最近読んだ本、見た映画・芝居、聞いたCD

2013年9月

2013年9月30日

盆栽/木々の私生活 アレハンドロ・サンブラ

盆栽/木々の私生活チリの現代作家、アレハンドロ・サンブラの中篇2本を合わせたもの。松本健二先生のブログで時折触れられていたら、刊行されることになったようだ。訳者の言う通り、本当にくどくない。さっぱりしている。私は1980年代後半~1990年代のアメリカのミニマリズムの淡々としたところにうんざりして、ラテンアメリカ文学のくどさに走ったので、少々戸惑うが、これが今のトレンドなのだろう。

中篇2作だが、2本とも最初に結論を見せている。明確にとぼんやりとの違いはあるものの、仕掛けとしてはそうなっている。「盆栽」では冒頭の一文で"最後に彼女は死に、彼はひとり残される"とエミリアの死が明示されているし、「木々の私生活」でも割合早い段階で"ベロニカが絵画教室から戻っていないので、また新しい一日が始まるかも定かではない。彼女が戻るとき、この小説は終わる。"と、ベロニカが帰って来ないであろうことが暗示されている。両作品とも二人の主人公の男性は女性に取り残されてしまうのだ。

しかし、「木々の私生活」の方のフリアンは少し違って、ベロニカの娘が残されるのだ。いや、本当のところはわからない。なぜなら、いきなり話は飛んで、大人になったダニエラがフリアンのことを回想する話になるからだ。これがフリアンの想像なのか、実際にダニエラが動いているのかわからないし、フリアンがこの時点で生きているかどうかさえわからない。

そんなあいまいな物語の骨格をもっているが、文体はとても端的で短く、淡々と進んでいく。両作品とも「盆栽」が登場する。「盆栽」のようなミニマムなものを世話することで、何かを取り戻そうとする男二人の物語とも言えるかもしれない。

両作品とも文学への言及がおもしろい。特に「盆栽」でプルーストを読んだと二人とも嘘をつき、後に実際に読む際には、"それはみんなが感動したところだから"と有名なエピソードは飛ばしているところなどはとてもありがちだ。そして"今度こそプルーストを本当に読んでいる気がする"と言ってしまうあたりが、もう笑ってよいものやら何やら。

また、「木々の私生活」で一度訪ねたアパートの母子が気になり、空き部屋になったその部屋に住めば、またあの二人に会えるかもと考えた主人公が広すぎるのにそのアパートと契約してしまうあたり。友人に"ポール・オースターの小説の読み過ぎ"と突っ込まれて、二度とオースターが読めなくなってしまったというエピソード。これもまた笑えてしまう。ついせんだって自分も人の話に「それはポール・オースターでは?」と言ってしまったばかりだったから。

川端康成「美しさと哀しみと」がオマージュされている。カタカナで「オトコ」って書かれてるから、最初何のことかわからなかった。ガルシア=マルケスも「わが悲しき娼婦たちの思い出」で「眠れる美女」をモチーフにしてたし、ラテンアメリカの人は川端康成好きだな。日本的な繊細さがいいのかな。

軍政時代の記憶が薄れた現代のチリ人がどんな風に生きているのか、参考にはなる。


■書誌事項
著者:アレハンドロ・サンブラ著,松本健二訳
書誌事項:白水社(エクス・リブリス) 2013.9.5 236p ISBN978-4-560-09029-9
原題:Bonsái / La Vida Privada De Lol Árboles, Alejandro Zambra


■目次
盆栽
I 塊
II タンタリア
III 貸したもの
IV 残ったもの
V 二枚の絵

木々の私生活
I 温室
II 冬

訳者あとがき

白水社「盆栽/木々の私生活」

2013年9月16日

orange pekoe duo Live at Billboard Live TOKYO 2013

Billboard Live Tokyo この日、台風18号が愛知県に上陸し、京都あたりが大雨で、関東地方も深夜から朝まで強い風と雨に見舞われました。3連休の最終日でしたが、この3連休に予定されていた関東近辺の屋外イベントなどは中止されています。午後になると風は強いままでしたが、雨はあがりました。ライブ出来るのかどうか不安でしたが、無事開催することが出来てよかった。そして誰よりそう思っていたのがorange pekoeの二人でしょう。

この日のライブはduo。二人きりです。新しいアルバム「Oriental Jazz Mode」が完成しているので、そこからの曲が多いのかと思っていたら、そうでもなく3曲だけ。しかも完全に初めて聴いたのは「月の小舟」だけでした。「Foggy Star」はこのところライブ定番だし、「FLOWER」はBODY SHOPのジャーニーキット・サンプルCDでフルに聴けたし。割合定番のorange pekoe Liveでした。オープニングの「にわか雨」は台風がきていて天気がひどかったので、"雨にまつわる曲を"と思ったのでしょう。2ndでは「グレイスフル・レイン(from Grace)」がオープニングだったそうなので間違いないです。"にわか雨どころじゃないね"とはMCにて。

duoライブなので、じっくり聴けました。もちろんバンドやビッグ・バンドの方が楽しいのですが、duoライブ、それもワンマンでないと出来ないこともありますね。YuragiとSeleneとか、なんて組み合わせなんだろうと思いました。トモジはもちろんうまいし熱唱してくれますが、私が好きな理由は、決してそういうことではないように思います。特にこういうところで聴くと、こちらの気持ちに入ってくる染み入り方が一番大きいなと感じます。この歌を生で聴いている、そのことに本当に感動するし、感謝したくなる、そんな気持ちでいっぱいになります。

トモジのソロは来年だそうです。今年中ではなかったのかと。楽しみにしていますが。

さて、毎年恒例、年末の総勢18名のビッグバンド・ライブが12月14日に決定。Paris Matchのxmas Concertと重なってる...。どうしようか。って先にチケット取っちゃってるしな...。


セットリスト
1. にわか雨 (poetic ore)
2. Happy Valley (Orange Plastic Music)
3. Yuragi (Crystalismo)
4. 月の小舟 (Oriental Jazz Mode)
5. Corrida de Jangada (Tribute to Elis Regina)
6. 輪舞 (poetic ore)
7. My Native Land (Dialogues 藤本一馬ソロ)
8. Selene
9. Foggy Star (Oriental Jazz Mode)
10.やわらかな夜 (Orange Plastic Music)
---encore---
11. FLOWER (Oriental Jazz Mode)
12. Love Life (Orange Plastic Music)

場所:Billboard Live TOKYO(東京都港区赤坂9丁目7番4号 東京ミッドタウン ガーデンテラス4F)
日時:2013年9月16日(月・祝日) 1st stage:15:30開場 16:30開演/2nd stage:18:30開場 19:30開演(入れ替え制)
料金:サービスエリア6,900円/カジュアルシート4,900円

2013年9月15日

オン・ザ・ロード

オン・ザ・ロードジャック・ケルアックの「オン・ザ・ロード」を初めて読んだのは20代前半だった。この装丁の文庫本の頃だ。その後もずっとケルアックの作品だけは読み続けている。バロウズやギンズバーグは代表的な作品だけしか読んでいないから、ビートに夢中というほど読んでいないが、ケルアックは好きだった。

その「オン・ザ・ロード」をウォーター・サレスが撮ったと聞いたとき、よく映画化出来たなとも思ったし、ウォーター・サレスだから出来たんだろうなとも思った。「モーターサイクルダイアリーズ」もロードショーで行ったし、それ以前に「チェ・ゲバラ モーターサイクル南米旅行日記」を読んでいた。ロード・ムービー好きとしては、これは映画館に観に行かなくてはと思った。

当時の旅の風景が見られればいいくらいの気持ちで行ったが、その点については満足した。1950年代のアメリカの風景を現在のアメリカだけで撮影するのはやはり無理なのか、メキシコやカナダはともかくアルゼンチンやチリにまで撮影に行ったようだ。それとも「モーターサイクル・ダイアリーズ」で使ったところがよかったのかもしれない。

自分でも意外だったのが、ケルアックやニール・キャサディのイメージが頭の中で結構出来上がっていたこと。特にニール・キャサディはもっとワイルドでガタイがいい筈だ、と思って違和感が強かった。もっとすごい勢いで喋っていたし、放射する熱がすごいのだと思っていたから。考えてみたら、そもそも私がケルアックに向かったのは、ヒッピー・カルチャーから遡ってのことだから、ニール・キャサディのことはケン・キージーとメリー・プランクターズの珍道中を描いたトム・ウルフの「クール・クールLSD交感テスト」から入ることになる。もう少し年齢を重ねたニール・キャサディだが、本当に恐ろしいような運転をする、ひどくエネルギッシュな人物だったことがよくわかる本だ。だから2回出てきた踊るシーンはニール・キャサディのすさまじさが伝わってきて良かった。必要なシーンだったと思う。

アレン・ギンズバーグだけは実物より美少年で、ゲイっぽくてよかった。何と言ってもビゴ・モーテンセンのバロウズが私のイメージのバロウズにピッタリ過ぎるのがキャストについては一番納得した。キャロリン・キャサディはもう少しインテリで上品なイメージだが、メリールウは非常にセクシーかつコケティッシュでよかった。下のキャストの部分、実物の写真にリンクを貼った。肝心のケルアックについては、内向的な雰囲気が出ていたように思う。スティーブン・ブシェミがゲイのおじさんで少しだけ出ていたことに驚いた。

映画化にあたり、そもそも「何を撮ればこの作品が伝わるか」という点から厳選されたシーンばかりだったように思う。父親のお葬式から始めたのは初稿原稿からすると正しい。ニール・キャサディの父親を捜すシーンや二人で父親の話をするシーンはまずは「父からの脱却」というテーマを押さえる上で前提条件。母親とケベック・フランス語で話すシーン、マルセル・プルーストの「失われた時を求めて―スワン家の方へ」を側においておく。ジャズのライブを入れたり、前述のダンス・シーンやマリファナのスタイル(当時は割って出すやり方だった)や煙草の吸い方や酒の瓶まで、一つ一つていねいに演出されているように見えた。

特に、ケルアックが四六時中メモをしているところや、有名な"タイプライターの用紙をつなげてジャズの演奏をしているように休まず打った"のシーンは特に重要だったと思う。旅のシーンだけでも充分満足したのに、


ケルアックというと、確かに旅には出るけど、帰るところはいつもお母さんのところなんだよね、自立してないね、と思うと若い頃はなんだか興ざめだったが、年齢を経るとなんだかそれも納得できる気がしてくるから不思議だ。ケルアックの作品は好きだが、作品からにじみ出るマザコン/マッチョのセットを思うと、評伝はちょっと読む気になれなかった。でも、ルーアン・ヘンダーソンの評伝「ガールズ・オン・ザ・ビート」やキャロリン・キャサディの「ハートビート」あたりは時間があれば読んでもいい気がしてきた。


公式サイト:http://www.ontheroad-movie.jp/
監督:ウォルター・サレス
製作:レベッカ・イェルダム/ロマン・コッポラ/ナタナエル・カルミッツ/シャルル・ジリベール
製作総指揮:フランシス・フォード・コッポラ/ジェリー・レイダー/テッサ・ロス/アーパッド・ブッソン
原作:ジャック・ケルアック
出演:
サム・ライリー(サル・パラダイス→ジャック・ケルアック
ギャレット・ヘドランド(ディーン・モリアーティ/ニール・キャサディ
トム・スターリッジ(カーロ・マルクス/アレン・ギンズバーグ
ビゴ・モーテンセン(オールド・ブル・リー/ウィリアム・バロウズ
クリステン・スチュワート(メリールウ/ルアンヌ・ヘンダーソン
キルスティン・ダンスト(カミール/キャロリン・キャサディ
エイミー・アダムス(ジェーン/ジョーン・ヴォルマー
ダニー・モーガン(エド・ダンケル/アル・ヒンクル)
エリザベス・モス(ギャラテア・ダンケル/ヘレン・ヒンクル)
アリシー・ブラガ(テリー/ベア・フランコ

路上クール・クールLSD交感テスト

2013年9月 6日

こうしてお前は彼女にフラれる/ジュノ・ディアス

こうしてお前は彼女にフラれるこの作品の主人公は前作「オスカー・ワオ...」で語り手になっていたオスカーの友人、ドミニカ人のユニオールだ。オタクだけれど、重量挙げをやって筋肉隆々で、オスカーと違ってとてもモテる。だがどうしようもない浮気性だ。

どうやらユニオールの女性の好みは細いこと。そして教師が多い。これはやっぱりミス・ロラの影響なのだろう。お相手は白人なこともあるが、やはりドミニカ人や有色人種が多いようだ。

そして彼に大きな影響を与えているのが兄のラファ。すさまじく持てる男で、彼にとっては憧れだし、友人だし、目の上のたんこぶだった。その兄が病気で亡くなることがユニオールの日々に大きな影を落とす。

なぜユニオールは浮気をするのか。そして、なぜ日記をつけたり、メールを残したりと、浮気がバレるようなことをするのか。それは人と親密な関係になることを恐れるから、と作者は言う。親密な関係になってしまうとそれを失うことが怖くなるから。だから自分から壊すようなことをしてしまう。それは彼が子供の頃から、家族からあまり大事にされていなかったから。言ってみればアダルトチルドレンなのかもしれない。彼は人と親密な関係を作ることが出来る人になれるのだろうか。

太陽と月と星々:Sun, Moon, Stars,
ユニオールは仕事をしているから、充分大人なのだろう。マグダレナは敬虔なカトリックで教師だ。
浮気されたときのタイミングの問題なんだろうが、くどかれて、ようやくその気になり、すっかり盛り上がっているところだと、冷や水を浴びせられたような気になるのか。マグダレナのような教養もあってプライドも高い女性は一度傷ついたプライドはなかなか回復できない。それにつまらない女と浮気されると「あれと同じレベルなんだ」と思い、よけいに傷つく。難しい。

しかし、まだ嫌いになってるわけではないので、一生懸命謝ってきたら仕方がないと思うのだろう。そうやって復活することも多いが、やっぱりダメなんだろうな。うまくいってないときに旅行に行くのは逆効果。自然消滅になる覚悟をもって、距離をおいた方がまだましかもしれない。旅先での悲惨な結末に遭わないだけでもよしとしたほうが賢い。


ニルダ:Nilda
『新潮』2011年11月号で読んだ。ニルダは兄ラファの彼女。ユニオールにとっては兄の最後にまつわる思い出の一つ。実際には違うけれど、ある意味で兄との共有物であった女の子がどん底へ落ちていくに違いないと思い、でもそれには何も手を出す気はない。ニルダの親のこと、まわりの男どものこと、すべてどうにもならないことだという諦め。本人も何をわかっていて何をわかっていないのか、それすらもわからない。哀しい話だ。


アルマ:Alma
アルマはユニオールが社会人になったばかりの頃の恋人で、彼がつきあった3人目のラテン娘。童貞を捧げた女の子とあるが、後の方にミス・ロラが登場するので、これは違う。学生でやはり痩せている。浮気者のユニオールらしい短い作品だが、タイトルにもなった"This Is How You Lose Her"はこの作品の最後の文だ。


もう一つの人生を、もう一度:Otravida, Otravez
突然、語り手が変わる。ニューヨークに住むドミニカ移民で、病院の洗濯場で働き、同国人の不動産屋でそこそこ成功した男と付き合っている女性が語り手になる。おそらくこの男はユニオールの父親なのかなと思う(後書きに正解と書いてあったが、彼は息子を亡くしているので、その辺は微妙)。

移民の生活は孤独で寂しいものだが、東京に高校を卒業して就職した地方出身者と最初の頃はそんなに差がないのかもしれない。大学に進学したところで、友達をつくれない人はいる。無論、そうではないという人も大勢いるだろうとは思うが。彼らが故郷に残してきたものは子供や親だし、たいていは経済的な理由だろうから、単純に比較するのは間違っているとは思うが、ふとそう感じてしまう。


フラカ:Flaca
『すばる』2013年3月号で読んだ。やせた白人の女の子で教師。ユニオールとは大学で知り合い、彼は出版社に務めている。しかし、まだ収入が低いせいか男同士でシェアハウスのようなところに住んでいるような感じがする。


プラの信条:The Pura Principle
「21世紀の世界文学30冊を読む」(2012年5月刊)で読んだ。病気になったラファがメインなので、ユニオールがフラれた話はあまり重要ではない。ハイスクールで白人の女の子のお尻をおいかけて、本命扱いされずに終わる程度。ラファがプラのような子と結婚したのは、もうヤケになっていたのだろうか。ラファの母がプラを気に入らないのもわかるような気がする。彼女は苦労しているせいなのか、人の話を聞いていないというか、自分のことしか考えてないところがあるように思える。


インビエルノ:Invierno
5年前からニュージャージーで働く父親の元へ、ラファとユニオールと母がドミニカからやってくる。二人ともまだ学校に上がる前のことで、子供たちの記憶にはほとんどない、初めて会う父親。子供たちの部屋もそれぞれあるくらいの規模の団地に住めるのは良い環境とも言えるが、知り合いは誰もいないし、雪で閉じこめられ、言葉のわからない母は孤独だ。父親からは外で遊ぶことを禁じられている子供達も同様だが、ユニオールは少しずつその禁を破り、白人の兄妹と初めて知り合う。ユニオールにとてはアメリカとの出会いだ。暖かい地域から雪の降り積もる地域への移動は、どうしても暗さがつきまとう。


ミス・ロラ:Miss Lora
ユニオールの高校の頃のお話。ラファが死んで1年後。パルマという同じ学校の女の子とつきあっているが、パルマは妊娠が怖くてセックスさせてくれない。ミス・ロラは30代独身のドミニカ女性で筋肉質でやせている。体操の選手だったらしい。ミス・ロラのおかげでユニオールは童貞を捨てることが出来た。だが、年齢はおそらく倍ほども違う。未成年だし、日本でやったら虐待か淫行で逮捕されるかもしれない。

その罪の意識からか、彼女はユニオールに大学に行くように勧める。ユニオールの将来をより良いものにすることを考え、自分にしばりつけるようなことは一切言わない。そして、高校を卒業し、しばらく働いたあと、結局ユニオールは大学へ進学する。それはミス・ロラとの別れを意味する。
そして、ユニオールは大学でようやくちゃんとした恋人をつくることが出来る。遠くでユニオールを見守り続けるミス・ロラ。でも、この関係がユニオールに対等な恋人関係をつくることを妨げたのではないかと。おそらく、ラファと関係をもっていたと思われるミス・ロラと付き合うことで、ユニオールは否が応でも兄の後を追って生きなくてはならない運命にあることを予感させる。


浮気者のための恋愛入門:The Cheater's Guide to Love
時間的には一番後のお話。ユニオールは大学に戻り研究職に就いた。場所はボストン。つまり、ハーバードだ。ボストンはこれまでと違い、有色人種への偏見は強い地域となっている。私が昔行った頃はMITとIT系の企業があったから、結構アジア系の住民が暮らしていて住みやすいという話もあったのだが。ラティーノとアジア系は違うのか。

今度フラれた女性は6年も付き合って婚約までした彼女だった。それもとても親密な、家族ぐるみの、いろいろなことを共に乗り越えてきた付き合いだった。その間に50人もと浮気してるなんて、もはやマイケル・ダグラスのように、病気だ。フラれたら、その反動はハンパじゃない。彼女との交際期間中に出来た共通の友達も全てなくすことになる。ニューヨークからボストンへ移動したのは、かえってよいタイミングだったのかもしれない。

それは簡単には立ち直れない。マラソン、ヨガ、仕事、もちろん女の子。いろんなことを試してみる。右へ左へ、サントドミンゴに飛んだり、引っ越ししたり。5年目、で終わりになっているが、果たして立ち直れたのだろうか。時間薬は5年っていうのは、そんな感じだなと思う。女の子は言う。「失恋は時間薬と男薬」。


■書誌事項
著者:ジュノ・ディアズ著,都甲幸治,久保尚美訳
書誌事項:新潮社(新潮クレスト・ブックス) 2013.8.25 236p ISBN978-4-10-590103-5
原題:This Is How You Lose Her, 2012 : Junot Díaz

■内容
ニュージャージーの貧困地区で。ドミニカの海岸で。ボストンの大学町で。叶わぬ愛をめぐる物語が、傷ついた家族や壊れかけた社会の姿をも浮き彫りにする―。浮気男ユニオールと女たちが繰り広げる、おかしくも切ない9つの物語。大ヒット作『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』の著者による最新作。

■目次
太陽と月と星々 Sun, Moon, Stars,
ニルダ Nilda
アルマ Alma
もう一つの人生を、もう一度 Otravida, Otravez
フラカ Flaca
プラの信条 The Pura Principle
インビエルノ Invierno
ミス・ロラ Miss Lora
浮気者のための恋愛入門 The Cheater's Guide to Love

2013年9月 1日

中山うり Yokohama Exotica at Motion Blue Yokohama

中山うり 横浜エキゾチカ Motion Blue Yokohama2013年8月30日(金)第一部:19:00~20:00/第二部:21:00~22:15(入れ替えなしの二部制)
Motion Blue Yokohama

祝・横浜初ライブ

私がこのアーティストを知ったのは、2008年5月4日に放送されたテレビ東京の「みゅーじん/音遊人」という番組だった。番組中はまだ赤坂ブリッツだったかな?のワンマンライブに向けて...といった内容だったと思う。公園で練習をしたり、美容師の仕事をしたり、イベントに出演したりというような様子を映し出していた。音と声が一瞬で気に入った。

すぐに「Uri Nakayama -EP」「Live Session」をiTunes Storeで、「DoReMiFa」「エトランゼ」をCDで購入した。メジャーのソニー時代もちゃんと追いかけたが、ソニーの思惑でiTunes Storeで出せないって、iTunes Storeから売り出した人なのに...と思っていたら、やっぱりすぐにやめちゃって、再びインディーズに。その後すぐにS-KENのワールドアパートからも独立してセルフ・プロデュース。レーベルはBounDEE by SSNWからの新譜を昨年出してる。最近ではすごい回数のライブをこなしてる。

ずっと、いつかライブも見たいなと思っていた。でも地方とか都内でも中央線沿線とか、ちょっと神奈川県人からは行きにくいところでのライブばかりで、なかなか行けずにいた。渋谷のときもあったけれど、土日でないと動けないので、日程的に難しかったり。今回、横浜に来るのは珍しいので、金曜日だったこともあり、手を尽くしてなんとか行くことが出来た。行ってみたら、やはり横浜というか神奈川県でのワンマンライブは初めてだったそうだ。

最新アルバム「ホロホロ」はタワーレコードのインタビューでも言ってるように、生音を大事にしている。だからCD同様、ウッドベースがすごくよく聞こえた。サポートメンバーはレコーディングメンバーに近いらしく、ツアーで鍛えられたのかとても息のあった、楽しいライブだった。やっぱりこの人をずっとフォローし続けてよかったなとあらためて思った。

ノスタルジックでジャジーで、好みの音だ。加えて、あの落ち着いた声がいい。あの張り上げない歌い方がいい。

「月とラクダの夢を見た」を最初から聴けるなんて、なんてラッキーなんだろう。「たそがれうらら」のときにアコーディオンからアコースティック・ギターに持ちかえた。ツアー中、ギターの福澤さんがライブに来られない時期があって誰か替わりを探したが、弾けるんじゃないの?と言われて弾いたらなんとかなったとのことで、実に器用な人だなと思った。福澤さんはそのときはエレキギターで、二人でツインギターをやっていた。

女性シンガーソングライターというイメージだと、せいぜいがギターかピアノの弾き語りなのだけれど、この人の場合小学校5年生からのトランペットという楽器に始まり、アコーディオンが今はメインかなと思うが、木琴(?)も弾いていた。ボーカリストだけど、インストの曲でも忙しいし、間奏中もトランペットを吹いてるし、まったく休む暇がない。

「月曜日の夜に」は福岡で演奏したものがYouTubeにあがってるが、クラリネットとトランペットの共演が楽しい。楽しすぎる。昔の曲を引っ張り出して、アレンジをし直したものだそうだ。「寝ても覚めても」も新曲だが、これも5月の福岡のものがある。

「愛のサンバは永遠に」はカバー・アルバム「セブン・カラーズ」に入っていたが、ブラジルのアルシオーニという女性歌手の曲のカバー(Alcione - Não Deixe o Samba Morrer)。木琴を黒川さんと二人で弾いていて、また楽しい。

「ガパオ No.5」のタイトルはもちろん「マンボ No.1」のもじり(No.5もあるのだが)だと思うが、インストゥルメンタル。アンコールの「マドロス横丁」港の歌だが、ご本人が埼玉県出身で海が身近でなかったことから、海への憧れもあって、海が登場する曲がいくつかある。


ライブは新曲も多く、ツアーの中で出来た曲を、ツアーのリハ中に練習して、ライブで披露する、って感じなのだろうか。もしそうだとしたら理想的なスタイルだと思う。

ご本人は、音楽活動を始めてはいるけれど、まだデビューする前にモーションブルーに来たことがあるそうだ。今年席の配置を変えて全体的に見やすくなったように思う。また、前回行ったときは席と席の間がキツキツだったのが、少しゆったりしたように感じた(これは出演アーティストによるものかもしれないが)。ここは通常2部制で、だいたい1時間15分程度。それが入れ替えなしで1時間休憩挟んで3時間15分も演ってくれた。これで3,800円はお得。だからたくさん食事をしました。お得過ぎて二度と来てくれないと困るので、1年に1度でも良いので、呼んで下さい>モーションブルー様。

私は音は好きでも声が今一つ、というケースが多く、なかなか新しい人を発掘できないでいる。好みのシンガーが少ないので、とても大切な人の一人。また行きたい。


中山うり(ボーカル、アコーディオン、トランペット、ギター)
福澤和也(ギター)
南 勇介(ベース)
宮川 剛(ドラム、パーカッション)
黒川紗恵子(クラリネット、パーカッション)
ライブ後の本人のツイートに写真が載っています)。

セットリスト
第一部
1.月とラクダの夢を見た(DoReMiFa
2.笑う月(エトランゼ
3.夏祭り鮮やかに(DoReMiFa
4.雨に魔法をかけて(ホロホロ
5.ときどき ドキドキ〔新曲〕
6.たそがれうらら(ホロホロ
7.月曜日の夜に〔新曲
8.サーカスが来た(エトランゼ

第二部
1.ルルル ルルル〔新曲〕
2.午前0時のベルが鳴る(ホロホロ
3.寝ても覚めても〔新曲〕
4.愛のサンバは永遠に(セブン・カラーズ
5.回転木馬に僕と猫(VIVA
6.ガパオ No.5〔インスト 新曲〕
7.赤い風船がついてくる(VIVA
8.生活の柄(ケセラ
9.ホタル(ホロホロ

アンコール
1.マドロス横丁(DoReMiFa
2.ホロホロ涙知らぬ鳥(ホロホロ


これを聴いて、ちょっといいなと思った方はライブ・スケジュールを見て、お近くに来たときは是非行ってみて下さい。結構回ってます。