フーリガンの社会学
■原題:Le hooliganisme
■著者:ドミニック・ボダン著,陣野俊史,相田淑子訳
■書誌事項:白水社 2005.11 ISBN4-560-50894-1 156p(文庫クセジュ)
■感想
新書版の文庫クセジュにそう多くを望んではいけないとは思いつつ、フィールドワークの少なさにちょっと辟易。生声が聞こえなくてはフーリガンがどんなものか伝わってこない。著者たちは一応聞き取り調査等しているのだが、生々しさに欠ける。ルポルタージュじゃないので、当然といえば当然なんだけど。
過去の社会学的見地から発表されたフーリガンに関する論文をさらっとおさらいした本書は新書らしい薄っぺらさで、あまり本格的には知りたくない人にはちょうどよいかもしれにあ。「フーリガンとは?」という問いに対する答えをこれまでの「イギリス人で労働者で鬱屈していて‥」という固定概念から引きはがそうとしているのだが、明確な答えは出していない。フランス人にもいるしってそんなこと言われてもね。
先日読んだ「サッカーが世界を解明する」にフーリガン華やかなりし時代を懐かしむ人たちが登場したけど、そんなもんでしょう。その後のネオナチ系のサポーターや最近の悲惨なほど増えた人種差別的ヤジに満ちたスタジアムについて考えるにつけ(ワールドカップ決勝でさえも!)、スタジアムの暴力は表面化はしないものの陰湿な方へ向かっていることは間違いない。その辺の最新ルポルタージュを待った方がよさそうだ。