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2005年1月 4日

チェ・ゲバラふたたび旅へ―第2回AMERICA放浪日記

チェ・ゲバラふたたび旅へ―第2回AMERICA放浪日記■著者:エルネスト・チェ・ゲバラ著,棚橋加奈江訳
■原綴:Otra Vez: El Diario I&eacuite;dito del Segundo Viaje por América Latina (1953-1956) by Ernesto Che Guevara
■書誌事項:現代企画室  2004.11.25 ISBN4-7738-0410-6
■内容
チェ・ゲバラふたたび旅へ―第2回AMERICA放浪日記
写真による証言
付録

■感想
本書及び「チェ・ゲバラ モーターサイクル南米旅行日記」「チェ・ゲバラAMERICA放浪書簡集―ふるさとへ1953~56」と3作合わせて“チェ・ゲバラ キューバ革命参加以前の記録”とでも呼ぼうか。本書は「モーターサイクル南米旅行日記」の続編ともいうべき日記で、グラナードと別れ、マイアミに行って1ヶ月間動けなくなったりしていろいろあったものの、何とかアルゼンチンに戻った後のお話。半年強ほどで学位を取得して、グラナードのところへ行って仕事をするという一応の目的の元に再び旅に出たゲバラの日記及び資料集。「ふるさとへ1953~56」も同一の時期のものだが、こちらは家族にあてた書簡集。本書の資料の中にある書簡と重なる部分が多いため、詳細に比較したわけではないが、まぁ言ってみれば本編だけ読めばいいくらいな感じである。
最初の旅のときと違い、自分で生計を立てるという前提をもちながらの旅である。いずれ帰って学校に戻ろうと考えていたときとはやはり違う。単に「世界が見たい」という熱望だけで動いたときよりは、かなり自覚的に自分の将来を模索しているように見える。
いずれにせよ、出発時点でのゲバラは医者の資格は得たが医者になるつもりはあまりなく、ただ何かをやる上で人の役には立つ技術だろうな、くらいにしか考えてないように見える。それより、南米大陸で行われている不正・不正義をただすという目的のために、自分は何がいつ出来るのかを模索していた時期だと言えるかもしれない。とにかく、目的のためにはいろいろな人にあって、いろいろな話を聞いて勉強しつつ、自分を必要としている場所を探している、といった風情だ。結局メキシコでカストロたちに会うことで時節を得たというか、自分の生きるべき場所を見つけたというか、自分を役立てる革命に出逢えたわけだが、革命の起こりそうな国にやってきて、革命を横目で眺めつつ、あまり好ましからざる外国人ということで退去させられたりしている。横目で眺めつつとは言え渦中にいられたのは勉強には役に立っただろう。生計を立てるために苦労したり、あまり変化のない日々を送ったりもしている。ペルーの活動家と(おそらく)出来ちゃった結婚したりもしているが、すぐに別れたりと、いろいろやってはいる。
あれだけ功あり名のある人なので後世からなんとでも言えるが、当時の人から見たら、単に騒動を探してうろついている不逞の輩以外の何者でもないな。だから最後は革命が成就しある程度安定したキューバを去って、ボリビアに行っちゃったりするんだけど。

結論から言うと、前回の旅よりはおもしろみに欠けるが、ゲバラ研究の資料的価値はあるだろう。私はあまり革命家チェ・ゲバラに興味があるわけではなく旅行記が読みたかったので、予想の範囲ではあったが、少々不満。が、まぁ読んで損はないなぁというくらいの感じだ。