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2011年4月24日

モンキービジネス 13 ポール・オースター号

モンキービジネス ポール・オースター号『モンキービジネス』13号はポール・オースター特集です。これはその中のポール・オースターが出てくる部分の内容のメモです。

冒頭はオースターと柴田元幸との対談ですが、これは2010年12月7日にNYで行われたものと思われます。冒頭はオラクル・ナイトの英語→日本語での読み上げです。そのときの模様が動画でアップされています
次の「ポートレイツ」はオースターの未翻訳の散文5本。この中でもジャック・デュパンとの40年にわたる交友のお話が印象深い。文学者たるもの若いうちにパリで文無しで苦労しなくては。それもこれも、こうやって助けてくれる年長者がいるからこそ。コロンビア大学在学の話は時折出てくるのですが、有名な1968年の紛争に巻き込まれた話はあまり本人から語られたことがないように記憶しています。ここにあるように、もともとは本を読むのが好きな物静かな大学生で、政治活動とは無縁だったのでしょう。それが何故か飛び込んで行ってしまったのだけれど、本人は後悔はしていないようです。

インタビューは「パリス・レビュー」2003年秋号の翻訳。7年も前のインタビューだが、「オラクル・ナイト」の刊行直後なので、日本にはちょうどよいタイミングなのかもしれない。タイプライターの話、ノートの話、野球の話、ホーソーンの話。ナショナル・ストーリー・プロジェクトの話。そして自作の中で語られているもののうち、実際に体験したエピソードの話。「幻影の書」のヘクター・マンにモデルがいないこと(意外!)などなど。

オースター書き出し集は「オラクル・ナイト」以後の未訳5作の書き出し部分だけを柴田元幸が訳出したもの。翻訳が出ていないことのサービスかな?
2002年の「幻影の書」、2003年の「オラクル・ナイト」、2005年の「ブルックリン・フォリーズ」、2007年の「写字室の中の旅」、2008年の「闇の中の男」の5作を「初老回復期五部作」というおかしな名前で呼んでいます。

対談での柴田氏の言うとおり、日本ではちょうど7年オースターのペースより遅れているのです。それはすべてあなたのせいです。

■書誌事項
モンキービジネス 2011 Spring vol.13
書誌事項:ヴィレッジブックス 2011.4.20 ISBN978-4-86332-318-6

■目次
Conversation ポール・オースター×柴田元幸 私はジャガイモ
Essay ポートレイツ
 「シェイ・スタジアムでの一夜」
 「ジョルジュ・ペレックのための絵葉書」
 「ベケットの思い出 生誕百年に際して」
 「交友の歴史 ジャック・デュパン八十歳の誕生日に寄せて」
 「コロンビア―一九六八年」
Interview ポール・オースター 聞き手:マイケル・ウッド
Fiction オースター近作書き出し集
 「ブルックリン・フォリーズ」The Brooklyn Follies / 2005
 「写字室の中の旅」Travels in the Scriptorium / 2007
 「闇の中の男」Man in the Dark / 2008
 「インヴィジブル」Invisible / 2009
 「サンセット・パーク」Sunset Park / 2010