僕とカミンスキー
「世界の測量 ガウスとフンボルト」と同じ作者の作品。「ロードムービー風物語」なんてamazonに書いてあるから期待したのだけど、思ったより旅は長くなくて、少しがっかり。後半からようやく旅が始まるが、あまりいろいろなところへ立ち寄っているわけでもない。
主人公ツェルナーが高慢で自意識過剰で、野心家で、エゴイスティックでとても嫌な感じの人物。インタビュアーのくせにしかしながら、その男を手玉に取るカミンスキーもわがままでエゴイスティック度では更に上回る。ツェルナーを振り回す様子が痛快というよりは、ミリアム含め、イヤな人ばかりだ、この小説は。
考えてみれば、ガウスやフンボルトも風変わりで高慢な人物だった。ケールマンはそういうのが好きらしい。
「世界の測量」ほどは面白くないけれど、ラストが爽快。海で二人が別れる場面、全然シチュエーションが違うが、「アメリカの友人」のラストを思い出した。
■著者:瀬川裕司訳
■書誌事項:三修社 2008.5.23 334p ISBN4-384-04195-/ISBN978-4-384-04195-84107-1
■原題:Ich und Kaminski, 2003, Daniel Kehlmann