エウメニデス
平栗さんが出ているので見に行く。で、平栗さんが相変わらずきれいなので、満足して帰る。要はそれだけなんですが。
エリーニュスたちがオレステスを追い立てる、その図はまさにこの「オレステスの悔恨」という絵があって、今回の芝居はまさにその再現。最初、エリーニュスたちがオレステスを追い立てるシーンは、なんだか懐かしいお芝居の独特の緊張感があって、気に入った。平栗さんの登場も良かった。しかし話が進むにつれ次第だれていってしまって、せっかく75分1幕もの、という素晴らしい短さなのに、何故か長く感じられた。アポロンがちょっとだるい感じを漂わせ、陪審員の選出あたりで集中力がふっつり切れてしまった。
エリーニュスたちのような大地に属する「古い神」vs アポロンやアテナイなどの「新しい神」という対立構造は目新しいものではない。血によって呼び起こされる異形の神たち=エリーニュス(衣装はよかったと思う)の存在は何故か自然と気持ちの中に入ってくる。それはおそらく比較神話やニーチェの「悲劇の誕生」などが私の頭の中に残っているせいだろう。だから、導入はとてもよかった。
何がしっくりいかないかって、やっぱり「愛と対話で復讐を阻止する物語」だからなんだろう。日本にはもっともっと昔から魑魅魍魎がいて、必ず復讐を遂げるものなので、ピンとこない。第一イスラエルの人にそんなこと言われてもな…平和ボケしている我々の方が恥ずかしくなるくらい理想論だ。役者のみなさんはとてもよくやっていたが、アテナの説得は無理があった気がする。
出演者の半数近くが前回のルティ・カネル演出シアターX公演「母アンナ・フィアリングとその子どもたち」の出演者だが、平栗さんは円企画絡みかな?。座席は四方を囲むスタイルだが、やはり近すぎて若干緊張した。陪審員に選ばれなくてよかった…。
シアターX創立15周年記念プロデュース公演
企画・製作:シアターX(第1回 101スピリット in シアターΧ)
会期:2007年9月14日(金)~23日(日)
会場:シアターΧ
原作:アイスキュロス 「オレステース(憎しみの連鎖)3部作」より
構成・演出:ルティ・カネル(イスラエル)
翻訳:谷川渥
音楽:ミカ・ダニ(イスラエル)
衣裳:加納豊美
衣装・振付:シルリ・ガル(イスラエル)
照明:清水義幸
舞台監督:清水義幸
美術制作:江連亜花里
宣伝美術:MALPU DESIGN(佐野佳子)
出演:平栗あつみ(クリュタイメストラの霊、エリーニュス)/谷川清美(エリーニュス)/大野耕治(エリーニュス)/須川弥香(エリーニュス)/生方和代(巫女、エリーニュス)/瑞木健太郎(オレステース)/真那胡敬二(アポロン)/金子あい(アテナ)