最近読んだ本、見た映画・芝居、聞いたCD

2004年9月

2004年9月23日

Der Untergang

untergangヒトラーを描いた映画、ドイツで興行トップに
ブルーノ・ガンツと言えば、「アメリカの友人」「ベルリン、天使の詩」の人。
Googleで画像検索すると何故かヒトラーばっかり出てくる。
イヤな予感がしたが、あたってしまった。あの噂のヒトラー映画「Der Untergang」はブルーノ・ガンツ主演だったのだ!
うわーん。そっくりだよー!うわーん。トシくったなー、おい。
しかも興行成績一位ときたもんだ。

これでネオ・ナチだうんぬんっていうのは短絡的すぎ。
ドイツ国内で製作された初のヒトラー映画なんである。
しかし…勇気あるなー。物議を醸し出しそうな映画に、しかも主役でよく出たよ。
日本に来たら見ないと。

2004年9月16日

ソウル・オブ・マン

20040916いつの間にか音楽映画の巨匠のようになってしまったヴェンダースですが、少なくともいい映画を撮っていることは断言できます。いわゆるワンパターンの自己撞着に陥っている巨匠にならずによかったと思ってます。それは素直に。ただ、音楽映画のドキュメンタリーの人だと思われても困るというか、それは本業ではないと思いたいなと。

ブルース100年を記念し、「The Blues Movie Project」と称してマーチン・スコセッシの総監督のもと、7本の映画が撮られました。その中の1本をヴェンダースがとっています。対象となったブルースメンはブラインド・ウィリー・ジョンソン、スキップ・ジェイムス、J.B.ルノアーの3人です。私はブルースは全然わかりません。例えばクリームの曲でスキップ・ジェイムスの名前を知ってたりとかしますけど、せいぜいそのくらいです。が、それでも充分楽しめます。その点に関しては「ブエナビスタ・ソシアル・クラブ」を見たときに感じたので、安心して見に行きました。

「ブエナビスタ・ソシアル・クラブ」は本当に素材がよくて、それに対して素直に、ハバナの陽光の明るさに対してもストレートに、難しく考えず撮ったことが勝因でした。おじいちゃんたちのインタビューとライブという構成でしたし。
ところが今回の対象となった3人のブルースメンは亡くなっていますから、そう単純には行きません。で、どうしたかというと、少ない素材で彼らの人生と音楽を考えて再構築したわけですが、そこは気持ちよくだまされてみると、なかなか楽しいです。
ヴェンダースは映画100年のときにリュミエールの頃の映像を作ろうというプロジェクトに参加したり、「都市とモードのビデオノート」で手回しカメラを使ったり、「リスボン物語」でもサイレントのような古いカメラを使っています。こういった撮影方法に対して素直というかミーハーなところが、今回の映画で大いに役立っているようです。

もう亡くなったブルースメン3人の曲を今のミュージシャンが演奏していますが、こちらもあまりに最近の人なので、ベックとかよく知りません。でもルー・リードがまたしぶくトシ食ったなぁとかニック・ケイブも結構トシなのに元気だなぁとか、そんな感じで楽しんでました。

「The Soul of a Man」というタイトルはソウルマンじゃないです。「人の魂」です。曲名です。まだ上映中ですから、このへんにしておきます。ヴァージンシネマズ六本木ヒルズ単館です。あと公式Blogだそうです。

2004年9月14日

オープンディクショナリ

「ネットで信頼に足る百科事典は作れるか」という論題で、実際に編纂していると日々感じることだが、現状ではまったく信頼には足らない。意図的ではない単なる誤謬については誰かが見つければいいのだけど、現状ではなかなか見つからないというシステムだ。更に、意図的な誤謬を防ぐことは難しい。Wikipediaでの実験等書いてあるので、面白いから読んで見るとよい。これは非常に優秀な結果だと思う。
信頼に足るようになるにはいくつかシステムとして備えなければならないことがある。
以前オープンディレクトリについて議論したときのことを思い出す。あまり変わらない気はするな…。

1.筆者の情報をオープンにすること。多くの人がその筆者の採点をすること。信頼に足る筆者であるかどうかを見極わめやすい仕組みを考えること。

2.監修者を作ること。ここがポイントだろうなぁ…ここで費用が発生することになりかねん。

妥協点を考えると、既存の百科事典にプラス特定ジャンル(新しい分野、進化の激しい分野)のみをオープンにして、人気をとって、そこだけ監修者をつける、とかかな。分野によっては百科事典にTrack Back受け付けても広がりはできるし。って、日本じゃJapan Knowledgeしか残ってないじゃん(平凡社百科事典は@NetHomeの会員になれば見られるそうな)。そうだ。Yahoo!がNipponikaを入れて、やってくれればいいんじゃないかな。

ところで、日本のウィキペディアなんだが、とにかく重くて話にならない。関心空間も同様。好きなサービスなんだけど、貧弱な環境ではどうにもならない。だから私ははてなに走った。

常々思うのだけど、一応自分のジャンルっていうのはもっていて、それ以外のところにはあまりお互い浸食し合わないようにしている感じがするな。私がそうなんだけど。でもミスはいちいち私に報告しないで、修正して欲しいなぁ。オープンなんだから。いや、ミスしない方がいいんだけどね。でも、単純なミスというよりは何せリソースであるニュースソースが嘘ついたり先走ったりといろいろあるからなぁ。

信用できない書き手っていうのはいて、それを私以外の他の人も感じていて、見つけるとしょうがないから修正していたりする。わりと疑われてる感じの人っているね。こういうのはすぐに淘汰されるんだろうけど、他の書き手が見つからないジャンルだと残っちゃっていたりするんだよねぇ。

書き方のルールなんてWikipediaみたいに細かくすると面倒くさくなってみんな書かなくなっちゃうから、やめた方がいいと思う。けれど、内容量とか、最低ラインこのくらいはあってしかるべき、というところは欲しい気はする。それは実践でたくさん書いた人がなんとなくルール化していく感じでもいいと思う。

「はてな」ではキーワード書いてる人たち同士でコミュニティになってるんだけど、それって楽しいのかな?私は超マイナージャンルで楽しんでいるだけなので、ほんの数人の人しか知らないから気楽でいいけど、あまり大勢の人とつながってると見解に違いが出たりするので緊張して書きづらいんじゃないかなぁ、なんて思ったりする。

2004年9月 6日

Studio 150

スタジオ 150■Paul Weller 2004.9.1 V2レコーズジャパン/コロムビアミュージックエンタテインメント
■感想
ポール・ウェラーのカバーアルバム「スタジオ150」。自分のルーツを探る名曲をそろえています。アレンジに随所にスタイル・カウンシルらしさが出ています。
ポール・ウェラーは、なんというか、決してテンションを下げずにずっと真摯に歌い続けている真面目なアーティストで、ある一定の影響力を持ち続けているという評価を得ています。格別大ヒットに恵まれたとは言えませんが、1970年代から一貫した音楽への姿勢を持ち続けていることは、当時のアーティストの中ではほとんど見られません。貴重な存在でしょう。
しかし、やはりじゃあ毎回新譜が出るたびにおまえは追いかけているのかと聞かれたら、いやいや全然です。というのも、ジャムでもポール・ウェラーでもなく、私はスタイル・カウンシルのみの人間なので。あの過渡期というのか、一時期のポップ状態が好きなだけですから。

けど、カバーアルバムとなると話が違い、即買いでした。ポップスのアレンジがうまいと思うので、期待してしまったのです。なかなか楽しかったです。"Close To You"は「遙かなる影」という邦題で知られるカーペンターズの曲で、バート・バカラッックの手になる曲です。バート・バカラッックをポール・ウェラーが!これなんか、ほとんどスタカン時代の音になってます。あと好きなのは"All along the watchtower"かな。「見張り台よりずっと」という邦題ですが、ボブ・ディランの曲で、ジミヘンもカバーしてます。
全体的にポップな感じですが、ポール・ウェラーを兄貴と慕う人たちには「ちょっとなー」と思われるかもしれません。そのマジメさが好きという人たちには、ちょっとノスタルジックになっていると感じられるかも。ひょっとしたら音が全体的に少し後退気味なのかもしれません。が、私にはちょうど良い感じです。
13、14曲目は日本のみのボーナス・トラックです。しかも日本のみ先行発売。相変わらず日本では一定の人気があるみたいですね。


  1. If I Could Only Be Sure
  2. Wishing On A Star
  3. Don't Make Promises
  4. The Bottle
  5. Black Is The Colour
  6. Close To You
  7. Early Morning Rain
  8. Thinking Of You
  9. One Way Road
  10. Hercules
  11. All Along The Watchtower
  12. Birds
  13. Family Affair :
  14. Let it be me

7つの都市の物語―文化は都市をむすぶ

7つの都市の物語■著者:荒このみ編
■書誌事項:NTT出版 2003.3.18 ISBN4-7571-5035-0
■内容
東京―四割のモダン、六割のぬかるみ:松山巌
ハノイ―西欧化と民族文化の創出:川口健一
プラハ―亡命者の交差点:篠塚琢
ローマ―ファシズムの野望、建設という名の破壊:河島英昭
ロンドン―ミステリー小説と大衆文化:小池滋
ブエノスアイレス―ガルデルとボルヘスの町:増田義郎
ニューヨーク―ハーレム文化とプリミティヴィズム/エグゾティシズム:荒このみ

■感想
最近知ったサイトでいいなと思ったのが亞細亞とキネマと旅鴉というところだ。それなりに前からからあるのだと思うが、アジア映画に縁がなく、知らなかった。情報量も膨大だが、整理されて見やすく、全体的にまとまっていて素晴らしい。何故出会ったかというと、「ブエノスアイレス」でひっかかったのだと思う。そのサイトの参考書籍にあった本。そういえば南米の旅行記ばかりで全然都市論の方へは行ってなかったことに思い当たった。ブエノスアイレスは物価が高いため、バックパッカーや貧乏旅行の旅行先としては魅力がないらしく、あまり取り上げられていないのである。
本書は東京外大の講演記録である。何となく堅そうなイメージだが、意外に面白かった。きちんと歴史を追いながら文学史的な基礎を教えてもらった印象である。ブエノスアイレスはイタリア系移民が多いことだけは知っていたが、イギリス人やガリシア人などもいてコスモポリタンな都市だったこと、それがボルヘスのような文学者を産んだベースになっているとのこと。
ブエノスアイレス以外だとロンドン編と東京編が特に面白かった。ロンドン編は1920年代に興隆した英国ミステリはロンドンの発展が背景にあるという話。また、東京編は東京が拡大する歴史を「阿部定」「説教強盗」という犯罪をピックアップしてサンプルとして上げている。
講演集なんて、こんなことでもなければ読まなかっただろうな。
しかし「7つ」っていうのはホントにイヤだ。「七つ」だろうが。と思っていたら、すでにそういう書名の本があったのね。