ぼくはスピーチをするために来たのではありません/ガブリエル・ガルシア=マルケス
バルガス=リョサの講演を生で聴いたことがある。うまいのはもちろんのこと、この人はきっと人前で話すのが好きなんだろうなと感じた。そうでなければ、政治家になろうなんて思わないだろう。ガルシア=マルケスはスピーチが苦手だったそうで、生涯でスピーチを行ったのは22回だけ。高校時代の「卒業生を送るスピーチ」まで収録しているのだから、本当なんだろう。
それぞれ演説の背景も添えられているので、ガルシア=マルケスにまつわるラテンアメリカのその時その時の社会状況などもわかるようになっている。
1982年のノーベル文学賞授賞式でのスピーチ「ラテンアメリカの孤独」は必読。ラテンアメリカの驚異的な現状とヨーロッパやアメリカから孤立している状況を訴える。ラテンアメリカの文学が受け入れられたのだから、ラテンアメリカの社会改革もあなたたちは受け入れるべきだと突きつけていて、心震える。
■原題:Yo no vengo a decir un discurso : Gabriel García Márquez
■書誌事項:新潮社 2014.4.25 208p ISBN978-4-10-509019-7