トリステッサ/ジャック・ケルアック
ケルアックの作品はちまちま読んでいたらいけない。一気に読まなければ。幸いこの本はあまり長くないので、集中すればすぐ読み終わる。あまり考えずに、リズムを楽しまなくてはならない、そう思っている。
ケルアックがメキシコ・シティで出会ったジャンキーな娼婦を聖女のように扱い、ロマンチックにプラトニックにあがめているが「愛している」の一言も言えない。自分の都合で帰国して、なかなか戻って来られないでいて、1年後にもうボロボロになったトリステッサに再会する、というお話。
実際にはプラトニックでも何でもなく、その辺は比較的最初の方に「自分の性欲の深さを云々」という記述がある。何の約束もしてやらない。何の言葉もあげない。ケルアックはどの土地でもいつでも身勝手な男で、同じ女として見ればそこに腹が立つもののが、人として見たら、その自由勝手さが好きだったりするのだ。
意外と印象的なのがこのトリステッサの部屋の乱雑さだ。土間なのか、ベッドの周囲、あるいは上に犬猫ならまだしも、鶏がうろうろしていたりする。ブニュエルの映画「忘れられた人々」に登場したメキシコの貧しい家の様子の影響を受けているのではないかと、解説で指摘されている。
自分はビートジェネレーションの他の作家を読まないのであまり「ビート」として好んでいるわけではないが、無視しているのでもない。ただ、彼の放浪の話を聞きたいだけだ。「どうしてそんなバカなことを?」「でもなんておもしろい」と。
まだ全部調査したわけではないが、ケルアックの作品をできれば再度執筆順に読み直したいと考えている。実際に体験した時期の順でもおもしろいだろうとは思う。
■書誌事項
著者:ジャック・ケルアック著,青山南訳
書誌事項:河出書房新社 2013.8.30 176p ISBN978-4-309-20628-8
原題:Tristessa, 1960 : Jack Kerouac
■目次
第1部 震えつつ、けがれずに
第2部 一年後......
解説(青山南)
作品邦題 | 原題 | 執筆年 | 出版年 | 対象時期 |
海は我が兄弟 | The Sea is My Brother | 1942 | 2011 | |
Orpheus Emerged | 1944~45 | 2002 | ||
そしてカバたちはタンクで茹で死に(バロウズとの共著) | And the Hippos Were Boiled in Their Tank | 1945 | 2008 | |
町と都会 | The Town and the City | 1947~48 | 1950 | 1935~46 |
路上 | On the Road | 1948~51 | 1957 | 1946~51 |
ピック | Pic | 1951~69 | 1971 | |
ジェラルドの幻想 | Visions of Gerard | 1951~52 | 1963 | 1922~26 |
コーディの幻想 | Visions of Cody | 1952 | 1959 | 1946~52 |
ドクター・サックス | Doctor Sax | 1952 | 1959 | 1930~36 |
夢の本 | Book of Dreams | 1952~60 | 1960 | 1952~60 |
地下街の人びと | The Subterraneans | 1953 | 1958 | 1953 |
マギー・キャシディ | Maggie Cassidy | 1953 | 1959 | 1938~39 |
ダーマ書 | Some of the Dharma | 1954 | ||
トリステッサ | Tristessa | 1955 | 1960 | 1955~56 |
メキシコ・シティ・ブルース(poetry) | Mexico City Blues | 1955 | 1959 | |
黄金永劫の書(poetry) | The Script of the Golden Eternity | 1956 | 1960 | |
オールド・エンジェル・ミッドナイトOld Angel Midnight | 1956~59 | 1973 | | |
荒涼天使たち | Desolation Angels | 1956~61 | 1965 | 1956~57 |
達磨行者たち/禅ヒッピー/ジェフィ・ライダー物語 | The Dharma Bums | 1957? | 1958 | 1955~56 |
孤独な旅人 | Lonesome Traveller,short story collection | 1960 | ||
ランボー | Rimbaud | 1960 | ||
ビッグ・サーの夏 | Big Sur | 1961 | 1962 | 1960 |
パリの悟り | Satori in Paris | 1965 | 1966 | 1965 |
ドゥルーズの虚栄 | Vanity of Duluoz | 1966~68 | 1968 | 1939~46 |
(確定情報ではありません。調査中)。