最近読んだ本、見た映画・芝居、聞いたCD

2004年7月

2004年7月30日

ゴールキーパーの不安

ゴールキーパーの不安■Die Angst des Tormanns beim Elfmerter
■スタッフ・キャスト
監督・脚本:ヴィム・ヴェンダース Wim Wenders
原作:ペーター・ハントケ Peter Handke
撮影:ロビー・ミューラー Robby Muller
音楽:ユルゲン・クニーパー Jurgen Knieper
出演:
 ヨーゼフ・ブロッホ:アルトゥール・ブラウス(アーサー・ブラウス) Arthur Brauss
 グローリア:エリカ・プルハール
 ヘルタ・ガブラー:カイ・フィッシャー
 アンナ:リプガルト・シュヴァルツ
 マリア:マリー・バルディシェフスキー
 村の白痴:リュディガー・フォーグラー
■物語
ヨーゼフ・ブロッホはプロのチームに所属するサッカー選手でゴールキーパー。ウィーン遠征での試合でオフサイドをめぐって審判ともめ、退場になってしまう。何故か彼はチームと行動を共にせず、試合中にもかかわらず試合会場を離れてしまう。
映画を見、安ホテルに一人宿泊し、二人組に殴られたりしながら、街をぶらぶらとしている。映画館のチケット係であるグローリアと親しくなって飛行場の近くにある家に泊まりに行く。一夜明け、朝食を共にしたところで唐突にグローリアを絞め殺す。そして特に動揺する様子も見せず、指紋を拭き取り部屋を後にする。
ウィーンを引き上げバスに乗って国境の町へ向かう。小さな村に夜到着し、そこにあるホテルに宿泊。翌日昔なじみのヘルタがやっている居酒屋へ向かう。その村にとどまることにしたブロッホだが散髪したり映画の上映会に行ったり、居酒屋で隣合った男と喧嘩をしたり、と毎日ぶらぶらするだけで特に逃げようともしない。そんな中散歩をしていると、偶然その土地の人間が行方不明だと騒いでいた聾唖の子供の死体を見つける。
警察がグローリア殺人の犯人の新しいてがかりを発表した。アメリカの硬貨があったというのだ。それはブロッホがアメリカ遠征の際使い残した硬貨をグローリアの部屋に忘れて行ったのだった。しかしまったく動じない。
偶然サッカーの試合をやっているのを見つけ、見に行く。隣の席の中年男に話しかける。「ペナルティキックのとき、ゴールキーパーはどこに飛んでくるかわからない」という不安について語る。

■感想
ヴェンダースの劇場用長篇映画第一作。卒業制作の「都市の夏」は学生時代の作品なので、いくら長篇であっても、私の中ではやはり実験映画時代に分類したいと思う。本人も「都市の夏」はいわば最後の短篇映画だと語っている。

内容は一応サスペンスなのだが、まったくといっていいほどサスペンスっぽくない。動機の見えない殺人を犯した犯人が一応旅するのだが逃亡というわけでもなく、淡々と映画が進行する。

そもそも原作者のペーター・ハントケを知らない人は観てもしょうがないと思う。しょうがないというか、わけがわからいのではないかと思う。原作の「不安…ペナルティキックを受けるゴールキーパーの…」(三修社 1979.12 ISBN4-384-02214-X)は絶版になっており、古書市場でも滅多に見ないため、どうしても読みたい場合は図書館にしかなさそうだ。

もちろん、ヴェンダースはハントケとは違う視覚から描いており、批評家からは当時「違うことに意義があり」という声と「わざわざ映画化する意味がない」という批判と両方出たそうだ。いずれにせよ、元々が実験的な小説なので映画単体で観ても理解に苦しいだろうなと思われる。

まだ実験映画時代の流れで撮影されており、アメリカ映画の文法に慣れた日本の観衆に鑑賞が耐えうる劇場用映画ではない。最初はテレビ放映だったそうだが、よくこんなものテレビで流したもんだと思ったら、オーストラリアの製作会社はよくわからないで、サッカーの映画だと思ってゴールデンタイムにかけたそうだ(笑)。当然理解されなかった。その後一応は劇場にかけられ、アメリカの映画祭にて特別上映もされたそうだ。それにつけても、ありがたいことなんだが、よくDVDにしてくれたもんだ。

後々のヴェンダース作品を理解する上では注目すべき点がいくつかある。この作品がヴェンダース自身が自分の映像言語を確立するための第一歩だったことが伺える。

1. 映画や音楽へのこだわり
音楽というよりはジューク・ボックスと言った方が良いだろう。主人公はどこへ行ってもジューク・ボックスをかける。短い時間しかないのにかける。主人公が柱の影にかくれてしまい、ジューク・ボックスが主役か?と思われるくらい執拗にカメラが追っている。
また、映画館への出入りも頻繁。田舎に行けば映画館がなければ上映会に顔を出すというしつこさ。

2. メディアへのこだわり
テレビ、ラジオ、新聞が頻繁に使われる。特に新聞は自分の起こした事件が気になるのか主人公が常に「新聞は?」と聞いて回るが、じゃあそこに自分の似顔絵が出ていたとしても何か行動を起こすわけではない。だから事件に対する反応としての新聞へのこだわりではなさそうだ。むしろテレビやラジオも頻繁に登場し、付けたり消したり主人公の行動は落ち着かない。

3. 旅へのこだわり
ウィーンから国境の町まで行くバスの旅が出てくる。バスターミナルの自販機、途中休憩所、到着地のバス停等々、当時のドイツの旅では必須の風景だったのだろう。


リュディガー・フォーグラーが白痴の役で出ている。もうすでにして髪が薄い…

■データ:西独 101分 1971
■日本公開:1984年東京ドイツ文化センター ヴィム・ヴェンダース特集にて

2004年7月25日

夜になるまえに

夜になるまえに■Before Night Falls アメリカ 2000
■スタッフ
監督:ジュリアン・シュナーベル
製作:ジョン・キリク
原作:レイナルド・アレナス
出演:ハビエル・バルデム/オリヴィエ・マルティネス/アンドレア・ディ・ステファノ/ジョニー・デップ/ショーン・ペン/マイケル・ウィンコット
■公式サイト:夜になるまえに
■感想
「苺とチョコレート」を見て思い出した。キューバのホモと言えばレイナルド・アレナス。忙しくて日記をつけてない時期に見たので書いてなかったっけ。あらためて見直してみた。

うーん。フレディ・マーキュリーがいっぱい(笑)。

キューバは典型的なラテンのマチズムの世界なのに、何故ゲイが多いんだろう?そして特に白い目が強いのは何故なんだろう?想像するに、ラテンの男は欲望が強いのでゲイが多い→多いから危険視する。特別にそうなのかもしれないが、アレナスはすごく激しいゲイだ。

レイナルド・アレナスという作家は邦訳されている作品は少ないが、実際は多作である。書くという欲望が強すぎてどうにもならないのだろう。刑務所に入っても書く。そのせいで独房に入れられたりする。

映像化としては、とても良いと思う。見る方として、あまり原作の細かいところにこだわらないようにしているせいもあるが。革命直後のハバナはまだまだ華やかなナイトクラブの世界があり、音楽も残されていたのが、次第に芸術が迫害されて失われていくのだなという寂寥感みたいなものが少し感じられた。

やっぱり海が美しくないと、映像化する意味ないよなぁと思っていたので、その点は満足した。アバンチュールの海も良いし、チューブでマイアミまでわたろうとして失敗した場面もいい。

よくわからなかたのがラストシーン。別にああしなくてもいいと思うんだけど…どうして、そうしたかったのかなぁ。

申し訳ないけれど、映画単体として見てないので、映画自体の感想はちょっとよくわからないという感じですね。あ、ジョニー・デップがちょい役ですが、二役やっていて、とても面白いです。ショーン・ペンも少しだけですが出ています。

2004年7月21日

苺とチョコレート

苺とチョコレート■Fresa y Chocolate 110min キューバ/スペイン/メキシコ 1993
■スタッフ
製作:ミゲル・メンドーサ
監督:トマス・グティエレス・アレア/ホアン・カルロス・タビオ
原作・脚本:セネル・パス
撮影:マリオ・ガルシア・ホヤ
音楽:ホセ・マリア・ヴィティエル
出演:ホルヘ・ペルゴリア/ウラディミール・クルス/ミルタ・イバラ/フランシスコ・ガットルノ/ヨエル・アンヘリノ/マリリン・ソラヤ
■感想
原作は読んでいたのだが、「マジカル・ラテン・ミステリーツアー」を読んで映画を見ていなかったことに気づいたので、DVDを購入。キューバ版「蜘蛛女のキス」というべきか「蜘蛛女のキス」を軟弱にした感じ、というべきか。「蜘蛛女のキス」とは年上のゲイのアーティストvsガチガチの左翼青年という構造は同じだが、国が違うので反体制の側が逆転している。

マッチョな国なのでゲイを否定する土壌の上に共産主義が乗っかって、迫害されて大変なのに、堂々とゲイをやっているのだから、ディエゴは本来勇気のある男なんだろう。それに対して革命のおかげで貧しい農村から出てきて大学に通うことが出来たため、革命に心底魂を捧げているように見えるダビドの方が、いつまでもふられた彼女のことを思っていじいじといじましい。ノン気の方が最初は反発するが、最後は友情で結ばれる展開で、映画では「ナンシー」という見張り役が重要な役回りとなる。

しかし、どうしてああ映画でゲイを見ると、優しくていい人なんだろうなぁ...繊細だし、親切だし、愛情あふれるし。それに「ブエナビスタ・ソシアルクラブ」で見たハバナとほぼ同一。公園とかそっくりそのまま。舞台が元々は美しい街なので、非常にロマンチック。言い換えれば映画のタイトル通り、甘ったるい。

監督はカストロの友人で体制側の監督だし、検閲も通っているというが、なんだか微妙な気はする。今のキューバの現状を描いてなおかつ体制に対しても肯定すべき点がある取れる部分もあるし、結局反体制の側が出て行くのだから体制側とも言えるし...。反革命分子も「国を思う気持ちは同じ」というところでパスしたのか。一応「ゲイが存在する」と認めたところで進歩なのかな...。

それにつけてもレサマ=リマ、日本で翻訳されないなぁ。国書刊行会の「パラディソ」いつ出るんだかね。

ところで関係ないですがオリンピックの季節となり、何故キューバが野球が強いかというと、やっぱり反米意識からなんでしょうかね。というのも、野球はサッカーと異なり、アメリカが完全に占領した国、たとえば日本、韓国、ニカラグアとかで盛んなんで。

2004年7月20日

天国の口、終りの楽園

天国の口、終りの楽園■Y Tu Mama Tambien 106min メキシコ 2001
■スタッフ
監督:アルフォンソ・キュアロン
脚本:アルフォンソ・キュアロン/カルロス・キュアロン
撮影:エマニュエル・ルベッキ
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル/マリベル・ヴェルドゥ/ディエゴ・ルナ
公式サイト:天国の口、終りの楽園
■感想
なかなか切ない映画だと思う。最初はソフトポルノか?脳天気な青春グラフィティか?という感じで見ていたが、単純に「メキシコの今」に興味があって見続けていて、最後にストンと落とされてしまう。ずっとお気楽脳天気・ラテンのノリで満載の映画なので、その暗い落とし方にガクンと来てしまう。これがラテンの光と影なんだな、と。

そもそもは、また「マジカル・ラテン・ミステリー・ツアー」に映画評があったので見てみたのだった。この本は書評はすでに読んだのばかりだったから使えなかったけど、映画はいろいろと見る気になるものがある。それはきっと、ここのところ何年もろくに映画を見ていないせいだろう。

筋書きとしては、高校生の男の子二人が年上の人妻をひっかけて、幻の海岸「天国の口」を探すロード・ムービー。大統領が結婚式に出席するような一族に所属する富裕な高校生と父親は知らないものの、母親がキャリアウーマンでギリギリ中産階級の底にぶらさがっているもう一人の高校生のコンビはGFが二人とも欧州旅行に出かけてしまい、せっかくの夏休みだというのにやることがない。一方人妻の方はスペイン・マドリードから来た美人で夫は成功した作家としてメキシコに凱旋したが、うるさい姑がいるし、夫は浮気ばかりだし…という設定。結婚式で知り合った3人の変てこな旅である。

メキシコ・シティのスーパーは物があふれ、親の車を脳天気に転がす高校生。まるでアメリカのようだ。その一方で、姉は大学で政治学を学び、左翼運動にかぶれ、貧しい人たちに物資を配る活動をしている。旅の途中では農民が警察に銃をつきつけられていたり、死体が転がっていたり。南米のハイウェイというか幹線道路ではカーブに何本も十字架が立っていて事故が多いことがわかるんだそうだ。メキシコもそのようだ。何でも、皆相当乱暴な運転をするらしい。田舎は貧しく素朴で、美しい夕焼け、美しいビーチが残っている。しかし、そこも観光化の波は訪れ、四代も続いた漁師が漁をやめてホテルの清掃員にならざるをえない。5歳からの記憶をもつ100歳の老婆は、親がアメリカに脱出する途中、熱射病で死んだひ孫のぬいぐるみを持っている…

メヒコはやっぱりすごい国だなぁ…気楽に行けるところではないけど。

「もう会うこともない」って、いいコピーだ。親に反抗して麻薬を吸ってへらへらしている高校生には苦すぎる想い出になってしまったわけだ。原題は英語にすると"And your mother too"「おまえのお袋もな」というのは、まぁ実際は冗談じゃすまないわけで。

ガエル・ガルシア・ベルナルとディエゴ・ルナは元々6歳のときからの友達だそうだ。息が合った演技を見せている…とか言って良いものかどうか(笑)。二人とも2001年のヴェネチア国際映画祭で新人賞をダブル受賞するわ、メヒコでは興行成績ナンバーワンだわ、ずいぶんと話題になったようですな。
監督のアルフォンソ・キュアロンのこの後の作品が「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」…一気にメジャーになったんだなぁ。

龍時 03-04

龍時03-04■著者:野沢尚
■書誌事項:文藝春秋 2004.7.10 ISBN4-16-323150-1
■感想
『Number』に掲載された本格的サッカー小説・龍時シリーズ第三弾。アテネ五輪の話なので、開始前に読んでおきたかった。著者が死の直後に刊行された作品だ。グループリーグの初戦がアメリカ、次がカメルーン、第三戦が開催国であるギリシャ。このギリシャ戦からスタートし、準々決勝スペイン、準決勝韓国、決勝ブラジルと、何やかやと因縁のある国との戦いを描いている。ギリシアがユーロで優勝するなどとはまったく予定になかったんだろうなぁと思わず苦笑してしまう。それほど強いチームに想定していないことは別に間違ってはいなかったのだが、予想以上に強くなっていたということか。

U-23日本代表監督との確執というよりは駆け引きが描かれる。組織プレイを強制されることを嫌いわずか17歳でスペインへ飛び出し、1部リーグでスーパーサブとして活躍する主人公とドイツ帰りの組織プレイが得意な理論家肌の監督。どう考えても合わないと思われる組み合わせがどういう効果をもってU-23日本代表のアテネ五輪の戦いを動かすのか。

また、龍時の試合の模様と同時進行で父親の時任礼作がこの平義という監督の実像をつかむもうとする様子が物語を進めている。
この平義という監督の戦術は説得力がある。日本人のメンタリティに基づいた高い守備意識と組織プレイ、その上でのオプションとしての自由奔放な攻撃性。これは理想に近いのかもしれないな。日本人は確かにメンタリティとして失敗をおそれるところがある。一人でリスクを負った一か八かの攻撃になど出にくい。そこで組織的にプレイすることで安定した戦いができるようになる。疲れたとき、敵が焦ってきたとき、約束事に基づいた組織的なプレイをきちんとこなすことが出来れば、それは大きな武器になる。ただし、同じことばかりやっていたら敵は全部見抜いてしまう。そのため予定にないことも約束にないことも出来る選手たちが欲しい。そこで、自分の判断で動くことができる、失敗をおそれないメンタリティをもつ選手も必要だと。まーこんなうまい組み合わせが出来れば最高だわな。
しかし、平義という人物を描く上で奥さんとその妹の関係の物語は必要だったんだろうか…?という気がしてならない。人物像に厚みを出したかっただけなら、そこまで書き込まなくても、もっと試合に集中した方が個人的には嬉しかった。

01-02、02-03、03-04のどの順に面白かったかというと、…刊行順…だと思う。やっぱりねぇ(笑)。主人公があまりヒーローになっても面白くないのだわ。それでもリーガを描いた02-03はまだ良かったな。日本代表にさほど興味がないと面白くないのかも。あ、だから日本代表が好きな人は読んだ方が良いと思います。田中達也とか、そこまで良いかなぁという気もするけど。

まぁ、それはともかく、後書きを読むと1年に1冊刊行の予定で連載していたそうだ。ということは「04-05」もある筈だった。主人公の年齢がとても低いところで始まっているので、10年は続けられるが、おそらくは次のW杯がある2006年まで、つまり04-05、05-06あたりまでは少なくとも予定されていたのだろう。

龍時の続きが読めなくなってしまったのは何故だろう?誰のせいなんだろうか?言われているように「坂の上の雲」のせいなのか?じゃあ「映像化まかりならん」と言った司馬遼太郎のせいなのか?それとも企画を持ち込んだテレビ局のディレクターなのか?
いや、やっぱり野沢尚本人のせいなんだろう。悔しいな…。心から悔しい。

2004年7月19日

♭5 : paris match

♭5paris matchの5枚目のアルバム「フラット・ファイブ」。1st、2ndのときに思ったけど、やっぱり最高のBGMです。悪い意味ではなく。特にPCに向かっているときに聞くと、集中する。本当にどうでもいい曲だと、まったく聞こえなくなるのに対し、これはちゃんと残っている。それだけ心地良いけどもしっかりした曲なんだろうと思う。おそらくアレンジが好きなんだろう。技術はしっかりしているのだが、相変わらずボーカルの線が細く、そこはかとないところがいい。

初回限定でDVDがついている。プロモビデオは「太陽の接吻」がフルコーラス入っているだけで、あとはメンバーの杉山洋介、ミズノマリ、古澤大がそれぞれインタビューに答えているという形。BGには当然Paris Matchが流れているけど、PVが入っているわけじゃない。結構気合い入れて作る人たちなので、そのうちPV集を出すんだろうな。DVDがついてない通常版も出していて、値段の差が600円ほど、というのは微妙な感じ。

「TypeIII」がドライブミュージックを意識していて、「Quattro」はリゾートを意識していた。引き続きドライブBGMやリゾートBGMとしても考えられているようで、夏に向けてアルバムを出しているのだが、少し落ち着いたような気がする。

「太陽の接吻(キス)」はキリン氷結の、「HELLO BEAUTIFUL DAY」と「ETERNITY(English Ver.)」はともにPOLAのCMソング。恒例のスタンダードソングは今回はアル・グリーンの「Let's Stay Together」。こんなスタンダードもうまく歌いこなせるようになったなぁと感慨深い。

「stars」は杉山・古澤コンビの曲だが、先にvividblazeというバンドに提供しているので、ミズノマリがセルフ・カバーという形になる。「Eternity」はこのバンドにしてはめずらしい、ストレートにきれいなバラード。リスボンの丘をイメージしているそうだ。「手紙」はスティービー・ワンダーのようなハーモニカが印象的。「CAMERRIA」「追憶」と大人っぽい曲が続くが、曲調は全然違う。特に「追憶」は時々こういう曲あるなぁという昭和歌謡の匂いが若干する。「Drive」はなんだか微妙な詞...。

DVDでミズノマリが「一番好きなボーカリストはTracy Thorn」と言ってるのを聞いて、自分はこの人たちと趣味が合うってことを再確認した。

2004.7.16 ビクターエンタテインメント

  1. STARS  作詞:古澤大,手塚三保/作曲:杉山洋介
  2. 太陽の接吻 (キス)  作詞:古澤大/作曲:杉山洋介
  3. OLIVE  作詞:古澤大/作曲:杉山洋介
  4. CALL MY NAME  作詞:古澤大/作曲:杉山洋介
  5. ETERNITY  作詞:古澤大/作曲:杉山洋介
  6. 手紙  作詞:古澤大/作曲:杉山洋介
  7. LET'S STAY TOGETHER
  8. CAMELLIA  作詞:古澤大/作曲:杉山洋介
  9. 追憶  作詞:古澤大/作曲:杉山洋介
  10. DRIVE  作詞:古澤大/作曲:杉山洋介
  11. OCEANSIDE LINER  作詞:古澤大/作曲:杉山洋介
  12. I' LL BE THERE  作詞:ミズノマリ/作曲:杉山洋介

    --BONUS TRACK--

  13. HELLO BEAUTIFUL DAY
  14. ETERNITY (English Version)

amazonで購入する

2004年7月14日

龍時 02-03

龍時02-03■著者:野沢尚
■書誌事項:文藝春秋 2003.9.30 ISBN4-16-322220-0
■感想
野沢尚死去の報を知ったとき、瞬時に「ああ、もう龍時が読めないのか。しかし01-02の後を読んでないぞ…?」と思った。予想通り「02-03」は在庫が少なく、入手に少々時間がかかった。「03-04」がちょうど間もなく刊行だったため、予約して購入した。すると、「01-02」がもう文庫になってしまった

何故「02-03」を読んでいなかったかというと、2002年のワールドカップ以後ほとんど『Number』を読まなくなったからだ。W杯前はワールドサッカーの雑誌は『ワールドサッカーグラフィック』と『ワールドサッカーダイジェスト』くらいしかなく、しかも月刊だった。WSDが隔週になり、『ワールドサッカーマガジン』が刊行されたのはW杯後だ。それで日本代表がメインの『Number』を読む機会がなくなった、ということかもしれない。

さて、舞台は突然セビージャをホームタウンとするベティスである。アトランティコFCというマドリー郊外の架空のクラブだった01-02と異なり、本物のクラブ。当然登場人物の中でクラブの人たちのほとんどは実在の人物である。選手、監督から会長まで実によく書けている。たった11日間の取材旅行で、よくここまで書けたと思う。筆力とはこのことだ。

02-03シーズン開始当初、確かにベティスは調子が良かった。最後崩れて8位まで落ちたが、当初の勢いなら2~3位でもおかしくなかった。主人公がこのベティスのホアキンの交代要員という設定であるところがすごい。確かにプレイスタイルは龍時と似ているのだが、著者は自分でこの設定は決めたのだろうか?誰かプロが教えたのだろうか?それにつけてもホアキンとは…。

監督のビクトル・フェルナンデスがむちゃくちゃいい監督に描かれている。本当にそうだったら選手は涙もんだと思う。内容のわりに成績が悪いため、2004年6月30日をもって辞任してしまったが。そのほか名物ロペーラ会長のキャラクターもよく書けている。アスンソンやデニウソンやカピらの得意のプレイも実によく知っていて感心する。ベティス・サポーターは当然読んでいるのだろうけど、なかなか楽しいんじゃないだろうか?方やバレンシアはビクトル・ロペスという架空の選手がアイマールの代わりにレギュラーポジションをつかみかけているという、私には面白くない設定である。ま、それはともかく、リーガをそこそこ知っていないと、どこからどこまでが架空の人物かわからないだろうな。ベティスの選手のほとんどと監督・会長、日本代表の選手たちは実在するが、後は全部架空の人物なのだが。

ワールドカップや韓国人に対する総括のような箇所もある。ミスジャッジに対する見解はなるほどなと思う。いつもは慣れすぎていて、怒ることを忘れていたかもしれない。が、ワールドカップの時は「犯罪だな」と思ったものだった。だいたいアジアやアフリカのチームの試合しか見ていない審判がまったく違うスピードの違うレベルのヨーロッパのサッカーをさばけるわけがない。国際審判制度はなっちゃない…と怒りを覚えたことを、最近忘れていた。

この一連の小説がサッカーをわかる人には面白い小説であることは保証できる。日本人の書いた小説は滅多に読まない私がそう思う。日本にもちゃんとしたノンフィクションノベルを書ける人がいるんだなと01-02を読んだときに感じたものだった。しかし、サッカーを知らない人は多少きついかもしれない。というのもこの小説のもっとも面白いのは主人公がピッチに入ったときなのだから。細かな一つ一つのプレイを文章だけで表現するのは難しいだろうに、たいしたものだ。

新しい彼女がセビージャにフラメンコの勉強に来ているポルトガル人の女の子っていうのは、ありきたりだが、別にそんなことはありきたりで構わない。ちょっとした色づけにすぎないのだから。ただ、今回主人公はすでにスペイン語は出来るが、それに加えてセビージャの文化に触れているところは正しいなと思う。彼女に連れられてフラメンコを見に行ったり、CDを聞いたりするところは、違う国のチームに移籍する選手にとって大切なことだろう。中田の成功は第一にあの語学力によるものだと私は思うので。日本から海外へ行く選手はまず彼女をつくると、その国の言葉を覚えるのが早いらしい。更に、言葉だけではなく、その国や街の文化にひたらないと、海外移籍をするトータルでの意味はないのだから。柳沢とか西沢とか、海外移籍の意味がまるでわかってない。

スポーツライターはロマンチストである。当然だろう。スポーツを見たりやったりする人間が何でスポーツをやったり見たりするのかを考えればわかる。著者は小説家・脚本家であってジャーナリストではないが、根底にあるのはスポーツライターと同じものだろう。

まぁ、スポ根ではあるが、主人公はスーパーヒーローではない。何でもできる漫画やアニメのサッカー選手と違うから面白いのだ。

2004年7月11日

ポエティック・オー : orange pekoe

Poetic OrePoetic ore; Invisible Beautiful Realism

オレンジ・ペコの3rd Album。初回限定版には「Modern Lights Tour」(於:NHKホール)アンコール部分を収録したボーナスDVDが付いていてお得。「虹」と「Love Life」でした。

シングル「ソングバード」も好調だし、オレペコも良い調子でアルバムを出している。

夏らしいアルバムだけど軽くない。「彼方へ」「煙のセレナード」、ラストの「よろこびのうた」あたりがワールドミュージックっぽいというかアフリカンっぽいので、夏といっても根太い感じの夏です。この中では「ソングバード」はやっぱりシングルになるだけあって身軽で良いなと思う。あと気に入ったのは「輪舞」あたり。

良いアルバムだとは思う。ただ「Modern Lights」のときも思ったんだけど、どうしても1stのインパクトは越せない。それは当然と言えば当然なのかもしれない。けれどそんなに急がなくてもシングルをこつこつ出して行ってもいい気もする。「Modern Lights」が大勢のミュージシャンが入ってつくったものだったのに対して、今回は二人だけでこつこつ録ったという話なので、音作りにはインディーズ時代に戻ったような手法か?ただぐっと手はかかっているのだろうけれど。

DVDになっている「Modern Lights Tour」行けなかったけど、今度のツアーも行けないだろうなぁ。このバンドはライブがいいのに、残念。あの関西弁丸出しのはじけるエネルギーのナガシマトモコが見たい。

2004.7.7 BMGファンハウス

  1. 彼方へ
  2. リズム
  3. 煙のセレナード
  4. 輪舞
  5. にわか雨
  6. ソングバード
  7. STORY
  8. Cradie
  9. Heavenly Summer
  10. よろこびのうた

初回限定盤のみDVD付き。

  1. LOVE LIFE
  2. amazonで購入する

2004年7月10日

天使の運命

天使の運命 上天使の運命 上■原題:Huja de la Fortuna ; Isabel Allende ,1999
■著者:イサベル・アジェンデ著,木村勝美訳
■書誌事項:PHP研究所 2004.3.2 ISBN4-5696-2826-5,4-5696-3262-9
■感想
23ヶ国で400万部を売ったそうだ。イサベル・アジェンデが愛娘パウラを亡くした後、数年のブランクを経て出したフィクション。Amazon.co.jpでスペイン文学に分類されておらず、刊行に気づかなかった。ジュンク堂書店で見つけたのだ。なになに?「世界23カ国で大ベストセラーとなった恋愛大河小説」??むむむ…。元々文学くさいところは少ない人だし、いわゆるノベルズ扱いされている作家だからなぁ…どうしよう。読もうかなぁ。メロドラマは大丈夫だと思うけど、ハーレクインとか1ページ目で挫折しちゃうタイプだもんな…。これまでずっと国書刊行会だったのが、PHPに移ってるってことは、そういうことなんだろうなぁ。

実際、上巻の1/3まで読み進めたところでげんなりしてイヤになってしまった。もう少し頑張ろうと思って読み進めて、でも2/3で挫折。そこからブランクを経て、何とか上巻を読み終えたら、後は早かったなぁ。ローズの恋愛話が最初の1/3ね。で、エリサとホアキンの恋愛話が2/3ね。あのー。ハーレクインですよね、やっぱり。無意味な官能の世界は…。うんざり、げっそり。でも中国へ話が飛ぶと、なかなかなんである。

下巻に入ると、実際のところ恋愛物語は全然関係なくなってしまう。サンフランシスコおよびカリフォルニアの建設の歴史というか、ゴールドラッシュを描いて行くのである。これは面白かった。登場人物が増えるし多彩になる。著者はチリ出身だが、サンフランシスコ在住のため、なんだこれが書きたかったんだね、と。白人とヒスパニック、中国人らのそれぞれの姿をそれなりには書けてるような気がするなぁ。それなり、だけど。
恋愛小説のわりに問題となった主人公の恋愛には最後にあっさりした、というか冷たい「恋に恋してただけだよね」という結論をつけてしまう。これはハーレクインを要求する人を裏切ってないか?まぁ、あのまままた出会いと別れを繰り返し…なんてやってたら、もう全然歯が立たず読み進めることが出来なかったんだが。

安手のラブロマンスのふりをして、実際そういうところもあったりする。が、ちゃんと裏切ってもいる。実に中途半端な作品だ。まともな教養小説になりそうな気配を感じさせながら、これも中途半端。従来のイサベル・アジェンデのラインまで戻ってくれないかな。とにかく必然性のない、無意味なめくるめく官能の世界だけは勘弁して下さい。
でもって、三部作の第一作だそうだ。続きが刊行されたらどうしよう…。