア,ウォルター(Walter De La Mare)1873~1956年。イギリスの詩人・小説家。
ドーマル,ルネ(René Daumal)1908~44年。フランスの詩人・小説家・哲学者。
ドラキュラ伯爵(Drachula)いわずと知れた人物。
ナポレオン・ボナパルト(Napoléon Bonaparte)1769~1821年。フランスの軍人・第一帝政の皇帝。
ニーチェ,フリードリッヒ(Friedrich Nietzsche)1844~1900年。ドイツの哲学者。
ネグリ,ポーラ(Pola Negri)1894~1987年。無声映画時代に活躍したポーランド出身の女優。
ネズヴァル,ヴィーチェスラフ(Vitězslav Nezval)1900~58年。チェコの詩人。
パウンド,エズラ(Ezra Pound)1885~1972年。アメリカの詩人・批評家。
パートルビー(Bartlebe)メルヴィルの小説の登場人物。ある日突然筆を折ってしまう作家について用いられることがある。ピラ=マタス『パートルピーと仲間たち』参照。
バリェッホ,セサル(César Vallejo)1892~1938年。ベルーの詩人。
ピエドマ,ハイメ・ヒル・デ(Jaime Gil de Biedma)1929~90年。スペインの詩人・エッセイスト。
ピカピア,フランシス(Francis Picabia)1879~1953年。フランスの詩人・画家。
ビーチ,シルヴィア(Sylvia Beach)1887~1962年。アメリカで生まれフランスで活躍した書店主。
ピム,アーサー・ゴードン(Arthur Gordon Pym)ポーの小説の主人公。
フィッツジェラルド,スコット(Scott Fitzgerald)1896~1940年。アメリカの小説家。
フェルメール,ヨハネス(Johannes Vermeer)1632~75年。オランダの画家。
フェレンツ,サライ(Szalay Ferenc)フェレンツもサライもハンガリーによくある氏名だが,おそらく架空の人物。
プッチーニ,ジャコモ(Giacomo Puccini)1858~1924年。イタリアの作曲家。
プラードス,エミリオ(Emilio Prado)1899~1962年。スペインの詩人。
プラトン(Platon)前227~前347年。古代ギリシャの哲学者。
プランショ,モーリス(Maurice Blancho)1907~2003年。フランスの作家・批評家。
ブルースト,マルセル(Marcel Proust)1871~1922年。フランスの小説家。
ブルトン,アンドレ(André Breton)1896~1966年。フランスの詩人・シュルレアリスムの領袖。
プロッホ,ヘルマン(Hermann Broch)1886~1951年。オーストリアの作家。
ベーカー,ジョセフィン(Josephine Baker)1906~75年。アメリカで生まれフランスで活躍したダンサー・歌手。
ベソア,フェルナンド(Fernando Pessoa)1888~1935年。ポルトガルの詩人。
ベールイ,アンドレイ(Andrei Belyi)1880~1934年。ロシア=ソ連の詩人・小説家。
ベルガミン,ホセ(José Bergamín)1895~1983年。スペインの詩人。
ベルナット夫人(Pernath)おそらく架空の人物。
ベンヤミン,ヴァルター(Walter Benjamin)1892~1940年。ドイツの思想家。
ボカンヘル,ガブリエル(Gabriel Bocángel)1603~58年。スペインの詩人・劇作家。
ボカード,ベルタ(Berra Bocado)おそらく架空の人物。
ボードレール,シャルル(Charles Baudelaire)1811~67年。フランスの詩人。
ホラン,ウラジーミル(Vladimir Holan)1905~80年。チェコの詩人。
ポルヘス,ホルへ・ルイス(Jorge Luis Borges)1899~1986年。アルゼンチンの小説家・詩人。
マイリンク,グスタフ(Gustav Meyrink)1868~1932年。オーストリアの小説家。
マリネッティ,フィリッポ・トンマーゾ(Filippo Tommaso Marinetti)1876~1944年。イタリアの詩人・未来派の創始者。
マルー,リタ(Rita Malú)おそらく架空の人物。
マン,トーマス(Thomas Mann)1875~1955年。ドイツの小説家。
マンデリシュターム,オーシップ(Osip Mandelshtam)1891~1938年。ロシア=ソ連の詩人。
マン・レイ(Man Ray)1890~1976年。アメリカの写真家・画家・彫刻家。
ミショー,アンリ()1899~1984年。ベルギーの詩人・画家。
ムディヴァニ王子(Serge Mdivani)1903~36年。グルジアで生まれ。パリの社交界でグルジアの王子を自称していた。
メルシーナ〔メリュジーヌ〕(Melusine)フランスの民間伝承上の蛇女。ゲーテ『ヴィルヘルム・マイスター』に登場する絶世の美女。
メロード,クレオ・ド(Cléo de Mérode)1875~1966年。オーストリア出身のバレリーナ。
モーラン,ポール(Paul Morand)1888~1976年。フランスの小説家。
モンロー,マリリン(Marilyn Monroe)1926~62年。アメリカの映画女優。
ラカン,ジャック(Jacques Lacan)1901~81年。フランスの精神分析学者。
ラルボー,ヴァレリー(Valery Larbaud)1881~1957年。フランスの小説家・批評家。
ランボー,アルチュール(Arthur Rimbaud)1854~91年。フランスの詩人。
リウィウス(Livius)前59~後17年。ローマの歴史家。
リゴー,ジャック(Jacques Rigaut)1899~1929年。フランスのダダイスト。
リトパルスキー,ヴェルナー(Werner Litbarski)おそらく架空の人物。
ルーセル,レーモン(Raymond Roussel)1877~1933年。フランスの作家。
ルルス,ライムンドゥス(Raimundus Lullus)1235~1316年。カタルーニャの神秘的哲学者。
レジナ,マヌエル(Manuel Regina)おそらく架空の人物。
レーニン,ウラジーミル・イリイチ・ウリヤノフ(Vladimir Il'itch Lenin)1870~1924年。ロシアの革命家・政治学者。
レルガルシュ(Lelgoualch)ルーセル『アフリカの印象』の登場人物。
ローズ・セラヴィ(Rose Sélavy)マルセル・デュシャンの創作した人物。

2010年8月15日

螺旋 サンティアーゴ・パハーレス

螺旋 サンティアーゴ・パハーレス木村榮一先生の翻訳したものならつまらないはずはないと思い刊行直後に購入したのだが、少し軽めだという書評を見て、良い意味でそれならもったいないから夏のバカンスで読もうと思って積んでおいた作品。

本格ミステリにはほど遠く、文芸作品でもないが、エンターテイメント性の高い良い小説だと思う。版元としては実際微妙だったのかもしれない。だからミステリふうな帯になるのだろう。二転三転というほどのストーリーではないので、あまり誠実な帯文句とは言えないが、売るためには多少仕方あるまい。

話はやはりネタバレしない方が良いのだろうなと思いつつ、トマス・マウドという作家を探す編集者ダビッドのストーリーとマドリーの麻薬中毒患者フランの脱麻薬ストーリーの二本立てで出来ている。結構早い段階でトマス・マウドが誰かわかった。が、結論からいうとそれは正解ではなかったのだが、完全な間違いでもなかった。

最初は秘書エルサのお話と3本立てかと思ったが、エルサの話がフランの物語に吸収されていくので、結局は2本立てになる。私にはダビッドのスラップスティックというより単に間抜けな探偵物語より、フランの脱麻薬の話の方が緊張感があって、いつまた注射してしまうんだろうとハラハラしながら読んだのでよほどおもしろかった。フランの友人のレケーナのITの下っ端で酷使されまくりの話も身近な話だった。少し前に書かれた小説だから若干古い部分はあるが、こんなふうに軽く扱われてしまう若い人は今でもいるのだろう。スペイン人も夜中まで働くんだなぁと妙に感心する。

ダビッドの方は生活を変えるチャンスはあったのにあえてそうせず、レケーナはどうしても生活を変えたくて思い切った行動をし、いずれも求めていたものは得られそうなので、それそれでよかったが、今ひとつ納得いかない点もある。それから、フランがエルサの鞄を奪った件はマルタにちゃんと話したのかどうか、エルサに謝ったのかどうか、書いてなかったような気がする。

ヴィレッジブックスはこれまでも木村先生の訳で現代スペイン文学の「黄色い雨」「狼たちの月」を出版しているが、リャマサーレスの格調高さに比べると、雰囲気はまるで違う。けれど、魅力的な若い作家が出てきているのはよくわかった。パハーレスはポール・オースターが好きというくらいだから、過去のスペイン文学とは違う傾向をもっている。2作目3作目は木村先生の弟子の人とかに訳してもらい、木村先生ご自身はどんどん新しい作家を見つけてください。

■著者:サンティアーゴ・パハーレス著,木村榮一訳
■書誌事項:ヴィレッジブックス 2010.2.27 ISBN4-86332-223-2/ISBN978-4-86332-223-3
■原題:El paso de la hélice, 2004: Santiago Pajares

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