pina a film for Pina Bauch by Wim Wenders
昨年10月に東京国際映画祭で観たときは、何しろピナ・バウシュのダンスを観るのが初めてで、面食らってちゃんと映画を観る余裕はなかった。だからそのとき、もう一度見ようと決めていた。今回はダンサーの動きがほとんど映像として頭に入っていたようで、その分余裕をもって3Dを楽しめた。
3Dだから、例えば速い手の動きがコマ送りのようになって、それがイヤだという言葉をどこかで見かけたけれど、自分にはそれはまったく気にならない。重層感のある動きが、特に群舞の際には凄まじい迫力となって襲いかかってきた。また、ドレスや髪がダンスとともにふわっと浮かぶときの質感や舞い上がる葉っぱの動き、そして水の飛び散るしぶきが、まるで触っているかのような感覚として伝わってきた。
女性ダンサーのほとんどが髪が長いのは,やっぱりその辺意識してのことなんだろう。水についてはポスターの水しぶきを見てもわからない。あの自分にかかってくるような感じは3Dならでは。舞台を観ているというよりは、舞台に上がってしまっているような感覚。ヴェンダースはこれが欲しくてずっと撮れなかったんだなということが、今回観てようやくわかった。
本当にたくさんのシークエンスを撮影していて、舞台の中も外もすべてよく考えられた構図で飽きさせない。特に舞台を離れた映像は、舞踊団の公演だけを観ていたら観られない光景だ。背景の選び方からすべて、これがヴェンダース、という映像美で、この人は変わらないなとあらためて思う。
おそらくもう一度くらい観ないと自分にはこの映画の真価はわからないのだろう。でも、次はDVDで止めたり戻したりしてじっくりと鑑賞したいと思う。