メモ:白水社「エクス・リブリス」
白水社から新しい世界の文学シリーズ「エクス・リブリス」が刊行される。
http://www.hakusuisha.co.jp/exlibris/
その中のラインナップにチリの故ロベルト・ボラーニョの翻訳が2冊。「通話」「野生の探偵たち」が入っている。
http://www.hakusuisha.co.jp/exlibris/pamph04.html
『ユリイカ』の「新しい世界文学」で短編が一つ(「ジム」)翻訳されていたけど、それだけ。ただ、ときどき名前を聞く作家だった。人気のある作家だったようで、映画の原作になったとか、英訳されてアメリカで売れたとか。60年代ブームの後のラテンアメリカ文学を代表する若手だったようだ。でも若くして亡くなってしまったらしい。
翻訳者の松本健二氏と言えば、かつて「BAR Trilce」というラテンアメリカの作家について詳細な、とてもありがたいサイトを作っていた大阪外大の先生だった。サイトはしばらく休止中の後、いまはもうなく、ブログだけ残っている。おそらく退官されたかなんかだろうと思っていたら、現在は世界言語研究センターにお勤めの様子。ボラーニョに関しての論文を書かれていたが、いよいよ翻訳家としてもデビューか。楽しみ。
ラインナップのうち、ロベルト・ボラーニョ2冊と鈴木仁子さん訳のヴィルヘルム・ゲナツィーノ Wilhelm Genazinoの「そんな日の雨傘に」が気になる。時たま名前を聞くけど、作品は知らない。ゼーバルトっぽいのかな?
それにしても白水社さん。PDFしかないって…。ちゃんとウェブページにしなよ…。仕方がないので一部引用。
2009年3月5日予定
デニス・ジョンソン著(アメリカ) 柴田元幸訳「ジーザス・サン」190p 1890円
ロベルト・ボラーニョ著(チリ) 松本健二訳「通話」270p 2100円
以降2009年奇数月上旬
ポール・トーディ(イギリス)小竹由美子訳「イエメンの鮭釣り」
ロイド・ジョーンズ(ニュージーランド)大友りお訳「ミスター・ピップ」
クレア・キーガン(アイルランド)岩本正恵訳「青い野原を行く」
デニス・ジョンソン(アメリカ)藤井光訳「煙の樹」
ヴィルヘルム・ゲナツィーノ(ドイツ)鈴木仁子訳「そんな日の雨傘に」
ロベルト・ボラーニョ(チリ)松本健二訳「野生の探偵たち」
ポール・トーディ(イギリス)小竹由美子訳「ウィルバーフォース氏のヴィンテージ・ワイン」
ペール・ペッテルソン(ノルウェー)西田英恵訳「馬を盗みに」
エドワード・P・ジョーンズ(アメリカ)小澤英実訳「地図にない世界」
ラウィ・ハージ(カナダ)藤井光訳「デ・ニーロのゲーム」
サーシャ・スタシニチ(ドイツ)浅井晶子訳「兵士はどうやってグラモフォンを修理するのか」
オルガ・トカルチュク(ポーランド)小椋彩訳「昼の家、夜の家」
ロベルト・ボラーニョ Roberto Bolano
1953-2003 チリ
チリ、サンティアゴ生まれ、メキシコで前衛詩の運動を立ち上げるが、チリに帰国した際、クーデターに遭遇し、思想犯として投獄される。その後もメキシコ、スペインなどを転々とし、それまでの大物ラテンアメリカ作家たちとは一線を画した小説を書きつづけたが、2003 年に50 歳で他界する。没後、スーザン・ソンタグ、エンリーケ・ビラ=マタスらによる賞賛を得て、英訳が次々と出版され、長編Los detectives salvajes(『野生の探偵たち』)が《ニューヨーク・タイムズ年間最優秀図書》に選ばれる。Llamadas telefonicas(『通話』)は自虐的かつユーモラスな作風で、作家の初期を代表する傑作短編集。『野生の探偵たち』は弊社より刊行予定。