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2006年10月 3日

かもめ食堂

かもめ食堂久しぶりの邦画鑑賞だけれど、期待通りの作品だった。荻上監督は「やっぱり猫が好き2005」で初めて知ったが、室井滋が片桐はいりになったのは「すいか」でもそうだったので、違和感はない。

妙齢の女性が、ゆったりと焦らず、しっかり生きているのを見るのは、なんとも嬉しいものだなと思う。若い頃、こんな映画があったら、もう少しゆったり生きられた気がするのだが、そう言えば若い頃「やっぱり猫が好き」を見て癒されていたものだった。今でも時々疲れるとあの30分間のほっと一息が欲しくて、DVDを見る。この映画、若い男性や若すぎる女性が見たら、さぞつまらないことでしょうよ。

主人公は地道にマジメに頑張っているように見えるが、料理は当然プロなんだろうし、フィンランド語は出来るし、合気道は出来るしで、かなりスーパーウーマンだ。あとの二人は多分日本ではあまり華やかな人生を生きてこられたとは思えないが、フィンランドまで思いつきで行ってしまうあたり、なかなか強者。そういうベースがあってのことなので、彼女たちはもともと決してダメなわけではない。これが日本の食堂が舞台だったら、あまり共感は得られないだろうなというところが逆説的だ。女性が3人出てくるが、3人に対しては男性がまったくからまないところが特に良い、というあたりも定石を完全に外していて、素晴らしい。

オシャレなカフェでもあるまいし、あんな木のテーブルなんかで食堂が出来るかとも思う。メイキングを見ると、もともとこの食堂のロケ地は実際に営業されている食堂で、そこではやはりビニールカバーがかかっていた。リアリティはあまりなく、おとぎ話のようだけれど、そこがいい。どうせトーベ・ヤンソンの国だしね。

食堂のテーブルやチェアもいいが、厨房の中も良い。ピカピカの食器やフライパンを見て、気分が良くならない女はいないだろう。それから、音がいい。無論作った音だろうけれど、意図的に大きめに出しているのがよくわかる。床を歩く音、食器をテーブルに置く音、料理の音が静かな中に響き渡る。憎い演出だなと思う。

客の女性が夫に出ていかれた話なども入り、多少ドラマチックなところもあるのだが、基本は淡々とした静かな物語。でも、美しい街や森の風景がたくさん入り込むので、しっかり飽きさせない作りになっている。

それにしても、小林聡美を見ていると、どうしてこう安心感で満たされるのだろう。多分私には永遠に「きみちゃん」なのだけど。エンディングの「クレイジーラブ」といい、挿入歌の「白いカーネーション」といい、陽水ファンにもたまらない。

そう言えば余談だが、この映画、今年の2月に「アメリカ、家族のいる風景」を劇場で見たら、予告編をやっていた。その直後に公開だったので、楽しみにしていたわりに劇場で見ることが出来ず、即DVDを予約。劇場で見るよりDVDを買う方が高いわけだけれど、DVDの方が向いている気がする。きちんと座って見るより、家のソファでゆったり見たい。レンタルでもいいから見た方がいいと思う。

■2005年 日本 102分
■監督・脚本:荻上直子
■出演:小林聡美,片桐はいり,もたいまさこ,マルック・ペルトラ,ヤルッコ・ニエミ
■公式サイト:http://www.kamome-movie.com/

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