少女ソフィアの夏/トーベ・ヤンソン
1972年に刊行された、トーベ・ヤンソンの小説。6歳の少女とその父親、さらにその母親である年老いた祖母の3人がフィンランド湾に浮かぶ島で暮らす様子を描いた作品。モデルは祖母がトーベの母ハム、パパはトーベの弟のラルス、ソフィアはラルスの娘のソフィアである。トーベ自身はこのモデルについては言説を変えたりもするが、ほぼ間違いないように思う。トーベにとって、島の森や入り江での日々はよく見知ったものだ。
ここでは、主に祖母と少女の関係が描かれているが、二人はまったく対等にやりとりする。迷信や神様のことを考えたり、ソフィアが毎日いろいろなことを試みる。ガールスカウトよろしくテントで寝てみたり、立ち入り禁止の島に上陸してみたり、様々に素晴らしい体験をする、そんな夏のお話。原題は「夏の本」だ。
猫を飼ってみて、思い通りにならないことにいらだちながら、ソフィアは「愛」について考えてみる。
「愛って、変なものね...」と、ソフィアは言った。
「だれかがだれかを愛すれば愛するほど、相手は、ますます知らんぷりするのね。」
「そのとおり」おばあさんがうなずいた。「それで?そういうときには、どうしたらいいんだろうねえ?」
「愛しつづけるだけよ」ソフィアが、いどむように言った。「もっともっと愛し続けるの。」
島に球根を植えたのに雨が降らないとき、別の島へ水を取りに奮闘した後、おばあさんは考える。
神さまは助けてはくださるんだけど、人間が、自分がちょこっとがんばってからなんだよね...とおばあさんは思っていた。
春から夏の間だけ過ごす4ヶ月だけの生活だけれど、なんと豊かな生活なんだろうと、しみじみ思う。パパはあまり発言しない。でも、たくましくこの家を支えている。実務能力が高いというか、サバイバル能力が高い。そうでなければ、島で暮らすなんて出来ない。
ところでフィンランドの夏至祭りはたいまつが有名だが、海に木箱が浮かぶのだろうか?今はカラフルなろうそくが浮かぶようだが、その名残なのかもしれない。
■原綴:Sommarboken by Tove Jansson, 2007
■書誌事項:トーベ・ヤンソン著,渡部翠訳 講談社 1993.11.15 302p ISBN978-4-06-206691-4