ガルシア・マルケスひとつ話
「ガルシア・マルケス活用事典」というサイトがある。ガルシア=マルケスの日本における唯一最大の資料集だ。ここの管理者がまとめられた書籍。ガルシア・マルケスを巡る80の話がメインで、ほかにマルケスの年譜、邦訳作品一覧、邦語参考文献といった資料に、ガボの作り出した都市マコンドの絵地図がついている。一人の作家を追うファンとしては、垂涎の出版物だと思う。もともと趣味でこつこつ集めていたものを、ウェブに載せ、それが本になった、という流れで、一応自費出版などではなく、プロの編集者が入っているので、わかりやすく、見やすいものになっている。書影が絵になっているところや、突然2色になっているところなどが、味があって気に入っている。
が、ホームページの方は、個人的には書影の写真が見づらいことが、かなり不満で、かつ1ページにずらっと文献を並べられることに対する抵抗感から、実際は詳しく見たことがなかったのだ。それが本になる(プロの手が入る)ことで、随分とわかりやすくなったと思う。
作者はプロの批評家や書評家ではないようだが、一応学会に所属し論文など発表されているようなので、完全に素人というわけではなさそうだ。読んでいる印象では、言葉遣いが随分古くさいので、かなりお年を召した方なのかと思ったら、1960年生まれとのことで、決して高齢ではない。ただ、趣味人としてはうらやましい限りだ。
本書の中心になっているのは資料ではなく、読書の楽しみを伝える小さなお話の群れであって、こういうものを読むのはやっぱり楽しい。評論ではなく、書評でもなく、本当の好事家ならわかる楽しさだと思う。
■著者:書肆マコンド
■書誌事項:エディマン 2009.3.6 382p ISBN4-88008-397-6/ISBN978-4-88008-397-1