オリエント急行戦線異状なし
■著者:マグナス・ミルズ著, 風間賢二訳
■書誌事項:DHC 2003.5.26 ISBN4-88724-309-X
■感想
「西部戦線異状なし」と「オリエント急行殺人事件」の合わせ技のタイトルだが、まるで関係ない。イギリスのブラックユーモアものだけど、何故か肉体労働派?といった作品。インドへ旅行しようとしている若い青年がキャンプ地にちょっとシーズンオフまで居座ったが故に陥る不条理劇。状況や一癖も二癖もある人物たちに次第に絡め取られ、動けなくなっていくのだなということが、もう読み始めてすぐにわかる。だが、動けなくなっていくことを主人公は決して不快に思わず、抜け出そうとせず、淡々と受け入れていくだけでなく、楽しんでいる節もある、というところがちょっとコメディタッチだ。
最後に主人公はこの地から抜け出せるのか?という興味だけで読み進めたが、どうにも止まってしまって読み続けるのに苦労した作品だった。やっぱり私はリアリストなので、抜け出せない状況に陥るお話なんて、好きにはなれないのだ。しかもそれが「じわっ」「じわっ」と首を絞める要因になっているのに、本人がいたってのんきなのがイライラしてしまう。面白い作品なのだけれど、私とは性格的に合わなかったようだ。