最近読んだ本、見た映画・芝居、聞いたCD

2010年6月 1日

ボッカチオ'70

ボッカチオ '70長い間絶版になっていたDVDだが、2010年5月新たに出たので買ってみた。一作品だいたい75分~80分くらい。全部で3時間以上。観るのに時間がかかるので、1作ずつ観てみた。すると、どうやら自分はヴィスコンティのものしか観ていないことに気付いた。

大物監督と女優の組み合わせの3本組+新人1本の作品だった筈だが、前述のように長いので、日本公開時には第1話の新人監督分が省かれていたそうだ。無理もない。しかし、この「レンツォとルチアーナ」の工場から昼休みに出てくる人・人・人...。プールでのこれまた人・人・人...。すごいモブシーンで圧倒された。結婚したけれど、お金がないので奥さんの実家に同居になり、二人きりになれない。新婚なのに...というジリジリした感じにプラス職場で結婚していることをオープンできない(でないとクビになるからってすごいセクハラ)という二重のストレスで特に夫が爆発寸前!その上妊娠したかも...?結局二人ともぶち切れて、全部パー。すれ違い生活で苦労はしても、やっぱり二人がいいね、というお話。

「アントニオ博士の誘惑」はフェリーニ&エクバーグで、この組み合わせだと「甘い生活」(1959年)があり、その直後の作品にあたる。人工的なボディがあふれる現代の日本で、この自然なボリュームの肉体美のなんと健康的なこと。フェリーニ万歳だ。それにしてもアントニオ博士が巨大アニタ・エクバーグの胸に抱かれるシーンのなんとチープで素敵なこと。今だったら絶対CGだろうけど、CGじゃないというところがかえって新鮮。

「仕事中」というタイトルになっているが、「仕事」や「前金」という邦題もあった気がする。ヴィスコンティ作品は貴族の新婚倦怠夫婦のお話。この舞台装置(映画でも舞台のようです)と家具調度の素晴らしいこと。ヴィスコンティ私物持ち出し感満載。ブランドにまるでうとい私でもわかるシャネルのスーツを着こなすロミー・シュナイダーがかわいい。まだまだ小娘という感じで、もうちょっと年をとった方が私は知的度が増して好み。父親に「仕事中なの」という時のロミー・シュナイダーの涙が、裏切られた怒りや屈辱感、でも所詮自分はお嬢様育ちだというところの自己憐憫、そういったものが全部込められているようで、グっと来る(昔書いたもの)。

物語としてはデ・シーカの「くじ引き」が一番良いかもしれない。デ・シーカ&ソフィア・ローレンの「昨日・今日・明日」「ああ結婚」も大好きだからかな。気の強い、あまり上品でない、はすっぱな女だけど、とても貞節で情の熱いところがあり、ちょっとほろっとさせるところが、いいな。

全体的にミューズ感のある女優群だった。次は「華やかな魔女たち」がDVD化されないかな。

■制作:カルロ・ポンティ
■スタッフ
第1話「レンツォとルチアーナ」監督・脚本:マリオ・モニチェリ/共同脚本:ジョヴァンニ・アルピーノ,イタロ・カルヴィーノ,スーゾ・チェッキ・ダミーコ/出演:マリサ・ソリナス
第2話「アントニオ博士の誘惑」監督・脚本:フェデリコ・フェリーニ/出演:アニタ・エクバーグ
第3話「仕事中」監督・脚本:ルキノ・ヴィスコンティ/出演:ロミー・シュナイダー
第4話「くじ引き」監督:ヴィットリオ・デ・シーカ/出演:ソフィア・ローレン
■日本公開:1962年