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2013年4月19日

2013年4月19日

洪水/ダニエル・アラルコン

文学界 2013年4月号文芸誌に掲載された短篇翻訳小説が気になってわりと読んでいるのだが、この作品は最近では気に入った一つ。ダニエル・アラルコンの作品は「ロスト・シティ・レディオ」が同じ訳者の手により翻訳されている。彼は1977年にペルーに生まれたが、幼少期にアメリカ合衆国に移住しているので、英語で書く南米作家の一人だ。この作品はデビュー作である短篇集"War by Candlelight"の中の一篇だそうだ。

地域のギャング同士の抗争に明け暮れる少年たち。彼等が「生きている」と感じるのは暴力の中でだけだ。その小さな抗争が洪水の際には思わぬ事件に発展する。彼等のような少年が憧れるのは暴力の権化と言える軍隊に入った兄貴分の青年だ。小さな暴力が中くらいの暴力に焦がれ、そしてその中くらいの暴力はより巨大な暴力に飲み込まれていく。

簡潔な言葉と暴力性がバルガス=リョサの初期作品を思い起こさせてしまう。彼等の「憧れ」は日本にいる昔ながらの不良少年たちと何も変わらない。その純粋さがかえって美しく見えてしまうから不思議だ。

ダニエル・アラルコンは長編第2作"At Night We Walk in Circles"を5月頭に刊行する予定。翻訳されないかな。

著者:ダニエル・アラルコン著,藤井光訳
初出誌:文學界 2013年4月号 p84~94
原題:Flood : Daniel Alarcón, 2005

「ロスト・シティ・レディオ」

CAFE BLEU SOLID BOND/naomi & goro

CAFE BLEU SOLID BOND私の生涯ベスト3に入るアルバム、スタイル・カウンシルの「Café Bleu」をそのままフルでカバーするというバンドが日本で出た。このサイトのタイトルはスタイルカウンシルのアルバムから来ているので、とりあえずこのnaomi & goroのアルバムを聞かざるを得ないし、何か少しでも書かざるを得ない。ギター&ボーカルのユニットだそうで、しかもボサノヴァ系。

このフル・カバーアルバムのことはもちろん歓迎しているし、応援しなくてはと思う。好きなものが一緒の人がいるということは間違いない。パリス・マッチの杉山洋介さんも同じ感じで見ている。

ところが、最初にちょっと躓く。"Mick's Blessings"はバイクの効果音からスタートしている。悪いとは言わないけど、こういう奇をてらったやり方はあまり好きじゃない。それと、何故あえてピアノを使わないのかなと疑問

"The Whole Point Of No Return"は元の曲もギターなので原曲に素直な感じで突然好感度アップ。歌も女性ボーカルで、やわらかいけれど、ボサノバを歌う人特有のふわふわと線の細いところがなく、低音をきちんと出せているところがいい。うん、これは聴ける。

"Me Ship Came In!"はいかにもボサノヴァなアレンジ。ピアノもちゃんと入ってるし。と好感度をあげていくと、"Blue Cafe"で私の嫌いなストリングスが来てしまい...。これこそギターオンリーでもいいのになぁ。

"The Paris Match"は女性ボーカルの方がいいのだけど、ミズノマリさんがようやく歌えるようになってきたのに、先にレコーディングされてしまったのは、私としては彼女の成長をずっと待っていた分、少々悔しい。ライブで聞いた限りでは、あちらの方が私のイメージには合ってる。そもそ、トレイシー・ソーンは繊細ながらとても声が太いイメージので、こういういかにもボサノヴァっぽい歌い方はあまり馴染まない。"The Whole Point Of No Return"の方が良かったと思う。でも伴奏のギターの方は悪くない。

"My Ever Changing Moods"は2種類入ってるが、こちらのアレンジはシンプルバージョン。演奏の方はせっかくバンドバージョンと両方あるのなら、もう少し静かめでもよかったように思うが、この歌はまぁまぁかなと思う。

"Dropping Bombs On The Whitehouse"はフォーンセクションがメインでリズムが複雑なので、おもしろい曲になってる。ストリングスが少しだけ余計。

"A Gospel"はゆったりしたラップに仕上げてきた。この中では一番変わった仕上がりになっている。これはこれで全然原曲をとどめてないため、よい仕上がりなのではないだろうか。

"Strength Of Your Nature"雰囲気違う。原曲は力強い男声ボーカルだから、仕方がないのか。この弱々しいコーラスはちょっと合わない。ギターが面白いので、そこはいい。

"You're The Best Thing"は私はベースラインがすごく好きなので、そこはちゃんと雰囲気が出ていてよかった。

"Headstart For Happiness"こちらも本当は派手なので、まぁおとなしくオシャレっぽく仕上げるよりほかないような気はする。歌もかなりパワフルなので、そのまま再現するのは無理がある。なので無難におさめたのは、実は大変だったのかもしれない。

"Council Meetin'"このくらいになるとだんだん、この感じが心地よくなってくるから不思議だ。かわいい曲。

"My Ever Changing Moods"こちらはバンドバージョン。ゆったりとした感じのフォーンセクションがなんだかふわふわといい感じに仕上がっている。

"English Rose"これはJamの曲なのだが、わざわざ"Cafe Bleu"に入っていない曲を最後にボーナストラック的に取り上げたのは何故なんだろう?アルバムタイトルに"SOLID BOND"がついてるのは当然"A Solid Bond In Your Heart"の流れなのだろうけれど、JamとThe Style Councilの両方で演奏された、狭間感満載の曲を意図的に取り上げたのかなという気がする。ならなぜ"A Solid Bond In Your Heart"を入れずにわざわざ"English Rose"なのかな。Jam Versionはそんなにやりにくい感じでもないのに。


全体的に徐々にこちら側の音に慣れてきて、心地よくなっていったのは確か。演奏やアレンジのクオリティは高い。でもまぁオリジナルの方が好きだけれど、オリジナルを熱烈に好きな人でも「そう悪くないな」と思えるんじゃないかな。

CAFE BLEU SOLID BOND/naomi & goro
2013.3.6

1. Mick's Blessings
2. The Whole Point Of No Return
3. Me Ship Came In!
4. Blue Cafe
5. The Paris Match
6. My Ever Changing Moods
7. Dropping Bombs On The Whitehouse
8. A Gospel
9. Strength Of Your Nature
10. You're The Best Thing
11. Here's One That Got Away
12. Headstart For Happiness
13. Council Meetin'
14. My Ever Changing Moods (Band Ver.)
15. English Rose (from All Mod Cons / The JAM)

このアルバムの専用のCAFE BLEU SOLID BONDというサイトがある。「Solid Bond」をつけてるから関係ないと思うが、おそらく一応は「cafebleu」でドメイン検索されたのではないだろうか。私がこのドメインを取得したは多分1999年頃。古くからあってずっと稼働しているドメインってSEO的にはおいしいのかもしれない。私もお金がなくならない限り、これだけは絶対一生もってると思う。ごめんなさい。