天使の運命
■原題:Huja de la Fortuna ; Isabel Allende ,1999
■著者:イサベル・アジェンデ著,木村勝美訳
■書誌事項:PHP研究所 2004.3.2 ISBN4-5696-2826-5,4-5696-3262-9
■感想
23ヶ国で400万部を売ったそうだ。イサベル・アジェンデが愛娘パウラを亡くした後、数年のブランクを経て出したフィクション。Amazon.co.jpでスペイン文学に分類されておらず、刊行に気づかなかった。ジュンク堂書店で見つけたのだ。なになに?「世界23カ国で大ベストセラーとなった恋愛大河小説」??むむむ…。元々文学くさいところは少ない人だし、いわゆるノベルズ扱いされている作家だからなぁ…どうしよう。読もうかなぁ。メロドラマは大丈夫だと思うけど、ハーレクインとか1ページ目で挫折しちゃうタイプだもんな…。これまでずっと国書刊行会だったのが、PHPに移ってるってことは、そういうことなんだろうなぁ。
実際、上巻の1/3まで読み進めたところでげんなりしてイヤになってしまった。もう少し頑張ろうと思って読み進めて、でも2/3で挫折。そこからブランクを経て、何とか上巻を読み終えたら、後は早かったなぁ。ローズの恋愛話が最初の1/3ね。で、エリサとホアキンの恋愛話が2/3ね。あのー。ハーレクインですよね、やっぱり。無意味な官能の世界は…。うんざり、げっそり。でも中国へ話が飛ぶと、なかなかなんである。
下巻に入ると、実際のところ恋愛物語は全然関係なくなってしまう。サンフランシスコおよびカリフォルニアの建設の歴史というか、ゴールドラッシュを描いて行くのである。これは面白かった。登場人物が増えるし多彩になる。著者はチリ出身だが、サンフランシスコ在住のため、なんだこれが書きたかったんだね、と。白人とヒスパニック、中国人らのそれぞれの姿をそれなりには書けてるような気がするなぁ。それなり、だけど。
恋愛小説のわりに問題となった主人公の恋愛には最後にあっさりした、というか冷たい「恋に恋してただけだよね」という結論をつけてしまう。これはハーレクインを要求する人を裏切ってないか?まぁ、あのまままた出会いと別れを繰り返し…なんてやってたら、もう全然歯が立たず読み進めることが出来なかったんだが。
安手のラブロマンスのふりをして、実際そういうところもあったりする。が、ちゃんと裏切ってもいる。実に中途半端な作品だ。まともな教養小説になりそうな気配を感じさせながら、これも中途半端。従来のイサベル・アジェンデのラインまで戻ってくれないかな。とにかく必然性のない、無意味なめくるめく官能の世界だけは勘弁して下さい。
でもって、三部作の第一作だそうだ。続きが刊行されたらどうしよう…。