謎ときガルシア=マルケス/木村榮一
今年の4月にガルシア=マルケスが亡くなって、直後の5月に出た本だから、おお早いな、もう追悼特集か、と思ったら、そうではなく、もっとずっと以前から進められていた本だった。ガルシア=マルケス翻訳の第一人者の著書。でも新書っぽいざっくりした概要ではなく、ポイントポイントでその背景や人となりをしっかり書いている。
この本の分量でコロンブスによる新大陸発見以後のラテンアメリカの歴史から入っているとは驚いた。生育歴、ジャーナリストとしての活動、フォークナーやカフカからの影響、その他ガボにまつわるたくさんのエピソードは、私たちがこれまで聞かされたものだ。でも一番よくわからないカストロとの関係はさらりと触れたのみ。でも「この人どうしようもなく「権力」ってものに惹かれるんだよね...しょうがないね」という声が聞こえてくるようだ。
教科書的ではないので読み物としても楽しめるし、ガルシア=マルケス入門としてももちろん最適だと思う。
■書誌事項:新潮社 2014.5.25(新潮選書) 250p ISBN978-4-10-603747-4