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2012年4月27日

現代ラテンアメリカ文学併走―ブームからポスト・ボラーニョまで

現代ラテンアメリカ文学併走

本書は『ユリイカ』1990年1月号の「ラテンアメリカ文学の現在」から「ワールド・カルチュア・マップ」と名称変更され、2003年12月号までの13年間に書かれた100篇以上のコラムの中から選ばれたものが中心にまとめられている。この中で紹介された本の中には、すでに翻訳されて刊行されたものもあり、その後音沙汰のないものもある。

●翻訳が出て欲しいと思う本
バルガス=リョサ「アンデスのリトゥーマ」'(2012年10月岩波書店より刊行)「ケルトの夢」「綺麗な目、醜悪な絵」(戯曲)
ルイス・セプルベダ「世界の果ての世界」
ホセ・ドノソ「象の死に場所」「わたしの部族の記憶をめぐる推察」
セサル・アイラ「夢」「誕生日」
オラシオ・カステジャノス=モヤ「男の武器」
フアン・ビジョーロ「アルゴンの照射」
フリア・アルバレス「蝶の時代」(2012年内作品社より刊行予定)

この前後に比較的長めの論文が収録されている。中でも「ゲイの受容」という『ユリイカ』1995年1月号に掲載されたものは、レイナルド・アレナス「夜になる前に」を訳された方だけのことはあって、興味深い。ラテンアメリカ文学の作品にゲイが登場してからを解説してくれている。

●著者名:安藤哲行
●書誌事項:松籟社 2011年10月30日 ISBN978-4-87984-296-1


●目次
 第Ⅰ部 ラテンアメリカ文学の過去・現在・未来

メキシコ現代文学
アルゼンチン現代文学
マッコンドとクラック──新しいラテンアメリカ文学をめざして


 第Ⅱ部 現代ラテンアメリカ文学併走

影の傑作
書かない理由 エルネスト・サバト『文字と血の間で』
理性が眠らなければ魔物が生まれる フエンテス『コンスタンシア』
そして、船は行く──ムーティス『不定期貨物船の最後の寄港』
七月のメキシコ──マヌエル・プイグの死
グアダルーペを聞きながら──クリスティーナ・パチェーコの世界
遙か故郷を離れて──レイナルド・アレナス『ハバナへの旅』
嗚々、ロ~マンス──フエンテス『戦い』
救われたアレオラ
一四九二―一九九二―描かれたコロンブス
悪夢、吉夢、それとも、空夢?──ガルシア=マルケス『さまよう十二の短篇』
ボルヘスとウルトライスモ──エンリケ・セルナのバーレスク
バルガス=リョサの裏切り
遍在する果実──フエンテス『オレンジの木』
プラネタ賞、初版二一万部── バルガス=リョサ『アンデスのリトゥーマ』
ポール・ボウルズを魅了した作家──ロドリーゴ・レイ=ローサ
切ない恋の物語──ガルシア=マルケス『恋と、もろもろの悪魔たち』
回想の六〇年代──フエンテス『ダイアナ、孤独な狩人』
ブエノスアイレスの創造
目の悪夢──フアン・ビジョーロ『アルゴンの照射』
モビー・ディックの影──ルイス・セプルベダ『世界の果ての世界』
帰還のエレジー──メキシコ、そして神戸
文明と未開──ルイス・セプルベダ『恋愛小説を読む老人』
マヤのキャビアの呪い──R・レイ=ローサ『セバスティアンが夢見たこと』
愛という幻想──ガルシア=マルケス『坐っている男への愛の酷評』
知識人たちのぼやき──ホセ・ドノソ『象の死に場所』
追『試験』──コルタサル『アンドレス・ファバの日記』
マエストロの芳醇なミステリー──デル・パソ『リンダ67、ある犯罪の物語』
南で、そして、南へ──セプルベダ『パタゴニア・エキスプレス』
ジャーナリズムへの復帰──ガルシア=マルケス『ある誘拐のニュース』
アウグスト・モンテローソ素描
ドノソの文学的遺書──『わたしの部族の記憶をめぐる推測』
批評する人、される人──バルガス=リョサ『綺麗な目、醜悪な絵』
八歳から八八歳までの若者のための小説──セプルベダ『カモメに飛ぶことを教えた猫のお話』
アギラル=カミンとマストレッタ
キューバからの新しい風──ソエ・バルデス『日常の無』
常春の町のK──ハビエル・バスコネス『プラハからの旅人』
もう一人のメキシコの女性作家──カルメン・ボウジョーサ『ミラグローサ』
町の発見──J・C・ボテーロ『窓と声』
愛の重さ──コシアンシチ『女たちの神殿』
ダンディの死──ビオイ=カサレス『ささやかな魔法』
フェイントの妙──セサル・アイラ『夢』
描かれたメキシコの百年──フエンテス『ラウラ・ディアスとの歳月』
遺言──サバト『終わりのまえに』
国境の上で
一九九九から二〇〇〇へ
スペイン語で書かれたドイツ小説──ホルヘ・ボルピ『クリングゾールを探して』
超短篇とエドムンド・パス=ソルダン
定型への挑戦──ベネデッティ『俳句の片隅』
ポニアトウスカとの一日
二〇年の留守番──ベルティ『ウェイクフィールドの妻』
刹那に生きる──P・J・グティエレス『ハバナの王』
引用で創りあげた小説──フエンテス『メキシコの五つの太陽』
駒を自在に扱って──イグナシオ・パディージャ『アムピトリュオーン』
ニューヨークのラティーノ──ロベルト・ケサーダ『ビッグ・バナナ』
夜の暗さ──フアン・アブレウ『海の陰に』
アレナスの声──アレナス全詩集『インフェルノ』
五〇ニシテ惑ウ──セサル・アイラ『誕生日』
ホルヘ・エドワーズの来日
日本のフィクション、フィクションの日本
庭とエロス──ルイ=サンチェス『モガドールの秘密の庭』
フィクションとノンフィクションのあいだで──ハビエル・セルカス『サラミスの兵士たち』
戦士のその後──オラシオ・カステジャノス=モヤ『男の武器』
二人のカルロス・フエンテス
アメリカとドミニカの間で──フリア・アルバレスとトルヒージョ
書簡体の政治小説──フエンテス『鷲の椅子』
忘却と回顧──雑誌「マリエル」創刊二〇周年
権力への問いかけ──セルヒオ・ラミレス『ただ影』
あまりに暴力的な──フェルナンド・バジェホ『断崖』
バルガス=リョサの受賞と『ケルトの夢』
死後の名声──ボラーニョ現象


 第Ⅲ部 ラテンアメリカ文学のさまざまな貌

既視のボマルツォ
ゲイの受容──メキシコとルイス・サパータ
スペイン語圏の文学賞