7つの都市の物語―文化は都市をむすぶ
■著者:荒このみ編
■書誌事項:NTT出版 2003.3.18 ISBN4-7571-5035-0
■内容
東京―四割のモダン、六割のぬかるみ:松山巌
ハノイ―西欧化と民族文化の創出:川口健一
プラハ―亡命者の交差点:篠塚琢
ローマ―ファシズムの野望、建設という名の破壊:河島英昭
ロンドン―ミステリー小説と大衆文化:小池滋
ブエノスアイレス―ガルデルとボルヘスの町:増田義郎
ニューヨーク―ハーレム文化とプリミティヴィズム/エグゾティシズム:荒このみ
■感想
最近知ったサイトでいいなと思ったのが亞細亞とキネマと旅鴉というところだ。それなりに前からからあるのだと思うが、アジア映画に縁がなく、知らなかった。情報量も膨大だが、整理されて見やすく、全体的にまとまっていて素晴らしい。何故出会ったかというと、「ブエノスアイレス」でひっかかったのだと思う。そのサイトの参考書籍にあった本。そういえば南米の旅行記ばかりで全然都市論の方へは行ってなかったことに思い当たった。ブエノスアイレスは物価が高いため、バックパッカーや貧乏旅行の旅行先としては魅力がないらしく、あまり取り上げられていないのである。
本書は東京外大の講演記録である。何となく堅そうなイメージだが、意外に面白かった。きちんと歴史を追いながら文学史的な基礎を教えてもらった印象である。ブエノスアイレスはイタリア系移民が多いことだけは知っていたが、イギリス人やガリシア人などもいてコスモポリタンな都市だったこと、それがボルヘスのような文学者を産んだベースになっているとのこと。
ブエノスアイレス以外だとロンドン編と東京編が特に面白かった。ロンドン編は1920年代に興隆した英国ミステリはロンドンの発展が背景にあるという話。また、東京編は東京が拡大する歴史を「阿部定」「説教強盗」という犯罪をピックアップしてサンプルとして上げている。
講演集なんて、こんなことでもなければ読まなかっただろうな。
しかし「7つ」っていうのはホントにイヤだ。「七つ」だろうが。と思っていたら、すでにそういう書名の本があったのね。