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2011年5月19日

百年の孤独を歩く―ガルシア=マルケスとわたしの四半世紀

百年の孤独を歩く著者と知己を得た研究者が長年の交友から著者及びその家族から得られた証言を元に、作品の舞台となった地を訪ねるというガルシア=マルケスのたぐいまれな研究書ではあるが、一方で現在のコロンビアの旅行記という非常に珍しい面もあり、両方の意味で貴重な本だと思う。

ガルシア=マルケスの作品にて語られるエピソードが事実に基づくものであることはよく言われることだが、舞台となった場所をこれだけ丹念に訪れて確認した外国人はまずいないだろう。泥にまみれてたどり着いたマルケシータが眠ると伝えられる場所の話など、なかなか聞けるものではないと思う。本書はガルシア=マルケスの物語は私的な出来事、歴史的な出来事、伝承や地域の音楽などが渾然として形作られているのだということを細部に至るところまで教えてくれる。

南米大陸で今もっとも危険な国であるコロンビアの、観光地ではなく奥地にまで入り込むのはひどく難しく危険なことだろうと思っていたら、実際にそう書いてある。様々な支援者がいて実現できたことだそうだが、まずはご本人の強い意志があってのことだろうと思う。ガブリエル・ミストラルの研究論文を出した後、ガルシア=マルケス研究をいわばライフワークとして続けていらして、その集大成という形で刊行された本だと思うと、なかなか一気に読めなかった。何年にもわたる、何回にもわたるコロンビア渡航によってもたらされている果実は、日本語だけではもったいないと思ったら、あとがきによると、スペイン語版も出るようだ。

カタルヘナと言えば「コレラ時代の愛」はカタルヘナが見たいが故に観に行った映画だった。DVDを入手したまま放置しておいた「愛その他の悪霊について」もカタルヘナが舞台なのだから、早く見なくては。それにしてもアラン・モネ監督の「カタルヘナ」という映画の情報が入って来ない。作られているのだろうか?

■書誌事項
著者:田村さと子著
書誌事項:河出書房新社 2011.4.30 286p ISBN978-4-309-02035-8

■目次
序章 ガルシア=マルケスと知り合うまで
1 グアヒラ半島
2 アラカタカ
3 バランキージャ
4 マグダレーナ河
5 モハーナ地方
6 カルタヘナ