最近読んだ本、見た映画・芝居、聞いたCD

2012年7月

2012年7月28日

GREEN ROOM CAFE "orange pekoe duo Live"

Green Room Cafe LIVE鎌倉の由比ヶ浜海岸、滑川の交差点のすぐ脇の海岸に今年の夏に出来たGREEN ROOM CAFEという海の家でのライブ。フリー・ライブだが、この店、おそらく7月中のライブはフリーか投げ銭ではないかと思われる。

昨年の逗子海岸の音霊ライブ、チケット買っておきながらやむを得ない事情により行けなかったため、今年こそはと思っていたら、どうも音霊のメンバーに入ってない。がっくりしていたところへ突然このライブの報が入って来た。

18:00開場と告知があったが、看板では17:15開場になっている。が、海の家なのでそれまで入れないとかそういうことでもなく。ステージから見て一番後ろになる柵沿いに一列席があり、その前にテーブルがありました。中央にもテーブルと椅子はあったけど、始まっちゃったらないも同然。ステージの前はもちろん立見で埋まってしまったが、一番後ろに陣取ったため、椅子の上に立って柵に寄りかかれば見える。

風があったし、もう陽は傾いていたので暑くはなかったが、ベタつく風で、すごくさわやかというわけにはいかない。とは言え、海を見ながら波の音とオレペコはなかなか合う。KUKUIはライブでは初めて聞いたかもしれない。ちょうど陽が落ちる時間帯で、ぴったりな曲だった。

6月の段階ではアルバムは今年中と言っていたが、「今年中...んー来年かも」と微妙な言い方に変わっていた。少なくともソロは録音はしているようなのでもったいない。早く表に出してしまってもらいたい。その分ライブは多い。今のところフェスが多く、単独のものは少ない。

GREEN ROOM CAFE FLYERセットリスト。

1.太陽のフライト
2.マリーゴールド
3.KUKUI
4.輪舞
5.foggy star(新曲アルバム未収録)
6.Selene
7.Birthday Song
8.空にかかるCircle
------アンコール-----
9.やわらかな夜
10.Love Life

GREEN ROOM CAFE "orange pekoe duo Live"

2012年7月28日(土)18:30~19:30
鎌倉由比ヶ浜海岸 GREEN ROOM CAFE

orange pekoe:ナガシマトモコ、藤本一馬

当日の模様。こんな狭いので二人で精一杯だよね。

2012年7月24日

21世紀の世界文学30冊を読む

21世紀の世界文学30冊を読む/都甲幸治著移民あるいは移動する人達が作り上げた作品を多く取り上げた海外文学案内書。『新潮』に連載されていた「生き延びるためのアメリカ文学」をまとめたものだ。

英語で書かれてアメリカで出版された、アメリカ文学を世界文学と呼ぶことの暴挙について、詳細は学者の方々お任せしたいと思う(たくさんの書評が出ている)。"世界のマーケットを意識して、あるいは(ハ・ジンのような)政治的な事情で英語で書いている様々な国の出身の作家の作品を集めているのだから世界文学である"という「はじめに」に対して、納得できる部分とどうしても違和感をぬぐえない部分の両方を感じる。スペイン語やポルトガル語を母国語とする人の数など、詳細に把握してから言うべきだと思うが、言語の分布図における英語の占めるパーセンテージに対する認識がなんだか一方的過ぎるのではないか?スペイン語やポルトガル語以外の言語を使う必要性を感じない環境に相当数の人がいるが、完全にマーケットから外すのは明らかに変だなと思う。おそらく、世界中の文学という意味で「世界文学」を使っているわけではないということなんだと思うが...。

で、やはり最初からこれは「世界文学だ」と意図して書いた連載ではなかったようだ(下記『新潮』の対談にある)。今やっている『新潮』の「世界同時文学を読む」なら「世界文学」と名乗ってもおかしくないし、そのまま書名になってもあまり違和感はない。

『新潮』2012年7月号の「アメリカ文学は世界文学である」という著者と柴田元幸氏の対談も読んだが、タイトルは煽りに過ぎず、本書の意図をきちんと教えてくれていた。「権力から遠いところにいることの悲哀を、嫌でも感じずにはいられなかった三年間に感じとったことが、出自的にマイノリティの人たちが味わった苦難を理解するうえで、かなり大きく働いていることは、読んでいてすごく感じました。」(柴田先生談)。

書名に版元によるマーケ的な匂いがして少し残念だが、とても役立つ嬉しい書評集だ。

読んでいる本もあるが、未訳で読んでみたい本もある。なんと言ってもロベルト・ボラーニョ「南北アメリカのナチ文学」、それからダニエル・アラルコンの「蝋燭に照らされた戦争」。カレン・テイ・ヤマシタも何でもいいから読みたい。
そして訳があるのに読んでいない本もある。アレクサンドル・ヘモン、チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ...。前からこの辺は読みたいと思っていた。

学生のときに、他学科専門である英米文学の講義を取ったら、新進気鋭の助教授(今はない職種)が、翻訳も出ていない最新のSF文学について語ってくれるという、至福の時間だった。英米文学科はご存知の通り、本気で勉強する気のある学生は1割もいないので、講義中私語でうるさかったため、他学科である我々がいつも一番前に座っていた。彼の講義の価値をわかっていない学生を哀れに思いながら、楽しく講義を聞いていた。数年後、その講義で紹介してくれた作家の翻訳が出て、先生の先見の明に感動したりもしていた。

以来、翻訳されていないような新しい作家の本を紹介してくれる人には、とりあえず感謝の念を込めてついていくことにしている。『ユリイカ』で連載していた安藤哲行先生、『新潮』で連載していたこの本(現在も継続中)、そして松本健二先生にどこかの文芸誌で連載して欲しいなと思う。ラテンのかなり新しいところを突っ込んで下さっている。編集者の方、お願いいたします。

■著者名:都甲幸治
■書誌事項:新潮社 2012年5月30日 250p ISBN978-4-10-332321-1

■目次
はじめに
I
1 オタクの見たカリブ海――ジュノ・ディアス『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』(他に「ハイウェイとゴミ溜め」がある)
2 切なさのゆくえ――ミランダ・ジュライ『いちばんここに似合う人』
3 ミニマルな青春――タオ・リン『アメリカンアパレルで万引』(「イー・イー・イー」がある)
4 南米文学を捏造する――ダニエル・アラルコン『蝋燭に照らされた戦争』(「ロスト・シティ・レディオ」がある)
5 アメリカに外はあるのか――ジュディ・バドニッツ『素敵で大きいアメリカの赤ちゃん』(「空中スキップ」「イースターエッグに降る雪」がある)
6 心の襞を掴む――イーユン・リー『黄金の少年、エメラルドの少女』(他に「千年の祈り」「さすらう者たち」がある)
7 沈黙の修辞学――マイリー・メロイ『どちらかを選ぶことはできない』
8 文明の外へ――ピーター・ロック『捨て去ること』
〈コラム〉天才助成金

II
9 お笑いロサンゼルス――トマス・ピンチョン『LAヴァイス』(翻訳多数)
10 オースターの新作が読みたい!――ポール・オースター『写字室の中の旅』(翻訳多数
11 命を受け継ぐこと――ドン・デリーロ『墜ちてゆく男』翻訳多数
12 引き延ばされた時間――ドン・デリーロ『ポイント・オメガ』(2013年に都甲幸治訳で水声社より刊行予定)
13 監獄としてのアメリカ――フィリップ・ロス『憤慨』(翻訳多数
14 世界の始めに映画があった――スティーヴ・エリクソン『ゼロヴィル』(元になった短編は「モンキービジネスvol.2」に収録)
〈コラム〉作家への道

III
15 サラエボの幼年時代――アレクサンダル・ヘモン『愛と困難』(「ノーホエア・マン」がある)
16 アメリカの内戦――アレクサンダル・ヘモン『ラザルス計画』
17 心の揺れを捉える――チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ『なにかが首のまわりに』(「アメリカにいる、きみ」「半分のぼった黄色い太陽」「明日は遠すぎて」がある)
18 外国で生きるということ――ハ・ジン『すばらしい墜落』「狂気」「待ち暮らし」「自由生活 上」「自由生活 下」がある)
19 もう一つの日本――カレン・テイ・ヤマシタ『サークルKサイクルズ』(「熱帯雨林の彼方へ」<絶版>がある)
20 動物としての人間――J・M・クッツェー『悪い年の日記』(翻訳多数
21 さまよえるファシストたち――ロベルト・ボラーニョ『南北アメリカのナチ文学』(「通話」「野生の探偵たち」がある)

〈コラム〉英語圏の雑誌あれこれ
IV
22 バカの帝国――ジョージ・ソーンダーズ『説得の国で』(「短くて恐ろしいフィルの時代」がある)
23 熱帯の魅惑――デニス・ジョンソン『煙の樹』(ほかに「ジーザス・ザ・サン」がある)
24 いてはいけない人々、いってはいけない言葉――リン・ディン『偽の家』(「血液と石鹸」がある)
25 これは小説ではない――リディア・デイヴィス『嫌なこといろいろ』(「ほとんど記憶のない女」「話の終わり」がある)
26 認識できない恐怖――ブライアン・エヴンソン『遁走状態』(2013年に新潮社より刊行予定。すでに「居心地の悪い部屋」に2篇収録されている)
27 他なるものに出会う――ジム・シェパード『わかっていただけますよね』(「14歳のX計画」がある)
28 ノスタルジーの国への旅――マイケル・シェイボン『ユダヤ警官同盟』翻訳多数
29 B級小説の快楽――ジョナサン・リーセム『あなたはまだ私を愛していない』(「銃、ときどき音楽」「マザーレス・ブルックリン」「孤独の要塞」がある)
30 街のにおい――ダン・ファンテ『安酒の小瓶 ロサンゼルスを走るタクシードライバーの話』(「天使はポケットに何も持っていない」がある)
〈コラム〉アメリカ・イギリス・アイルランドの文学賞

[特別収録]訳し下ろし短篇
 「プラの信条」ジュノ・ディアス著/都甲幸治・久保尚美訳

2012年7月 5日

あの川のほとりで/ジョン・アーヴィング

Last Night in Twisted River, 2009

あの川のほとりで 上あの川のほとりで 下
小竹由美子訳 新潮社 2011.12.20
上:380p ISBN978-4-10-519113-9下:410p ISBN978-4-10-519114-6

読み進みづらい小説だった。つまらないとか難しいといった理由ではない。これから何が起こるのかわかっていて、それが起こって欲しくはないが、アーヴィングの場合、運命的にそこへ吸い寄せられるように向かっていくことがわかっているからだ。そこに至るまでに様々な物語が展開するであろうことは予想できて、かつその内容まではわからないので楽しいものもあるのだが、いつだってそのことがちらついて頭のどこからか離れない。読み進めて行くと、それが起こるシーンを読みたくない度合いが更に強まるという状況で、どうしてももたついてしまうのだ。それが実際に起こってしまえば、その後はさーっと読めるのだが。

(以下ネタバレ)

物語はぐっと先に進んでそこから遡る形をとっているから、この期間に何が起こったかをある程度の幅の期間で示してくれるので心の準備が出来る。それでも最後は示さないので、それがどこで起きるかはやはりわからない。

新潮社の紹介文に半自伝的と書いてあるが、確かに大学は同じだし、ヴォネガットが登場するのはさすがに初めてだし、カナダに住んでいるし、要素としてはいくつか当てはまる。けれどこれまでの作品もみなそうだし、その要素がいつもより少し強いだけで、半自伝的は言い過ぎだと思う。お話は基本的に新しい物語だが、アーヴィング特有のいつものアイテムも収められている。「あらがいがたい暴力」「クマ」「自動車事故のおき方」「子供を亡くす」等々。

このお父さんは、結局のところ結構長く生きたので、そんなに悲しい出来事ではないのかなと思うのだけど、その場面に出くわしてしまうとやはり悲しい。結局のところ47年間息子を最後まで守り通したのだから、本当に立派だと思う。それぞれ彼女も出来たし子供(孫)も産まれたし、仕事も順調だし、といろいろあっても、この父子の絆は変わらない。高校生のときに離れて暮らしたりしたら、そのまま離れるかと思いきや、ちゃんとまた大人になって一緒に暮らしていたりするのだから。

この作品を読み終えて、人生は長くてそして面白いものなのだなと感じる。80歳を過ぎても結婚したがる女性がいたり、60歳になっても運命の出会いがあったりするのだ。「未亡人の一年」はじめすべての作品の根底を流れているのがこの感じ。暴力的で悲惨な出来事がたくさん起きているからこそ、アーヴィングの人生賛歌っぷりは際立つ。そして、だから飽きずに読み続けるのだろう。「人生は素晴らしい」なんてことが書かれた小説を読んだことのなかった20年前から変わらずに。

この装幀の絵が印象的。中川貴雄さんというイラストレーターの方が書かれているのだが、下巻の男の子の手をひいてるお父さんの絵が、そのまま中表紙にも使われているように、この作品を象徴しているように思えた。

2012年7月 4日

salon de paris match 2012 Billboard Live TOKYO

20120704.jpg2012年7月4日の1st。ツアー初日の初回公演。最初2曲やって、そこから先ジャズトリオと称し、ピアノ、ベース、ドラムの3人だけをバックに3曲。これがなんと言っても良かった。歌い手としては楽しいだろうなと思う。「眠れない悲しい夜なら」は元々アップテンポなので、かなりスローに。そしてThe Style Councilの「The Paris Match」。バンド名はもちろんここから来ている。しかも「Cafe Bléu」に入っているTracey Thornの歌ってる方のバージョン。人前で演奏するのは初めてだそうだ。ご本人の言うとおり、確かにデビュー当初はこんなの歌えなかっただろうなと思う。歌いこなせるようになってきたのは間違いない。paris matchの歌う「The Paris Match」が聴けるなんて、最初からバンド名で入っている自分としては感無量。Tracey Thornの曲、他のもやってくれないかなと思う。


「Quatro」に入っている"Rio de Amor"はポルトガル語の歌詞なのだが、歌っているのはPamela Driggsというaosis record所属のボサノバの歌手(でもブラジル人ではなくアメリカ人)。何故そうなったのかMCで説明してくれた。杉山洋介が曲を作って、吉澤大が歌詞をつけようとしたが、これは日本語の歌詞は無理だと。カバーと言われることの多い、本格的なボサノバの曲なので、それは無理だろうと私も思う。そこでポルトガル語の歌詞をつけてボサノバの専門の歌手に歌ってもらって、ミズノマリはバックを歌っていたらしい。それが今回、自分で歌えるだけになったとのこと。頑張ったんだなぁと思う。それで何かの番組のテーマ曲にでも使われているのか、定期的にブラジルから印税が入ってくるとのこと。

アンコールのMr.サマータイムはカバー曲(サーカスのだが、サーカスもカバー)で「Flight 7」に収録した曲。ライブではあまりやっていないのかな?これは1970年代のギターのギンギンした感じをそのまま取り入れている。あれって流行だったんだろうな。宇崎竜童の曲とか、ほとんどあんな感じ。歌詞の内容を考えるとこのユニットには非常に合っているが、音は合っているわけではない。しかし、良いアレンジだと思う。

ご本人たちも言ってたけど、全体的に少しマニアックな選曲だった。小さいハコだから出来ること。初見の人にはもっとポップですよーと言っていたし、新規開拓もしなくてはならないのだけれど、こうやって時々マニアを喜ばせてくれると、ずっとちゃんとついていきますよ。

平日のライブはかなり無理しないと行けないのだが、無理を押して行ってよかった。でも曲がかなり違うという噂だったので、2ndと通して見たかったが、さすがにそこまでは無理だった。残念。

このツアー後に8月の池上本願寺のSlow Music '12のライブがあるが、その後の予定としては12月に大きめのホールなどでライブをやる。アルバムは年内とのこと。

【1st】

1. サマー・オブ・エレクトリック・シティ(Passion 8)
2. Flower(volume one)
3. 黒翡翠のララバイ(After 6)
4. 眠れない悲しい夜なら(Quattro)
5. Cameria(♭5)
6. The Paris Match(カバー)
7. Rio de Amor(Quattro)
8. 寝ても醒めてもあなただけなのに(Passion 8)
9. 太陽の接吻(♭5)
10.Mr.サマータイム(Flight7)

【2nd】
1. サマー・オブ・エレクトリック・シティ(Passion 8)
2. Desert Moon(PM2)
3. 黒翡翠のララバイ(After 6)
4. Soft Parade on Sunset (TypeIII)
5. After the Rain(volume one)
6. The Paris Match(カバー)
7. Rio de Amor(Quattro)
8. 寝ても醒めてもあなただけなのに(Passion 8)
9. Summer Breeze (Quattro)
10.Mr.サマータイム(Flight7)


Vo:ミズノマリ(paris match)
G,Key:杉山洋介(paris match)
G:樋口直彦
P:堀秀彰
B:中林 薫平
Ds:長谷川ガク