文学会議/セサル・アイラ
マッド・サイエンティストで作家でもある主人公が世界征服のため、実在の作家であるカルロ・フエンテスのクローンを作ろうとするお話。"信頼できない語り手"だった「わたしの物語」のときと同様に物語の途中で意表をつかれたが、今回はむしろ、文学的な文法をあえて「落っことしている」ような意図に見える。
しかし、怪獣映画のようなので、特撮で映像化して欲しいけど、話が途中で飛んでしまうので、そこのおもしろさは失われてしまうのだけど。巨大な青い芋虫は見たくない。でも「マクートの糸」は見たい。何度も読み直してイメージするのだけど、正解かどうか自信がない。
収録作品の「試練」も素晴らしい。二人のパンク少女と出会った平凡な少女の物語。頭の中をcureの曲が走り回る。痺れるような傑作。前半のスタティックな会話部分にヒリヒリするような痛みを感じ、後半のダイナミックなアクションシーンに無我夢中になる。なんという疾走感。原題"La Prueba"は「試練」と翻訳されている。「試験」や「テスト」よりちょっと重みが感じられる。「試練を越えた愛」なのか「愛を試す」のか。
映画化されていると聞いて調べたら、「ある日、突然」というタイトルで内容は随分変わっているらしい。これはこれで見たいが、この原作通りの襲撃シーンが映像になっていたら、もっと良かったのに。絶対に見たかった。原作のラスト10分だけで1時間くらいの映像になるだろう。
■書誌事項:新潮社 2015.10.30 190p ISBN978-4-10-590121-9(新潮社クレストブックス)
■原題:El congreso de Literatura,1997 / La Prueba, 1992, César Aira