ゴスフォード・パーク
■137分 アメリカ 2002.10公開
■スタッフ
監督・製作・原案:ロバート・アルトマン
製作・原案:ボブ・バラバン
製作:デヴィッド・レヴィ
脚本:ジュリアン・フェロウズ
撮影:アンドリュー・ダン
音楽:パトリック・ドイル
出演:マギー・スミス,マイケル・ガンボン,クリスティン・スコット=トーマス,ボブ・バラバン,ヘレン・ミレンほか
■感想
2002年の公開当時に気になっていたのだが、見損ねていたらWOWOWでやっていて、予想以上に気に入ったのでDVDを買う。これは1930年代のイギリスで貴族のハウス・パーティを描いた作品。
ゴスフォード・パークと名付けられた別荘に招待され、鷹狩りに集まった貴族たち。その中で殺人事件が起きる‥という設定だけはまるでアガサ・クリスティ。貴族の俗物丸出しの姿と従僕たちの姿を交錯させながら映像化している。丸2日ほどの密室劇なのだが、群衆劇でもある。だから登場人物が多い。ロバート・アルトマンは元々好きな監督なのだが、いつも登場人物が多い。外国人の顔と名前をすぐに覚えられないという人には絶対勧められない映画である。あと、推理ものとして観たらあまりおもしろくはない。
しかし私にはとてもおもしろかった。公開当時観ればよかったと思う。こういうディティールの積み重ね映画が大好きなんである。召使いたちの慣習(主人の名前で呼ばれること)や銀食器を磨く姿、靴を磨く姿。貴族たちの服装やカントリーハウスの家具調度品。毎日ドレスを変えることがかえって下品だと言われてしまったりする風習等々。
がっちり構造化されている階級社会。その中を自由に行き来しようとして、思いっきり浮いているアメリカ人の姿が滑稽だったりする。召使いたちが全員うっとりと人気俳優の歌を聞いている姿がよかったなぁ。対照的な「(我々は当然)映画なぞ観ない」という伯爵夫人が逆に間抜けに見える。
その伯爵夫人は気位は高いがお金がない。これをマギー・スミスが演じていて、彼女が出てくるだけで、映画が締まる気がする。新人女優らしいけど、メアリー役の女優さんもよかった。最初は雨で、伯爵夫人に言われるがまま雨の中、車を止めてお茶の入った水筒の蓋を開けていた彼女だったが、ラストは快晴で、気弱な伯爵夫人に「それで何の益が?」と言い返す姿を見て、この映画は彼女の成長物語でもあったのだと。没落していく貴族階級の姿でもあり、もう二度と開催されない鷹狩りの舞台であるカントリー・ハウスの最後の姿なんだなと思った。