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2008年4月27日

カレーソーセージをめぐるレーナの物語

カレーソーセージをめぐるレーナの物語 「ユリイカ 3月号」を見て読もうと思った本の一冊。「カレーソーセージ」はドイツでは庶民の食べ物として知られているが、日本でいうと何になるのだろう?ということをずっと考えながら読んでいた。あとがきで訳者が「たこ焼き」みたいなものと言っていたが、座って食べるものではない、屋台で買って立ってその辺で食べるもの、という点では当たっている。ただ、たこ焼きはやはり大阪発信の全国的な食べ物なので、1949年のベルリン発と言われているカレーソーセージとは若干ニュアンスが違う気がするが、他に当てはまるものもない。

ところで、そのベルリンが発祥地と言われるカレーソーセージだが、実際は諸説があるらしい。この作品は前述のベルリンより前にハンブルグにて出来たと主張するところから始まる。亭主に逃げられ、子どもは大きくなって一人暮らしをしている40過ぎの主婦と若い水兵の隠れ家生活の話の間は、正直あまり面白くなかった。それが、戦後水兵が出て行って亭主や娘や孫が帰って来て、それからまた亭主を追い出した後、闇市で取引を始めるところから俄然面白くなる。たばこを通貨とした戦後ドイツの闇市の中で、主人公の女性が次々と取引して欲しいものを手に入れていこうとする様が楽しくてわくわくする。

結局彼女の取引は、例の水兵の想い出のせいで大失敗に終わるのだが、そこで転んだことから、逆に大成功へと導かれる。水兵とのロマンスは長い前振りのようなものか。

私がこの本を読もうと思ったのは、終戦直前から戦後にかけてのドイツの話だからというのも一応あるが、やっぱり食べ物の話だからじゃないかと思う。食べ物にまつわるお話は、いつも楽しい。

■著者:ウーヴェ・ティム著,浅井晶子訳
■書誌事項:河出書房新社 2005.6.10 221p(河出モダン&クラシックス) ISBN4-309-20439-2/ISBN978-4-309-20439-0
■原題:Die Entdeckung der Currywurst, Uwe Timm, 1993