パレルモ・シューティング
ようやく「パレルモ・シューティング」を見ることが出来た。3年ごしだ。海外在住の方々は観ておられるのだが、私には無理だった。
ヴェンダース監督はこういうパーソナルな作品をよく撮る。昔は一本おきにがっちりストーリーのある作品と、ちょっと行き当たりばったりの小さな作品を撮ってバランスをとっていたが、最近は音楽ドキュメンタリーを除くと、「ランド・オブ・プレンティ」がそれにあたるのだろうか。少し違うかもしれない。やはりドイツに帰ってきたことが大きいのだろう。
オープンカーでヘッドフォンを耳にかけて走るのはかなり危険だと思う。カーステレオは外の音も聞こえるが、あれでは周囲の音が全然入らない。その上、ハンドルをもちながら撮影しようとしたりもする。無茶するなと思って見ていると、やっぱり事故に遭いそうになる。主人公は不眠のためパレルモの町中で昼寝をしてしまうのだが、シチリア島で昼寝なんて危ないなと思っていると、彼女に危ないわよと言われてしまう。スクーターの多い街だなと思って見ていると、彼女は赤いスクーターに乗っている。パレルモってピンクのユニフォームだっけなと思っていると、サッカーのバッタもののユニフォームが売られているシーンが出てくる。そんな感じで、なんだか監督にいろいろとこちらの思うことが見透かされているような気がした。
パレルモの風景を楽しみつつ、ジョアンナ・メッツォジョルノの不思議と悲しげな美しさに魅了されつつ、デニス・ホッパーがいつ出てくるかなとかわくわくしながら最後まで見たが、何かとっかかりがないと「不思議な映画だなー」という感想になってしまうかもしれない。だから音楽は重要なアイテムだ。
吉祥寺バウスシアターではレイトショーで爆音シアターという形で上映している。自分が観たのは残念ながら、爆音での上映ではなかったが、なるほど、爆音がふさわしい作品だ。
主人公がヘッドフォンを耳にかけて音楽を鳴らすと同時に音量があがり、耳から外すと音楽が止まる。「ベルリン、天使の詩」の天使が人間になったときからモノクロ→カラー変換をやったように、こういうわざとらしいというか、わかりやすいとも言える演出をすることが度々ある。嫌いな人は嫌いだろうなぁ。
人生に行き詰まったときに音楽が人生を救ってくれた経験をもつ監督は、こういうパーソナルな作品ではたいへんに音楽を重要視する。その点で爆音シアターを主催するboid(配給元)の目にとまってくれたのなら、よかったと思う。なにしろ、日本での上映をほぼあきらめていたので、ちゃんとした映画館で見ることが出来て、boidには感謝している。
確かにプロモーションには難しい作品だと思う。デニス・ホッパー遺作とは言えるのだが、なんとおもしろさを表現すれば良いのか。ロードムービーという言葉もあったが、確かによそには行くが、その過程が描かれず、一足飛びに飛行機で行ってしまったので、ロードムービーとは言えないように思う。「リスボン物語」の方がまだ車での移動が少々だが入っていたのだけれど。
ライン川の男性は何者なのだろう?Bankerと役名はあるが、この人はいろいろ解釈できそうだ。ルー・リードはすごくストレートでいい。大好きなジューク・ボックスで曲がなっている時に出てくる。登場するのは一瞬だが、いい味を出している。
最後の方、結局死神の愚痴を聞いている主人公がそこはかとなくおかしい。
2011年9月3日~23日吉祥寺バウスシアター。9月24日~10月14日新宿K'sシアター。以後大阪、横浜、広島、京都など地方巡回が決定している。
監督・脚本・製作:ヴィム・ヴェンダース
出演:カンピーノ、ジョヴァンナ・メッゾジョルノ、デニス・ホッパー、ルー・リード、ミラ・ジョヴォヴィッチ
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