Oriental Jazz Mode/orange pekoe
待ちに待ったorange pekoeの新作アルバム。どのくらい待ったかは、後でたっぷり恨み言を書くとして、まずは目の前のアルバムのことを。トータルで言うと、たいへんクオリティの高いアルバムで、これまでのオレペコのアルバムの中でも一、二を争うと言える。一つのバンドを10年以上追いかけて、進化してると実感できるというのは、なかなか経験出来ることではない。ベースとなる歌とギターがそう感じさせるのだから、これは目新しい楽器が入ったからというような表層的な問題ではない。アレンジ一つ一つ、音の一つ一つ。とても繊細に考え抜かれたものだと感じる。
"オリエンタル"だなと感じるのは特に「A Seed Of Love」「Desert Dance」「燈台」あたり。及川恵子さんのバイオリンを聴くことができるからか。これらは"オリエンタル・ジャズとはこういうものか"とうならせる曲たちで、アルバムのコンセプトを代表するのはこれらの曲なのだろう。タブラーやダラブッカの入っている「風の記憶(HOME)」「シリウスの犬」「FLOWER」あたりもオリエンタルな香りがふんわりと漂っている。
好みで言うと、落ち着いたバラードの「風の記憶(HOME)」「月の小舟」「A New Song」が好き。「Foggy Star」は何度もライブで聴いているが、もっと派手な曲の印象で、こういうアレンジで来たか!というのはちょっと意外。でもベースラインがとても良い。ボサノバもいいけど、ジャズもいいけど、オリエンタルもいいなと。とんでもなく贅沢な気分に浸れるアルバムだと感じた。
さて、このアルバムまでリスナーは4年待った。下記をご覧いただくとおわかりだと思うが、これまでは1~2年に1枚は出していたのだ。確かに。
2002.5:Organic Plastic Music
2003.7:Modern Lights
2004.7:Poetic Ore
2005.11:Grace
2007.11:Wild Flowers
2009.7:CRYSTALISMO
「Tribute To Elis Regina」を2012年12月に出しているが、オリジナルは4年ぶり。どう考えても間隔があき過ぎだ。バンドの活動としてはライブを多くこなしていたので、あまり感じないという面もあったが、やはりライブよりアルバムだろうと私は思っていた。実際、2011年秋のライブではすでに「そろそろニューアルバムを出したい」と言っていたし、2013年の春のビルボード東京では「Foggy Star」「燈台」「シリウスの犬」「Gipsy Soul」を演ってくれて(そう言えば「Gipsy Soul」はどこへ?)、「今年中にはアルバムを出したい」と言っていたのだ。アルバムの骨格はこの時すでに出来ていた筈。そこからどうして1年半もかかったのだろうか。
新星堂のインタビューでは4年かかった理由を「納得のいく形になるまでに時間がかかってしまた」「今思うこと、伝えたいことをオリジナル作品として仕上げてていくことは簡単ではなかった」と言っている。その通りなんだろうと思う。
だからここからは単なる私の推測だ。このインターバルはむしろビジネス的な要因があったのではないだろうか。
orange pekoeはデビューしたレコード会社、ビクターを2010年に辞めている。これが自発的なものなのか、契約解除なのかまではもちろん知らない。2012年に出した「エリス・トリビュート」はインディーズからの発売だった。今時メジャーとインディーズにどれだけの違いがあるのか、どうせCDは売れていないのだし、と思う人もいるかもしれない。地方にCDが行かないくらいじゃないの?iTunes Storeであるし、と。確かに、ライブだけ見ていると箱の大きさなど、あまり変わらないように感じることもある。CDの流通面もあるが、メジャーとインディーズでは宣伝費がまったく違う。テレビ番組とのコラボなどインディーズではほぼ絶望だ。だから、メジャーでやってきて、あえてインディーズに行くのは理由があると思って良い。もちろんそういうアーティストもいる。ネット配信を嫌うメジャーから離脱する人が目立った時期もあった。けれど、オレペコがあえてインディーズを選ぶ理由はないと思った。もしかしてこの音楽業界の不況の中で、メジャーとの契約が進んでないのかも、と不安になっていた。
また、ひょっとしたら、トモジは嬉々としてソロ活動を始めた一馬くんに対する不安もあったのではないだろうか。トモジも"ソロを出す"とこれもずいぶん前からライブで言っている。もちろんとても期待してるのだけど、一馬くんに比べるとorange pekoeの顔はやはりトモジなんだろうなと思うから、このバンド続けていけるのだろうか、大丈夫なのかと私が不安に思った時期もあった。実際、このアルバムの発売が決定した後、トモジがブログで「一時期はorange pekoeというユニットを続けるかどうか本気で悩んだりした」と書いていたことは、とても納得したのだ。もちろんその直接的な原因はわからないのだが。
結局、私の不安は杞憂に終わり、メジャーのキングレコードからこのアルバムを出せることを知った時は本当に安堵した。このアルバム、ショップによって特典を替えるなど、とても工夫した売り方をしている(おかげでamazonの予約をキャンセルして、TOWER RECORDに予約を切り替えた。私が選んだのはビッグバンド)。NHK教育ではあるが、テレビ番組での使用も決まった。(「マリー・ゴールド」は"ノイタミナ"で私は大喜びだったんだけどな...)、ラジオ出演も続けている。頑張ってるなと思う。
「来年あたりにはorange pekoe Big Bandのアルバムリリースもできたらいいなあと思います。」とか一馬くんが言ってますが、その前にトモジのソロをお願いします。
とにかく売れて欲しい。ネットでもリアルでも一生懸命布教活動してます。1枚でも多くのCDが売れますように。そしてずっとこのユニットが続いていきますように。
1.A Seed Of Love(NHK やさいの時間エンディングテーマ曲)
2.月の小舟
3.風の記憶(HOME)
4.Foggy Star
5.Desert Dance
6.シリウスの犬
7.燈台
8.FLOWER(THE BODY SHOPコラボレーションソング)
9.A New Song
10.Outro~ A Seed Of Love
2013.10.23
King Record KICJ-657